第11話 水族館デート(おまけ)
もう完全に寝ちゃったみたい……。私に倒れかかって静かに寝息を立てている彼氏ーー松平潤平君。彼は今でこそ私以外の人とはあまり話したがらないけれど、昔は今とは正反対だった。別に戻って欲しいとは思わない。彼が自然体でいる方が私は……その……好きだから。
そんな彼が再起部に入ったなんて正直目を疑ったけれどそのおかげでこんな楽しいデートが出来たなら……と思うと良いかな、と思ってしまう。
「ねぇ、潤平君」
返答は無いけれど寝顔が可愛いので許す。甘いかな?
今日のデートは私、本当に頑張ったと思う。前々から繋ぎたいって思っていてもいざ目の前に彼が立つとどうしようもなく心臓が高鳴って恥ずかしくなってしまう。
ーークラゲエリア時の記憶ーー
あわわわわっ!私ったらどうしてそんな恥ずかしいこと思い出しているの?!勢い余っただけで事故だからっ!
ふーっ。ふーっ。ふーっ。
私はポケットから彼に買って貰ったナマコストラップ付きの携帯を取り出した。画面はペンギンエリアで撮った写真が写っている。私とペンギンの写真。彼とペンギンの写真。私と彼とペンギンの写真。彼の写真。
見せて、と言われたときは彼の写真のことを見られてしまうのではないかって心臓がバクバクだった。だってこの彼の写真、ペンギンと撮るときにズームしてとってしまった写真だから。……保存しておこ。
彼はいつもそうだけど自分からは発しない。私が話しかけたら返してくれるし、ニュアンスを含めたことを言えばたま~にだけど察してくれることもある。
私は携帯をポケットにしまうと自分の手を何気なく見つめる。
(彼の手、暖かかった)
正確に言えば彼の小指だけど。今は私の肩口で寝ている彼は結構ぐっすりなのか、私が動いても起きる気配がない。……鈍感なのかな。それとも物凄い胆力なのかな。
また握りたいとは思う。思うけど私は袖口でも精一杯。となればあとは彼頼みになってしまうのだけれど彼は私に魅力がないせいなのか、あまり積極的では無い気がする。
今のドキドキするこの心も私だけなのかな……。
不安はどんどん広がって、隣に彼がいるはずなのに一人で居るように感じる。孤独に居感じる。
「潤平君…」
声が震えてる。ぽたっと水が手に落ちたのを遅れて気が付いた。
泣いてるんだ、私。止めようと思うけれどそう思うほどに1つ、2つと落ちて行く。
「大…………丈………………夫」
彼の寝言で私の心はスーッと落ち着きを取り戻していく。彼は寝ているため考えてはいなかっただろう。
けれど私を落ち着かせてくれたのは彼であり、彼の言葉なのは紛れもない事実。
「ありがとう。潤平君」
面と向かってなんて絶対に言えないけれど……。
今、寝てるよね。揺らしてみる。……大丈夫そう。なら言えるかな。いつかは目を見ていいたいことを練習として……ね。
「大好きだよ」
☆☆☆ ☆ ☆ ☆ ☆
暫く美玖は赤い顔を手で覆い隠し、首を横に振ったり潤平を見つめたりしていたがやがて眠たくなってきたのか、2人で支え合うようにして眠っていた。
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