リザルト2

 さて、それでは他の皆が得られた称号を見ていこう。


〜〜〜〜

称号「クリティカル・リッパー」

 命を狩り続け、その一撃に致命の名がつく者の証。

 弱点部位への攻撃時に攻撃力増加:大

 弱点部位以外への攻撃時に攻撃力低下:極大

 移動速度の増加に比例して攻撃力が増加:小

 移動速度の増加に比例して防御力が減少:小

 特定住人からの好感度上昇:大

 特定スキルに特殊な派生先が追加

〜〜〜〜


 ウヅキが貰った称号。

 多くのモンスターを弱点部位への攻撃で倒し続け、通常のダメージ量から大きく逸脱した一撃を放てると得られるらしい。


 これまたかなりピーキー。

 ウヅキのアサシン化が進む。


 弱点部位がないモンスターとか出てきたらどうするんだろう。極大の文字が怖い。まあ、それでもなんとかする方法があるからこそ、こういう称号になっているんだろうけれども。

 これも特殊派生先か。

 こういう称号も増えていくのだろうか。

 皆が得られた「修行僧」は、汎用性の高いスキルが得られて、ウヅキのこれは特化系のものが得られるのかもしれない。


 ……それよりも、ウヅキの防御力がぐんぐん下がっていく。ボクの杖による一発でも、条件が整うと死んでしまうのでないだろうか。


〜〜〜〜

称号「守護者」

 攻撃を受け続け、防ぎきった者の証。

 受け流し・パリィ等に成功した時に、敵に[スタン]状態異常付与:確率極小

 受け流し・パリィ等が一定回数成功するごとに、周囲の敵に対して<挑発><威圧>が発動する。

 その場で留まる時間が長いほど、物理・魔法防御力が徐々に上昇

〜〜〜〜


 面白い効果を貰える特殊称号と言える。

 そしてかなり凶悪だ。

 これ多分、<挑発><威圧>はモミジのスキルとは別枠で発動する。<挑発>は一回行うとしばらく効果がないのだが、それとは別に、<挑発><威圧>を勝手に使ってくれる。

 逆に言うと、モミジの意思とは無関係にそれらスキルが発動しちゃうということだろう。

 

 とはいえ、モミジの事だから、一定回数ごとにわざと【受け流し】を失敗させるなんて器用な芸当もできなくはないだろうね。

 称号だし、スキルとは違ってレベルアップしないから、文字から受ける印象ほど効果は高くないと思う。

 [スタン]状態異常付与というのも確率極小のようだし、まあ、けど、強力なのは間違いない。


〜〜〜〜

「魔法奏者」

 音楽を奏でるがごとく、魔法を紡ぐ者の証。

 魔法のクールダウンが減少:小

 魔法詠唱速度が減少:小

 魔法の消費魔力減少:小

 アイテムに付与されたルーン使用による消費魔力減少:中

 ルーンをアイテムに付与する時に特殊な効果付与

 特定住人からの好感度上昇:大

 特定スキルに特殊な派生先が追加

〜〜〜〜

 <傀儡術>を使った時の連続魔法使用による称号だ。

 特に面白いのがルーン付与による特殊効果付与だと思う。どんな効果が付与できるのだろう。

 シオンには嬉しい効果が詰まった称号だと思う。大変よろしい。

 おそらくルーン付与装備を使うことが前提の称号だね。



 総評としては、それぞれのプレイスタイルが完全に決定づけられる称号だなと思った。

 そして、うーん。いい称号ばかりだね。

 こうしてみると、ボクも称号欲しいなあって思ってしまう……。

 

 今度、意図的に突飛な行動をしてみようかなあ。

 一気に全部のルーン使ってみるとか。


 ただ、狙うと称号って取れない気もするんだよね。

 例えばモミジのとか、数時間ラビッドの攻撃を【受け流し】し続けていれば獲得できるかと言われれば、違うと思う。

 多分、もっと細かい判定があるのだと感じる。


 意識とかイメージとかを、具体的にゲーム側が反映するのは魔法の使用とかでわかってる。少なくとも、脳がどれだけ稼働しているのか把握しているのは【デバッグ】からも読み取れる。

