第11話 忍 vs 天狗
東の森から飛び出してきた一人目の忍が、風間目掛けて刀を振り下ろした。
風間は右に跳び、この一撃をかわした。しかし、そこには別の忍が待ち構えており、袈裟斬りを浴びせてくる。
風間は身体を斜めに傾けてかわした。
背後から参道の砂利を踏みしめる音が聞こえる。
後ろを振り返り確認していては遅いと本能的に悟った風間は、袈裟斬りを浴びせた忍の懐に飛び込んだ。
そして、咄嗟に忍の襟を掴むと後方に投げ飛ばした。次の瞬間、
「ぎぃえええええぃぃぃ」
という雄叫びが糺の森に響き、ドサリと何か重いものが地面に落ちる音がした。
風間が振り返ると、投げ飛ばした忍が仰向けね姿勢で倒れている。
肩のあたりからはおびただしい量の血が流れている。
うめき声が聞こえた。運よく急所は外れたらしい。
誤って味方を斬り倒した忍は、横たわっている仲間の身体を飛び越えると、奇声を発しながら風間を襲った。
「おのれぇええ!」
風間は後方に向かって全力で走り出した。そこには、仲間の惨劇を目撃し、動揺していた3人の忍が立ちすくんでいる。
風間の接近に気づいた3人は慌てて刀を構えようとしたが、時すでに遅しであった。
風間は足からスライディングして中央の忍の両足の間を滑りぬけると、すぐに立ち上がり、振り向いた忍の右手を蹴り上げた。
忍の右手に握られていた刀が宙に舞う。
風間は、刀に気を取られた忍の腹部に蹴りを入れた。忍が後方に吹き飛ぶ。
風間は右手を天高く上げた。その手に刀が落ちてきた。
その間、風間は視線で対峙する残りの忍を制しており、敵は身動きを取ることができなかった。
風間は刀の柄を両手で握り直すと、中段に構えた。
風間天の実力を目の当たりにした、残った3人の忍の表情が緊張で強張る。
風間はすり足で3人の忍との距離を縮めていく。
そして、間合いに3人を入れると、刀の刃の部分を上に向けた。
峰打ちだ。
「なめやがって」
味方を袈裟斬りにし、返り血を浴びた忍が苦虫を嚙み潰したようにいった。
この男は忍軍団のリーダー格なのだろう。両隣の忍に目配せした。
2人の忍が左右に距離を取り、1人は風間の左斜め後ろ、もう1人は右斜め後ろに回った。
風間を中心とする三角形ができあがった。
風間が左に動くと、三角形も左に移動する。
そして、リーダー格の忍の、
「行くぞ!」
という声で3人が一斉に風間に向かってきた。三角形が急激に狭まる。
風間は重心を落とすと、3人をぎりぎりまで引き寄せ、コンパスのように自分を中心に身体を回転させた。
一回転したところで回転をやめると、3人の忍が一人、また一人と肩や腰を手で押さえて倒れ、のたうちまわった。
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