第3話(スーパーサッカー・2)

ピッチを取り囲むスタジアムにAIの観客が騒ぐ。本物のサッカーを体感してるようだ。


ピピー!『キックオフ!』


上空から3つのボールがランダムな位置にドロップした。アールはまず、センターサークルに落ちてきたボールをキープする。すぐさま、AIがチェックに来る。アールはバックパスで、バイオレットにボールを預けてから敵陣地に人間離れした速度で攻め込み、ロングパスをトラップしてボレーシュートを撃つ。


ズドン! アールはゴールネットを揺らす。


「よっしゃ、1得点だ。ナイスアシスト。バイオレット」

「エヘヘ」


バイオレットはテレる。しかし、得点ボードを見ると、1対2。


「えー!? 2点、決められた?」

「猿ども、やりやがるな。クソゲーが!」


第1クォーターが終わった時点で1対2。監督を引き受けた、キノコは堪らずタイムを取る。これで1枚のお楽しみカードを消失した。


「皆、よく聞け。お楽しみカードは、あと2枚だ。第2クォーターは、そのままで。第3第4クォーターでお楽しみカードに懸ける」

「なあ、これSNSでもあるんだよな。ネットにこの状況をアップして助けを求めるとかどう?」


1人のプレーヤーが提案する。


「メッセージをアップして助けてくれるか分からんぞ。冗談だと捉えられるのが関の山だろう。あり得ない状況だからな」


アールは冷静な返答をする。


「取り敢えず、目の前のゲームに集中しよう。アールさんにボールを集めて。センスがある」

「俺に期待されてもな。まぐれかもよ?」


『タイム終了まで1分』


「アール君ならやってくれそう。皆、頑張ろ」


バイオレットが鼓舞する。プレーヤーはそれぞれのポジションに着き、第2クォーター開始に備える。


ピピー! 第2クォーターが始まった。上空から3つのボールがドロップする。ボールは全部敵陣地に落ちた。


アールはまず、前からプレスをかける。ズドン! AIのゴリラがロングシュートを決める。80メートルは離れた位置から。


「そんなのありかよ~」


アールは嘆きながらも、敵のパスをインターセプトする。バイオレットと左サイドバックが上がってきた。


「アール君、一旦、下げて」


アールはサイドバックにボールを預ける。


「サイドからアーリークロスだ。もっと攻撃に参加してくれ」

「ダメだ。守りで手一杯だ。モンキープラネットだぜ」

「それを言うなら、プラネット・オブ・ジ・エイプだろ」


サイドバックは手薄になった左サイドからクロスを上げる。中にはアールとバイオレットだけ。敵ディフェンダーは3体。バイオレットが2体を引き付けて、アールをフォローする。開いたスペースにクロスが来て、アールはダイビングヘッドを決める。2得点目だ。アールはスコアボードを見ると、2対5。プレーヤーのキーパーは失点を防ぐために積極的に前へ出るが、それが仇となり、ボール2個を同時にシュートされ、抑えきれなかった。


ピピー! 第2クォーターが終わった。そして、タイムなしに第3クォーターに入る。

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