第5話(スーパーサッカー・4)

ゲームは続き、第4、最終クォーターに入る。


監督のキノコは3枚目のお楽しみカードを引いた。これがラスト1枚。何が起きるか分からない。


『お楽しみカード、〝ゴールデンボール〟を引いたあ! これの説明をしよう! ゴールデンボールは3つのサッカーボールの内、1個が金色になり、このボールは得点が10点扱いの諸刃の剣だあ!』


「そんなのありかよ~」


アールは嘆きながら、空見上げると金色に光るサッカーボールが、ゴリラの目の前にドロップした。


「とめろー!」


プレーヤーの誰かが叫んだ。それと同時にゴリラがシュートモーションに入る。ズドン! アールが盾となり、ゴリラのシュートを腹でとめた。


「アール君、チャンス! 10点決めて!」


バタッ。


「ぐうう…………いてえ」


アールはその場で踞る。ゴリラの弾丸シュートがヘビー級ボクサーのボディーブローのような威力で、モロに鳩尾に入った。痛みはリアルにフィードバックされ、身体は内出血をする。


ゴリラは2回目のシュートモーションに入った。周りにとめられそうな奴は居ない。ズドン! バキン。今度は屈強なアバターの男がゴール前でとめたが、吹き飛び、アーマーが割れてしまった。しかし、男は立ち上がり、ボランチにボールをパスする。猿どもが「ウキー! ウキー! ウキー! ウキー!」と、プレスをかけてくる。ボランチはキーパーまで戻す。


アールは立ち上がる。


「アール君、大丈夫?」

「死ぬかと思った。マトモに呼吸出来なかった」


アールはスコアボードを見ると、4対7。ノーマルのボールで点差が開く。


『おおっと! ここでお楽しみカードが使われたあ!』


「えっ? お楽しみカードって、3枚じゃなかった?」

「ああ、確かに。キノコさんが嘘を吐いたか」


『お楽しみカードはAIが使ったあ! 引いたカードは迷路ピッチだ! 忘れちゃいけないのが、武器は使えないが、打撃可ということだ! プレーヤーの皆、猿に殴り殺されないようにね!』


ゴゴゴゴーー! またピッチが迷路になる。


「キノコさんの嘘じゃないみたいね」

「そのようだな。金色のボールを探そう」


「ゴールデンボールなら、左サイドバックの辺りにある。時間内に決めてくれ」


キノコからのボイスチャットが来た。


『おおっと! またもや、AIがお楽しみカードを引いたあ! 2枚同時の重ね技だ! 引いたカードは〝暗闇〟と〝巨体化〟だ~! 猿が巨大化するぞ!』


パッと、スタジアム全体が暗転し、薄暗くなる。


「なにこれ」

「ゴールデンボールは光ってる。何とかなるさ」


アールとバイオレットは取り敢えず、相手ペナルティエリアに向かう。バイオレットは課金ガシャで〝懐中電灯〟を持っていた。都合がいい。


「バウゥゥゥ! ウキー! ウホウホ!」


体長5メートルほどのチンパンジーが襲いかかってくる。アールはチンパンジーの脛を蹴り上げた。チンパンジーは泣きながら、去っていく。


「キキー! キキー! キキー! キキー!」


「アール君、怖くないの? 化け物だよ?」

「何だろう。楽しい」


「アールって人。こちら、クォーターバック。ゴールデンボールを持ってるが、暗くてよく分からん。懐中電灯の光が見えた。ゴールを照らしてくれ」


味方からボイスチャットが来る。


「バイオレット、頼む」

「うん、任せて」


バイオレットは懐中電灯でゴールマウスを照らす。アールはゴールキーパーのオランウータンに蹴りを入れる。


「今だ! ゴールデンボールを撃つチャンスは!」


AI猿は1匹も守ってない。右ゴールポストに固まって震えている。


クォーターバックはロングシュートを撃つ。ガコン! シュートはクロスバーにヒット。アールとバイオレットはこぼれたゴールデンボールとの距離を詰める。


「ウキー! ウキー!」


巨大な日本猿がゴール前で暴れて、プレッシャーをかけてきた。


「ウキー! ウキー!」


コツン…………。暴れる日本猿はヒールでゴールに流し込む。


『オウンゴール…………。3、2、1、試合終了~! 14対7でプレーヤーチームの勝利!』

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