森、ウルフ狩り

 流石に、3人がかりでポーションを制作していると素材がなくなる。


 そんなわけで、ボクたちは森へと入っていた。草原だとスキルレベルが上がらなくなってきたからだ。

 森については、さんざんウヅキとモミジが入っているので大方の話は聞いている。ここで取れる素材は薬草ときのこ類。きのこは食材か毒物があるが、それぞれウヅキとモミジが活用する。


 ボクたちはそれぞれ、別のポイントから森へと入った。互いに索敵範囲が広くなっていて獲物を食い合うからだ。

 ウヅキの見立てでは、もうボクたちも十分一人で問題なく森を行動できるとのこと。

 まあ、危険だったら逃げるつもりまんまんだ。


 今回のメインはモンスター討伐ついでの戦闘系スキルレベルアップ。


 ファスティアの森は、木々の生えている間隔も広く、管理されている事がよく分かる。歩きやすいように最低限には保たれた道があったりして、視界も良好だ。


 視界を<魔力視>に切り替えて敵を探る。

 木々がちょっと邪魔なので、色をつけたりしつつ、調整。


 いるわいるわ。


 単体でうろついているウルフへと照準を見極める。

 【火・矢・分裂・飛】で【ファイアアロー】扱いになる。火矢、というよりも先の尖った火の棒が生成され、凄まじい速さで飛んでいく。

 本来だと、矢の形になっているが、<魔力操作>によって形状が変化させている。

 わざわざ矢の形に整形するのも無駄だと思うからだ。魔力的にコスト削減できているかは、よくわからない。まあ、自己満足レベルだろうか。

 元々が矢の形をしているのは、ルーンを作った人がイメージ的に、矢の方が早く遠くに飛びそうだからだろう。

 この魔法が面白いのは、対象に刺突と属性ダメージを与える事だ。


 火矢が飛んでいき、ウルフに突き刺さる。

 飛んできた方向からこちらを認識して、近づいてきた。

 流石に見失うほど頭は悪くないか。


 ボクは次いで、【火・玉・飛】で火玉を作ってウルフにぶつける。

 ルーンは一度使うと、それぞれがクールダウンに入る。それぞれのスタックを見極めて構成していかないと、詰む。

 管理が鬼だ。

 ちなみに今のボクの所持ルーンは「火x2、光x2、玉x1、飛x2、指定x1、壁x1、拡散x1、維持x1、分裂x1、矢x1、針x1、付与x1」という感じ。


 とはいえ、それぞれのルーンはすぐに回復する。一度の魔法で使うルーンが少ないほど、ルーンの回復は早い。

 【火・矢・飛・飛】なんて使うと、【飛】ルーンが回復する時間は2つそれぞれ個別ではなく、累積する。

 つまり2倍の時間がかかって、2つ同時に再使用可能になる。

 効果が高くなる組み合わせなら構わないかもしれないが、【飛】などは必須級ルーンだ。考えて使わないといけない。


 ここらへん、それぞれをベース魔法で単純に使っていれば起こらないミスなので、普通にゲームを遊んでいれば考えなくて済む部分だろう。

 オリジナリティ高いルーン魔法か、管理が楽なベース魔法か。難しいところだね?


 火矢用のルーンのクールダウンが終わって準備が整い、様子をうかがったところでウルフは事切れていた。

 ふむ。二発か。

 <火魔法>のスキルが十分強いのか、称号の力が強いのか。イマイチ判断できない。


 <解体>しつつ、先を進む。


 ちなみに、面白いことに【玉】ルーンは打撃系判定だったりする。

 魔法にもそれぞれ攻撃の種類に判定があるというのはとても興味深いことだと思う。


 さくさくと森へと分け入り、採取をしつつ、<魔力視>であたりを見回す。


 ウヅキやモミジだと、<気配察知>みたいなスキルを持っているだろうが、ボクはこれで辺り一帯を見れてしまうので、多分習得できないだろうし、しても意味はないだろう。


 魔力を完璧に隠せる存在や、魔力が無い存在を見つけることはできないが、そこまでの存在を、ボクが<気配察知>を習得したところで見つけられるとも思えない。

 こういうのは割り切りが大事だ。


 たまに魔力を持った木の実なんかを見つけては採取しつつ進む。

 まだアイテム的には「木の実」としか認識できていない。今後何かの役に立つだろう。

 

