『先生、人生相談です。』

やまねこ

人生が嫌になる 1

そこは生徒相談室。今年度入ってきたばかりの先生が何故かずっと居座っている。いつでも相談を受け付ける為らしい。ただ新任の得体の知れない先生に相談なんてする人も殆ど無く、先生は何もしていなかった。しかし本日、いつも通り早朝にやってきてただ椅子に座って本を読むだけの仕事をしていた彼の元に1人の生徒がやってきた。相談、久しぶりの彼の本業だ。


「人生が嫌になりました。

「疲れてしまったのです。

「毎日毎日ただ同じことをする物語性の無い日々に。

「何が楽しいのでしょう。

「これ以上続けたいとは思いません。

「例えば、毎日同じ時間に起きること。

「例えば、同じ列車に毎日乗ること。

「例えば、毎日同じような授業を受けること。

「例えば、何も無い休み時間を過ごすこと。

「例えば、1人で今朝通った道を帰ること。

「例えなんて幾らでも言えます。

「確かにこれらは誰もがやっていることです。

「だからといって僕も真似する必要は無いと思うのです。

「なので相談です。

「人生が嫌になりました。


その間、先生は何も言わなかった。 ただ彼の話を聞き続けた。所々でうんうんと頭を揺らして。ただそれはどう見ても適当だった。生徒が喋り終えると、数秒沈黙して先生は言った。


「で、君は何をしたい?」


それを相談する為にきたはずだろうに。

この先生はあろうことか質問をした。

勿論、生徒は困惑した。

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