地下への穴

 あたしたちは、城のそばまで引き返してきました。でかスライムさんが耳を疑う情報をもたらしたからです。


 ――『オレ、アアイウノ、ミタコトアル』


 この島で船を見たことがあるというのです。それが本当なら、脱出への道が開けるかもしれません。


『ココ』


 正面玄関の真裏にあたる壁まで来ると、でかスライムさんが言いました。ココ?


『フネ、ココ』


「……どこじゃ?」


 まわりにそれらしきものはありません。というか、こんなところにあったのならとっくに見つけています。


『ココノ、チカ』


「地下……?」


 この城に地下があったのでしょうか。そんな通り道は見当たらなかったのですが。


『チョット、バレル』


 バレル? 銃身?? 謎の言葉に疑問を持っていると、でかスライムさんの一部が触手のようにぐにょぬらりんと伸びて、やがて切り離されました。


 ああ、ばれるって、ばらけるみたいな意味合いだったんですね。というより、


「ひいい! き、急に分裂するでない!」


 心臓に悪いから。


『ダカラ、バレル、ト、チュウコクシタデス』


 そうですねたしかに。ごめん。


 排出された個体の方はよちよちと歩いて壁の方に向かいました。


 見れば、壁のすぐそばの地面に鼠が入れるほどの小さな穴が空いています。ミニ個体はそこに体をねじこむようにして入っていきました。ううう。


『コウヤッテ、ハイレマス』


 でか個体の方が言いました。なるほど、この下に空間があったのですか。これはあたしたちでは気づけませんね。


『サア、マオウサマモ、バレテ』


 無茶言わないでください。




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