 この世界では自然に魔力が溢れているので、木々が吸い取った魔力が特定の木の実に溜まってしまうといった事があるようだ。

 例えば薬草なんかは、明らかに他の草と魔力量が違うので<魔力視>にすぐひっかかる。

 おかげで<捜査 Lv5>に全然経験値が入らない。

 これは返還候補かな。


 みたいなことをぶちぶち考えつつ、【デバッグ】で皆の状況を確認する。


 ウヅキとモミジは問題なし。

 シオンについても、ゆっくりとお散歩するみたいな速度で歩きつつウルフと戯れているようだ。MP量が定期的に減っているのでこちらも特に問題なし。

 デバッグのレベル上げに、適当に情報を出し入れしたりしてみる。


 我ながら忙しないなと思う。


 っと、ウルフを見つけたので火矢。今度はグループと戦ってみる。


 ふむ。一体がダメージを受けると、それに驚いて他の個体が混乱している。

 そのまま火玉で攻撃をしかけた個体を倒すと、ボクを探し始めた。


 <魔力視>は物体を通りこして見ることは出来ないが、なんとなく、常時発動している影響か、気配のようなものを探れるようになってきている。

 <魔力視>自体は、非常に負荷の高いスキルだ。しかし、ボクには<並列思考>があるので問題にならない。思考型スキルはかなり優秀なスキルだと思う!

 序盤に手に入れたのはでかい。


 クールダウン終了。

 火矢を残り2体へと放つ。

 次いで火玉を。


 ようやくボクを見つけて迫ってきた最後の1体。ボクへの迫った時点で、ボクは【光・指定・壁】で光壁を作り、目くらましに使う。

 光壁は、生物系の敵には特に魔法的効果はない。ただの光の壁だ。

 ただ、突然光る壁が現れると眩しいし、混乱するだろう。


 【光・針・維持・付与】で杖に光の針をまとわせる。

 ボクはそのまま光壁に構わずイッヌを壁越しに打ち据えた。


「ギャン!」


 勝ったぜ。

 流石に杖の物理と、針による強化はエグいようで、哀れウルフは志半ばで地に伏したのだ。

 我ながらルーン運用も中々上手く言っているのでは?


 【針】ルーンは相当使える。流石、書物から得られるルーンだ。

 それ単体だったり、飛ばしてもダメージは微々たる物だろうが、【付与】に合わせるとえっぐい。

 例えばこれをモミジの拳にでも纏わせたら、敵は震え上がるのではないだろうか。

 

 とはいえ、ルーン魔法は余裕がない状態だと流石に混乱してしまいそうだ。

 常に無数にあるルーンを管理しつつ、魔法を組み立てていく必要がある。

 自分の中で、いくつかテンプレートを作っておかないとダメだろうなあ。

 称号のせいでベース魔法の呼び出しやルーンの組み合わせ登録が出来ないんだよね。

 その分、強いってことなんだろうけれど。


 ルーンの組み合わせは、音声操作やショートカットだと手間がかかる。ここは脳波操作の出番だろう。

 ボクたちは元から脳波操作をしているから問題ないね。



「キャン」


 1時間ほどウルフを狩り続けている。森には、他にイノシシ型のボア、クマ型のベア(そのままだね)がいるが、ボクはそれらを避けている。

 ウルフの時点で複数人プレイで対処する相手だ。

 ボクは魔法で処理できるから問題ないが、流石にボアやベアはもう少し準備をしてからだと判断している。


 活動し続けて、疲れたので少し休憩。

 インベントリから串焼きを出して食べつつ、皆の状況を確認。

 特に問題なし。

 モミジとウヅキがすさまじい速度で森を移動している。

 シオンは相変わらずのんびり。たまにガックンと魔力が減っているが、一体なにをしているのか。……ベース魔法10個分くらいの魔力が一瞬で減るんだけど?

