破壊

「こいつはすげーぜ! やるなユウ!」


 イカダと言っては失礼に当たるその出来栄えに、戦士さんがはしゃいでいます。


「いいえ(謙遜)」


 勇者さんもまんざらでもなさそうです。確かにこれなら大嵐でも来ない限り、航海はできそう。


 地味スキルとはいえ、そこはやはり勇者。頼りになる人です。


「フネ?」「フネッテナンダ?」「コレガフネ?」


 不定形のみなさんにはあまり伝わってないようでしたが。


「勇者さん、さすがです!」


「いいえ、いいえ(謙遜)」


 これでとりあえず脱出の手段は確保できました。あとは、魔力が尽きる前に無事に他の船か陸地が見つけられるかどうか……。


「おい、中に入ってみていいか?」


「はい」


 戦士さんが魔道士さんを勇者さんに預けて、へりを越えて中に乗り込みます。


「ブカソノイチニツヅケ!」「オオ!」「ノル!」


 戦士さんに槍(枝)を教わっているスライムたちが続きます。まあ、彼らの体重は大したことないから大丈夫でしょう。


「これってオールはあるのか?」


「はい」


 と言って、勇者さんは別の岩陰の方に向かいました。


 あとから思えば、この時に勇者さんを大人しく待っていれば良かったのですが、戦士さんは背中にくくっている自分の槍を取り出してオールがわりに持ち始めたのです。


「こんな感じか?」


 それが悲劇の始まり、というかトドメでした。


 へりを支点にして槍をぐるっと回す、はずが……


「あ」


 槍の重みに耐えきれず、へりが崩壊したのです。


 ああ。


 あの槍、めちゃくちゃ重いですもんね。




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