第2話(スーパーサッカー・1)

アールは〝スーパーサッカー〟のエントリー手続きを始める。バイオレットも来た。


「さっきから、煩い人が多いね」

「煩い人?」

「聞こえない? あっ! 私、ボイスチャットの範囲をエリア全体にしてた」

「初期設定?」


バイオレットは課金してる。初期設定から有利な能力を持っていた。


アールとバイオレットは、スーパーサッカーにインする。18人ほど先約が居た。


スーパーサッカーは15人制でリザーブは10人まで。時間は10分、4クォーターだ。同時に3つのボールで試合をする。スローインやゴールが決まってもプレーは中断せずに続く。そして、厄介なのが監督のポジション。監督は、お楽しみカードを引いてサッカーのルールを可変させ、自軍に有利にプレーをさせなくてはいけない。スーパーサッカーはパズルゲームの要素が強い。


「俺はフィールドプレーヤーがいい。誰が監督をやる? パズルゲームに強い奴」


アールが提案する。


「私がやろう。ハンドルネームは〝キノコ〟だ。パズルゲームには多少自信があるよ」

「キノコさん、頼んだよ」

「ちょっと待て!」


1人のプレーヤーが異議を唱える。


「スーパーサッカーは死なないとはいえ、フィールドプレーヤーは痛い思いはするだろう。俺も監督をやりたい」

「リザーブしてろ、ビビり」


屈強なアバターの男がたしなめる。


「相手はコンピュータだ。ちゃんと作戦を立てれば楽勝さ。まずはプレーヤーが一丸とならないと」


アールの提言に皆は状況把握をする。死んだら終わり。自分自身も死ぬかもしれない。しかし、多くの者は半信半疑だ。


ピピー!


『試合開始まで1分です』


「いかん。早くポジションを決めろ。タイムオーバーになったら、どんなペナルティがあるか分からん」


アールはセンターフォワード。バイオレットは攻撃的ミッドフィルダー。急いで決めたから、適材適所か分からない。


敵AIが準備を始めた。日本代表のユニホームを着た、日本猿にチンパンジー、ゴリラ、オランウータンだ。


「ウキー! キキー!」

「エテ公が相手かよ。クソゲーが」


『試合開始まで10秒です!』


皆は、それぞれのポジションに着く。皆、ドキドキしている。スーパーサッカーは死なないゲームとはいえ、何があるか解らない。

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