 まあ、大丈夫か。


 ボクは周囲の魔力を探りながら目をとじる。


 目を閉じていても、<魔力視>は発動している。

 ボクの周りの魔力に色がついて、蛍光色の森が出来上がる。結構綺麗だ。


 地面や草にも魔力があり、それぞれに濃さがある。

 それを体で感じ取り続ける。

 集中力を高めるのに丁度いい。


――スキル<魔力探査>を習得しました。

――スキル<瞑想>を習得しました。


 お、一気に2つ。


 じわじわと溜まっていた経験値が一気に閾値を超えたか。良き。


〜〜〜〜

<魔力察知>

 周囲の魔力を探り、肌で感じ取れる能力。

 スキルレベルが上がるほど、範囲と精度が上昇する。

〜〜〜〜

<瞑想>

 その場に留まり、休息することで、HPとMPの回復速度を上昇する。

〜〜〜〜


 どちらも予想どおり。<瞑想>は、ほっとけば誰でも得られるスキルかな。むしろ、今更習得とも言える。

 まあ本格的な魔法による戦闘は今日始めてだし、そう考えると順当。

 

 <魔力察知>はその名の通り。これで周囲の魔力を探ることができる。


 【デバッグ】を起動してスキルとリンク、マップに表示……はできないか。


「んー」

 

 スキルとリンクしても、方角と数値が表示されるだけだ。ボクが今、感じていることを数値化しているだけ。今のところ得に意味はない。


 これが他人のデータを見るなら意味はあるんだけど。


 周囲の情報を自動でマップに表示する、みたいな事がしたいのだな、ボクは。

 今は無理かな。スキルレベルが上がればあるいは。

 積極的にスキルレベルを上げていくことにしよう。



「お、お?」


 背後に動くものを感じて振り向くと、ウルフが腰をかがめてボクを狙っている様子が、魔力のシルエットでわかる。


 慌てず火玉。

 倒せなかったか。

 火矢でとどめを刺す。


 <解体>、<解体>っと。


 ふむ、動く魔力を敏感に感じられるようだ。

 こちらから探ることも集中すれば可能、と。

 目と感覚、両方で魔力を認知できるようになった。これは魔法職必須スキルだと言えるね。

 物陰に隠れても問題なし。

 良いスキルでは?


 <魔力視>は、中級以上の<錬金術>には必須ぽいから、今後、魔法職は皆がこのスキルを使えるようになるだろう。


「……うん」


 ちょっと危険だけれど目をつむってしばらく森を徘徊することにしよう。


 <魔力視>のみに頼って、ボクは歩き出す。気配に神経を集中させ、かすかな刺激に方角を定めて方向転換。

 シルエットに向けて魔法を放っていく。


 <魔力視>で木々の向こう側を見ることは出来ないが、<魔力察知>を併用すればそういった死角もなくせて、三次元的な空間把握が可能になる。慣れると、こちらのほうがボクはやりやすい。

 ドローンでも操作しているようだ。

 <並行思考>や<思考加速>といった思考型スキルにもガンガン経験値が入っているみたい。

 多くの情報を処理する必要があるのだろう。


 基本は火矢と火玉で、たまに杖で打ち据えて歩いて行く。


 はっはっは、皆ボクの経験値になるがいい。


◇現在のルイのステータス


名前:ルイ

職業:冒険者


左手:不可

右手:初心者の杖

胴:なし

腰:なし

足:なし

腕:なし

外装:なし

アクセサリー1:なし

アクセサリー2:なし

アクセサリー3:なし

アクセサリー4:なし


スキル:

<植物知識><採取 Lv13><捜査 Lv5><並列思考 Lv23><思考加速 Lv18><体術 Lv13>

<考察 Lv15><魔力操作 Lv34><魔力視 Lv12><解体 Lv4><農耕 Lv14><錬金術 Lv52>

<読書 Lv10><魔力察知 Lv4><瞑想 Lv2>

<デバッグ Lv26>

【デバッグ】

<短剣 Lv15>

【ダブルアタック】【クリティカルアタック】

<格闘 Lv10>

【ステップ】【強撃】

<火魔法 Lv23>

【ファイヤーボール】【ファイヤーウォール】

<光魔法 Lv12>

【ライト】【ライトアロー】

<神聖魔法 Lv10>

【ヒール】【キュア】

<生活魔法>

【着火】【クリーン】【ウォータ】【スモールライト】

<ルーン>

火x2、光x2、玉x1、飛x2、指定x1、壁x1、拡散x1、維持x1、分裂x1、矢x1、針x1、付与x1


称号:

「探求者」

 └住人たちの好感度が上昇:小


「魔導を歩む者」

 ├全ての魔法属性に適正

 ├全ての基本魔法スキルのベーススペルが使用不可

 ├合成魔法スキル、強化魔法スキルの習得・使用不可

 ├ルーンによる魔法詠唱に補正:小

 └同じルーンを獲得するごとにルーンの威力が上昇:中

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る