 つまり、これら称号は、まさに皆が真剣にその行動を行った証なのだろう。


 それぞれの称号は、とても強力なもののように感じる。けれど、スキルと違ってレベルアップしないし、具体的にどれだけの効果量があるのかもわからないから、過信しすぎるのもダメだと思う。

 割合上昇とかならいいんだけど、定量だと、今後ゲームが進むと誤差の範囲になる、とかは普通にありそうだと思う。


 まさに称号ってことか。

 得た実績の方向性に、プレイスタイルを固定させるための仕組みというか。


 やっぱり慢心せず、コツコツとってのがボクたちの方針になるかな。


「さて、どうしようかなー」

「どうするとは?」

「ボクたちの称号をどこまで公開するのかって話」


 別に隠す必要も無いとは思うんだが、皆が頑張って獲得した称号をポンって出すのもなんか違うかな、と思ったりするのだ。

 フレンドの人に話す程度なら問題ないけど、特に知らない人に教えても、と考えちゃうのは人間として小さいだろうか。


 それを説明すると、皆もうーんと目を閉じて考える。


 口元が寂しいので、シオンが持ってきてくれた豆を揚げたお菓子をポリポリ。

 おいし。


「私としては別に、公開しても良いのだけれど」

「同じく」

「ん」


 皆としては別に気にしていない、と。

 ただ、結構重要な情報が含まれているのも事実。

 少しフライング気味に情報が出てしまって、先に進んでいる人と、今から始める人の格差が一気に開く可能性もあると思う。

 具体的な称号を言えば、皆がそれぞれ獲得した称号に加えて、「修行僧」と「耐え忍ぶ者」だ。これらはかなり強力な称号だと思う。


 じゃあ、ボクたちがこれらの称号を持っていて良いのかと言われれば、問題ない。ボクたちは攻略を急いでるわけじゃないし、トップを走るつもりもないからだ。

 少なくともボク自身は、これからしばらくセカンディアでのんびり過ごすつもりだ。全魔法属性を覚えたいし、図書館、<錬金術>にも興味がある。


 セカンディアの人たちが困っている事がないかというのも気になるし、やりたいことが目白押し。

 モミジたちにしても、強敵と戦えたのでしばらくは満足してくれるだろう。


 中空を見ながら考える。


「――よし」


 方針決定だ。「ジャイアントキリング」「チャレンジャー」「耐え忍ぶ者」「ファスティアの解放者」「ファスティアの守護者」を獲得したことにしよう。

 これらはすごくわかりやすいし、これらを取れる人たちは、自然と別の称号についても獲得できるだろうと考えたのだ。

 

 そして、ボクはナビちゃんさんを呼び出す。


「こんにちは、いかがいたしましたか?」

「こんにちは、この前戦った『ハード戦』の動画をフルで有料会員動画としてアップしようと思うんですが、運営さん的には問題ないのかなって。あと称号とかも」

「お気遣いいただき、ありがとうございます。問い合わせます」

「はい」


 ふよふよと浮いているナビちゃんさんを横目に、ボクは外部アプリを起動して、先日の動画の編集を始める。

 ほぼ24時間超えの動画を編集するので、仕事量は大変だ――と思われるかもしれないが、実はそこまで大したことでもない。


 山場は知ってるので、サクサクって感じ。


 最初の職人さん達の挨拶、各人の簡単なメイン生産スキルや、代表武器装備なんかのデータを軽く紹介。

 お値段もドーンって感じ。

 0がバカみたいに並ぶ。

 ウケる。

 誰が買うんだろうこれ。


 その後はボクたちのお着替えシーン。できるだけ見栄えの良いものを映していく。

 シオン、ウヅキと綺麗所を写してエフェクトをかぶせる。

 特にウヅキは、揺れる尻尾をちょっと下のアングルから写した映像を、重点的に。

 そして腹を見せてセクシーポーズをするオオカミちゃんの、もふもふ映像なんかも間に挟む。

 癒やしは大事だ。


 で、ギャグシーンとしてボクの女装装備シーンをドーン。

 ウッフンあっはんなBGMと合わせてピンクなエフェクトをですね。

 スリットから見えるきわどいシーンなんかも挟む。

 これで視聴者も爆笑、間違いなしですよ。

 ボクのギャグセンスもなかなかでは?


