ミタコトアル

 くっついてひとつの巨大な塊になったスライムを見てあたしは威厳のある声でこう言いました。


「ひいいいっ!」


 ごめんなさい。ただの悲鳴でした。


『ヌウウウウ……。マオウサマ、オレデス』


「お、おれです?」


 合体不定形生物は低い声(?)で言いました。


『キノウエニ、イタヤツ』


 木の上にいたやつ。ああ、あれです。戦士さんがでっかい木の実と間違えて収穫したら雨に濡れて復活して大変怖しい思いをしたあれです。


「ああ、あいつか。よお」


 戦士さんがあっけらかんと言いました。よく動じずにいられますね。


「な、なにゆえにばらばらに分裂していたのじゃ! なにゆえにぐにゃぐにゃ巨大化でまざってぐわわっとなるのじゃ!」


 あたしの動じっぷりはこうですよ? これを少しは見習ってください。


『デカイト、フベン。ウゴキニクイ』


 だからって、ほいほい小さく分裂されてたまりますか。


『チイサイト。コエ、トドキニクイ。ダカラ、デカクナッタ』


 なるほど。つまりこの巨大スライムさんは、あたしに何か伝えたいことがあって合体することにしたんですね。


『オレ、サッキ、ミタ。フネ、コワレルノ』


 そんなの改めて言われなくてもみんな見てましたよ。それで今、伝説のパーティーがギスギスしてるんですから。


『フネッテ、アアウイウノ、ナンデスネ』


 スライムたちは、船を見たことはなかったんでしたね。さっきの船が初見だったのでしょう。瞬く間に壊れてしまいましたが。


「だから、なんだというのじゃ」


『マオウサマ。オレ、アアイウノ、マエニ、ミタコトアル――』





『――コノシマデ』




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