第12話 父と子の斬り合い

5人の忍が次々に倒される様子を巨木に寄りかかってみていた松本は、風間に向かい、

「やるじゃないか、息子よ」

といい、不敵な笑みを見せた。

「お前はあの世に送る」

風間天は刃を下に向け、峰打ちを封印した。

「その意気だ、天よ。勝負だ!」

松本は刀を左右に振ると、風間に切っ先を向け、走り出した。


風間も走り出す。切っ先が参道の砂利に触れ、線を描く。


助走をつけた父と子はともに跳躍した。


高さ3メートルほどの場所で刃が交わり、火花が散る。


風間は着地するとすぐに態勢を整え、攻撃を仕掛けた。


風間が先ほど対決した5人の忍と比べると、松本の剣さばきは格段に上であった。


風間は攻撃は最大の防御とばかりに、矢継ぎに刀を振るう。


刀と刀が触れ合うたびに、カンカンという高音が森に響いた。


風間は最初から肉を切らせて骨を断つつもりでいた。


太秦の撮影所に乗り込んだとき、松本の強さを風間は体感していた。

認めなくはなかったが、実力は松本が上だった。


そこで、捨て身の作戦に出る以外に勝機はないと理解したのであった。


ただ、これほど早く再戦することになるとは思っていなかった。


前回も、今回も、風間は誘われるように実父と刃を合わせることになった。まるで何か巨大な力が働き、二人を戦わせているようであった。


松本は風間の途切れない攻撃に防戦一方であった。


風間が松本を押し込み、後退させていく。


しかし、風間の決死の攻撃は松本の鉄壁の防御をなかなか崩せないでいた。


徐々に風間の息が荒くなってくる。


日本刀は意外と重く、厳しい修行に耐えてきた風間であっても、永遠に刀を振り下ろし続けることはできない。


松本は風間の疲れを察し、反撃にでた。


攻守が交代し、形勢が逆転した。


松本は攻められている間、風間の動きに注視し、既に癖をつかんでいた。


風間は防御の技術も高いものがあったが、鋭い突きを出した後、刀を戻す仕草が少しだけ緩慢になる。


松本は風間が突きを繰り出す機会を待っていた。


風間は肩で息をしている。


風間は、徐々に松本の剣さばきについていけなくなり、ついに右肩に切っ先が触れた。


風間が顔をしかめる。


深手ではないが、浴衣が血でにじんだ。


松本は攻めの手を止め、再び風間に攻めさせた。


そして、意図的に隙を作った。


風間は引き込まれるように松本の腹部目掛けて剣を突き出した。


松本は刀を持つ風間の両腕が伸びきったところで、攻めの態勢に移った。


風間は必死に刀を戻そうとした。


風間の眼差しには焦りが見え、そして、焦りはすぐに絶望感へと変わった。


そのとき、

『やめて!』

松本の心に聞き覚えのある声が響いた。


そして、目の前にいる息子に亡き妻の面影を見た。























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