 そうして散々見せつけた後、最後にモミジの服装破裂シーンでオチ。

 無駄に3回くらい繰り返す。

 爆発オチなんてサイテー。


 その後、ずっと動画中モミジは上半身裸なので、じわじわと笑いを誘うと思うのだが。

 いかがだろうか。


 これで10分くらい使う。あとの10分くらいで森のお散歩シーンとイージー攻略シーンを軽く映像繋いで、「職人さんセカンディアへお届け編」終了。

 イージー攻略では、これから来る第二陣の参考になると思うので、動きのパターンを解説したりしてみた。

 丁寧な仕事では?


 次の「オーガハード攻略編」はもっと簡単だ。

 最初の攻防をある程度詳しくやって、停滞から暗転、(十時間後……)のテロップを出して、まだ戦っている画を写す。

 いい感じ。

 コメントとだらだら雑談して、ダレてる感じを印象付けて、もっかいテロップで時間経過。

 最後は皆で大技でフィニッシュ。


 かっこいいのでは?


 これで前後、二本。


 ボクはおもむろに立ち上がり、カメラを起動。


 ちょっと雰囲気を出して、投げキッスの仕草をする映像を録画する。


 シオンが鼻を抑えるが無視だ。ゲームで鼻血は出ない。向こうリアルがどうなってるかは……まあ大丈夫だろう。

 おい、モミジ、その手を離せ。やめろ。

 尻を触るな!


 腰もだめだ!!

 

 ウヅキ、オオカミちゃんが痛がってるので櫛の速度を緩めてやりなさい。


 ……ちょっと彼らには刺激が強すぎたようだね。


 と、とりあえず、この映像を前編パートの最後に入れて、「チャンネル登録よろしく」的なコメントを添えてリンクのボタンを配置。


 後編動画の最後にはモミジが肉を食べている映像を使おう。


 うん、完成だ。


「終わりましたか?」

「あ、待っててくれました?」

「いえ、今返答が来たところです。こちらとあちらでは時間の流れが違いますので。お待ち頂く間、作業があったようで、なによりです」

「ですか。それで返答は?」

「基本的にそちらの裁量に任せるそうです。ルイ様なら悪いようにはならないだろうと」

「責任重大ですね」

「そうですね。とはいえ、問題があっても運営の方で対処するそうですので、気にせずとも問題ないかと」

「わかりました。それでは、戦闘動画のフルを有料会員動画としてアップして、称号についても広めても良さそうなものだけ、特典情報として載せます」

「それで良いと思います。あと、運営様からのメッセージがあります」

「うん?」


 ナビちゃんさんから、男の人の声が聞こえてくる。


「運営一同、あの戦いは見せてもらいました。とても良い戦いで、こちらとしても勉強になりました。今後もスカイリアの世界をお楽しみ下さい。そして、是非とも難易度『ナイトメア』に挑戦していただきたく思います。次はこんなもんじゃないぜ!――以上です」


 とても楽しそうな声だった。

 ボクたちも笑顔で頷く。


 運営さんたちには、とても良くしてもらっている。もちろんナビちゃんさんたち、この世界を内側から作ったという人たちにも。


「近いうち、必ず。とお伝えください」

「かしこまりました。それでは、質問は以上でしょうか?」

「はい。ありがとうございました」


 ナビちゃんさんが消えていくのを、手を振って見送る。


 さっそく動画をアップしておこう。

 チャンネル動画としては先に編集した前後編。

 ……モミジが夜間、ひたすら食事をしたり筋肉を見せつけていた映像も見れるようにしておこう。6時間近くもある。

 ふふふ。

 端的に言ってヤバイ動画だ。需要が読めない。


 有料会員動画としては、ハード戦闘をフル。

 こっちは15時間超え。凄まじいボリュームだ。

 これでよしと。


「さてあとは、アイテムかな」


 まずドロップアイテム。オーガの上質な角と、上質な皮だ。これ、「上質」とアイテム名に直接書かれているから、イージーのものとは完全に別物扱いだ。

 品質は「普」、上質なアイテムの品質「普」とは、とんちかな?

