第13話 部活動総会(前半戦)
会議、と言えば聞こえはいいがよく見たり、聞いたりしていれば、ただの我が儘をどれだけ美化して押し通せるかという競争に過ぎない。その上、多数決となった場合などは最悪である。少数派の意見も尊重とは中学3年一学期公民で習う事であるが、尊重とはどのようにすればいいのかわからないため、結局は無視されるのだ。少数の意見を取り入れると多数決の意味なんてない。よって少数意見は闇へと消えていく。
俺が何故心の内側でこんなにも饒舌に語っているのかというとそれは俺がその会議の中に居ることに他ならない。
本音を話せば超絶暇なのだ。再起部は別に部費など必要ないし、消耗品もない。おまけに人もいないが。
「静粛に」
口を開いたのは確か生徒会長の
この会議は生徒会連動のもと、行われる。つまりは彼女である美玖もいるというわけで…。ホワイトボードに書くのが今回の彼女の仕事のようだ。眼が合ったような気がしたので他の人にばれないように一回だけウインクを飛ばしておく。彼女はそんな俺を見てクスッと微笑み、くるりとホワイトボードの方へと向いてしまった。……何かこの会議に来てよかった気がする。
「お前、大丈夫か?今物凄い顔していたぞ?」
「……へっ?お、俺?」
隣に座っているこの男はハンドボール部のキャプテンっぽい。
ユニフォームからの推測なので言い切ることは出来ないがたぶんハンドボール部。
茶髪の髪は空気抵抗を知らないのか、重力を受けていないのかふわふわと先端が浮いている。しかし、その甘いマスクのせいであまり気にはならない。……くそっ……イケメンめ。
「もしかしてウインクの練習か?それにしては変なもの喰ったぜ、不味~っていう顔だったけど…」
ここでハイ、ウインクしてました。など、口が裂けても言えるわけがない。
「……いや、その…」
「静粛に」
会長の先程と全く同じ声色が今回は部屋全体に響き、ここに居る誰もがピタリと会話をやめる。
「すまない。遅れた」
大原先生登場である。……凄いな。この空気を平然とぶち壊した。しかし、不思議なもので誰も気分を害した様子は無い。……これが人徳か?いや、先生特権?
「それでは部活動総会を始める」
沖田会長はこの一言で場の雰囲気をがらりと変えた。……カリスマ性が凄い。
俺はあまり関係ないので今の内に詳しい説明をしておこう。
まずは会長。本名は沖田優。生徒会長は6期目に突入しており先程も肌で体感したが、強いカリスマ性と発言力がある。容姿で言えばくすんだ金髪、切れ長の目に細長の顔つき。簡単に言えばこの人もまたイケメンの部類である。くすんだ金髪は染めているわけでは無く地毛なのだとか。そんな地毛あるかっ!と全力でツッコミたいが家系に外国人がいるらしい。そうなると俺は黙るしかない。
成績も優秀らしく学年トップ3には必ず入っているらしい。……完璧超人め。
俺がこれだけ会長の情報を知っているのは美玖のおかげだ。(せいともいう)尊敬している人らしく結構な情報を俺にくれる。共用して欲しいのだろうか。それともこんな人になってくれという命令なのだろうか。
次は……無かった。
「部費及び時間についての意義申し立ては終了とする」
意識を会議に戻すとどうやらこの会議での一番面倒な議題が終わったようだ。……どうやら誰も通らなかったようだ。
会長のあのカリスマ性にはどんなに美化した我が儘も崩れ去ってしまうだろう。ドンマイ乙。
俺がこの場所に座っているのは名目上の人数合わせのためだと思っている。そのため俺に白羽の矢が立つことは100%ありえな……。全身で俺はフラグが立ったことを実感した。
「次の議題は“再起部”について」
関係ないと顔を緩ませていたのは俺以外のみんなだった。
「部員が3人以下、及び部活動を行っていない。よって生徒会は廃部に決定した。何か異論はあるか」
「……3人以下なのは認める。だが、俺は入部して5日と経っていない」
大原先生がにやりと笑ったのが横目に見えた。俺と会長の口頭弁論を黙認して楽しむつもりなのだろう。俺が必死に再起部を守ろうとしているのは何か変な気がするがもう既に手遅れだ。
「…つまり、準備期間だったと。そう言いたい訳か」
ちなみに会長は俺より先輩だが、俺は敬語を使っていない。
「……そうだ」
「ならば、もう手は打ってあると思っていいのか?」
「……まぁ」
「ならお聞かせ願おうか。君のこれからの再起部の運営の仕方を」
大原先生とはまた違った攻め方で来る会長に俺は内心舌を巻いた。
手を打っていないわけでは無いが、不確定分子のため、下手に切り札として使うことは出来ない。
「……」
「どうした?言えないのか?」
会長の一言にはこのままならば慈悲なく廃部だぞというニュアンスを含んでいる。……強い。これは圧倒的な強者だ。
「……いや、何処から話そうかと迷っていたところだ」
「という事は決まったな」
「再起部は第一攻略として『恋愛相談』を掲げる」
「なっ!」
流石の会長も恋愛には耐性がないと見える。
「すでに部員一人が相談中。もう一人が入部勧誘を行っている」
勿論これはハッタリだ。適度な嘘を交わらせることであたかも本当にあったことのように装う。
俺が大原先生に味わった思いをくらえ、会長!
「で、あるか。それで成果はいつ出る?」
「……まだ何とも言えないな。相手が解決したと思うまでは」
「再起部っ!そんなことでは…」
「待て、沖田」
静止の声を掛けたのは大原先生だった。声を荒らげた会長にも驚いたが、先生が止めに入ることの方が2倍ほど驚いた。
「しかし、それでは奴の二の舞です」
「あの子とは違う。松平は沖田、お前にしっかりと反論して見せた。違うか?」
「それは認めますが…」
あの子とは一体、誰のことなのだろうか。
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