 さらに<解体>では、これらに加えて上質な爪もゲット。

 ウヅキは魔石もドロップ。

 シオンがオーガの棍棒片をドロップ。素材アイテムらしい。シオンしか手に入れていないので、レア?

 見た感じ金属なので、ドッさんが喜ぶだろうか。


 あとはスキルスクロール。ランダムと特殊。

 どちらも、基本的にはボクたちが必要としているものを優先してスキルを提供してくれるらしい。

 ランダムは頑張れば習得できる程度のスキルを貰えるが、比較的、珍しい物になるようだ。

 特殊は、文字通り特殊。ウヅキが空中を走れるようになったあれだ。こちらは期待大。


 というわけで早速使う。


 まずランダムスキル。ほいほいっと。

〜〜〜〜

<魔法陣>

その場に【魔法陣】を展開する。魔法陣の中にいる間、魔法攻撃力、詠唱速度、魔力回復力に補正が入る。

使用可能アーツ:【魔法陣】

〜〜〜〜

 

 シンプル。そしてそれだけに強力。<瞑想>や<集中>も重なるだろうし、これは嬉しい。純粋な戦力強化だ。


「やった! ルイ! <魔力視>です」

「お、やったね」

「ええ! ルイを見ていると、かなり便利なスキルだと思って練習していたんだけれど、糸口すら掴めてすらいなかったから嬉しいわ!」


 シオンは<魔力視>か。彼女は<錬金術>を持っているし、必須スキルだ。

 おそらくある程度、スキル経験値を既に持っている物から提供してくれるのが、ランダムスキルスクロールというアイテムなのだろう。

 ホクホクだ。


「私は<残像>」


〜〜〜〜

<残像>

 移動速度が上昇するほど、他からは体がブレて見え、攻撃に命中判定が必要になる。

 スキルレベルが上がるほど、<残像>発動速度が下がり、命中判定への補正値が上昇する。

〜〜〜〜


 これまたシンプルに強い。ウヅキの生存能力があがる。


「良いスキルだね」

「ん」


 ウヅキの表情はほぼ変わらないが、尻尾がゆらゆら揺れているので、喜んでいるのがわかる。


「俺は<ソーンメイル>というらしい」


〜〜〜〜

<ソーンメイル>

 近接攻撃を受けるほど、確率で相手にその一部のダメージを返す。また、様々な状態異常を付与する可能性もある。

 スキルレベルがあがるほど、ダメージ割合、反射発生率、状態異常付与率が上昇する。

〜〜〜〜


「えっぐ」

「ふふん」


 これ、多分モミジが【受け流し】をしていても発動するやつだ。

 さらに称号効果もあって、敵は常にモミジを攻撃するだろうし、もはや歩く罠だ。

 特化するにしたって、これは無いだろうって思う。


 ま、まあ。確率発動ということだし、そこまでぶっ壊れたスキルでもないと思えるのが救いか。


 概ね全員満足といえる。


 それではいよいよ、メインの特殊スキルスクロールといこう!


〜〜〜〜

<マルチスペル>

スキルレベルによって、複数の魔法を同時に展開できるようになる。

〜〜〜〜


 お、おお? おおおー?


 ……。


 評価自体は保留だけれど、これ、ボクの考えが正しかったらめちゃくちゃ凄いスキルだと思う。

 普通、魔法は1つずつしか発動できない。

 さらには、1つ1つの魔法の間には、クールダウンとは別に、短い待機時間が発生する。戦闘中だとこの時間は致命的だ。


 シオンはこれをルーン付与アイテムで解決した。けど、負荷も高い。魔力効率も良いとは言えないし、アイテムは消耗する。無限というわけじゃないわけだ。


 これを回避するために、ルーンを組み合わせることで、一発の威力を増したりして手数を抑えたりするわけだ。けれども、一度に1つの魔法へと多くのルーンを込めると、魔力をバカ食いする上に、効力も弱くなりがちだ。

 例えば【火・玉・飛】の【ファイヤーボール】を強くしようとする。

 【火・火・玉・玉・飛・飛】と、単純にルーンを倍使っても、消費魔力は4倍近くかかるわりに、ダメージは1.5倍程度。


 今まではそういった運用をしたい時、ボクは【火・火・玉・玉・飛】など、ルーンの数をできるだけ少なく、かつ効率的な組み合わせを探して運用していた。


 だが、この魔法があると、【火・玉・飛】を単純に2つ同時に発動できたりするわけだ。消費魔力2倍でダメージも2倍。

 それだけでも破格。

 さらには、今まで出来ないと思っていた水と火の魔法を同時に使用する、みたいな事も可能になる。

 <土魔法>で玉を作り、<火魔法>で爆発させて簡易的な炸裂弾みたいなものを作るとか。


 このスキルは無限の可能性を持っていると言えるね。


「うむ。良いスキルかな。シオンはどう?」

「はい」


〜〜〜〜

<呪言>

 範囲内対象を力ある言葉によって縛り、魔法的抵抗を下げ、様々な状態異常を付与する。

使用可能魔法:【呪言】

〜〜〜〜


 うわぁ。


「うわぁ」


 言葉にでちゃった。


「ここまで来ると、私はもう闇系女子を目指すしかないと思う」


 闇系女子とは。

 どこに向かうつもりなのか。


「まあけど、<傀儡術>と相性良いと思うし、上手く使っていくとかなり強力そうだね」

「うん、そう思う」


 シオンとしても、今回<傀儡術>が効きづらい相手と戦ったことで、こういったスキルの必要性を感じたのだろう。

 このスキルの良いところは、盤外戦術としても使えることだろう。相手が言葉を理解できるなら、魔法の効果が薄くても、ひたすら呪いの言葉を吐かれて冷静でいられるだろうか。

 しかも範囲魔法だ。……これ魔法なのかな?

 

 シオン罵倒集みたいな総集編動画ができそう。

 

「ん」


 ウヅキのスキルも見せてもらう。

 モミジ、ステイ。お前はまだだ。


〜〜〜〜

<魔眼:切断>

 対象の隠された弱点を看破し、弱点箇所を増やす。クリティカルダメージが上昇し、[切断]状態異常を付与する可能性がある。全ての弱点箇所を攻撃すると、ボーナスダメージが発生する。

〜〜〜〜


 着々と特化の道を進んでいますね。

 先に得た称号と合わせて、とても相性が良いスキルだと思う。


「すごく使えると思う」

 

 ウヅキ自身も気に入っている様子。


「うん、期待しているよ」

「ん」


 もう完全に過剰攻撃力じゃないか、やっぱり防御面にも気をつけた方がいいのではないか、と思うが、本人が楽しそうなのでこのまま極めて欲しい。


 にしても魔眼かあ。

 

 まじまじとウヅキを見ると、彼女の左目の虹彩に、赤紫の横線が一本出来ていた。

 流石ゲーム。細かい。


 はい、じゃあモミジくん。


〜〜〜〜

<金剛>

 攻撃を受けるほど、【気】を貯める。貯めた【気】を消費して、攻撃か防御に使用することができる。

 攻撃:貯めた【気】を消費して、次の攻撃で相手へと打ち込み、ダメージを与える。

 防御:自分を含めた味方への攻撃を【気】を消費することで受ける。

〜〜〜〜


 んんんん〜〜〜〜。


 端的に言ってぶっ壊れですね。

 いや、このスキル自体はとてもシンプルで強力、防御プレイヤーがその防御力を攻撃に転化できる、面白いスキルだと思う。

 ただ、これを習得する奴がヤバイ。

 モミジとの相性が良すぎる。

 

 このスキルを習得したのがモミジという点、その一点だけでもうヤバイ。

 モミジは既に防御特化で、かつ、十時間以上【受け流し】し続けられる集中力と胆力を持つ。

 そんな彼が貯めに貯めた【気】とかいうリソースを、一気に、かつ一発に収束したらどうなるのか。

 

 もうおわかりだろう。


 <マルチスペル>はやばい、強い、とか言っている場合じゃない。

 人が一生懸命、魔力消費量とかを計算している横で、何も考えずパンチ一発で地割れ起こしそうな奴がいる。


 フン、ハァ! で敵が死ぬ。


 あーやってらんないなー!!!

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