完成
あたしと戦士さん、そして戦士さんがおんぶしている魔道士さん(寝てます)は、勇者さんの後に続いて、森の中を進みました。
「ユケ、ブカソノサン!」「サンポ、サンポ!」
不定形生物も何体かついてきています。
あたしたちが向かっているのは、入り江状の浜辺。勇者さんが連日、イカダ造りの作業をしていた場所です。
「今更ですが、完全にお任せしてしまってすみませんね」
「いいえ」
知識がないからしょうがないとはいえ、あたしたちはイカダ造りを勇者さん一人にまかせっきりにしてしまいました。
もっとも、勇者さんはこだわりの強い人なので、迂闊に手伝ったりしづらい面もあります。以前に、勇者さんが得意料理の勇者スープを振舞ってくれるというので、良かれと思い野菜を切るのを手伝ったら、切り方が違ったらしくそれから大変不機嫌そうな顔をしていたこともありました。あたしが謝ると、
「いいえいいえ(これだから素人は……)」
みたいな顔をしていました。ですから、案外まかせっきりで良かったのかもしれませんね、と無理矢理納得してみます。
それにしても料理だのイカダ造りだの、妙に手先が器用な勇者さんです。
「はい(着きました)」
勇者さんの勇者らしからぬモテそうだけど地味なスキルについて考えていたら目的の入り江に着きました。イカダは岩場の影にあるとのこと。
促されて進むと、確かにそれはありました。
「おい、こいつは……」
戦士さんが思わず言葉を失いました。無理もありません。それはイカダとは言い難いシロモノでした。
綺麗にサイズを整えられた丸太や枝が精巧に組まれたそれは、鍋を縦に引き延ばしたような形状をしています。端の方はとがっていて、かろうじて人間四人が座れるスペースがあります。これはイカダというよりも……
「船じゃないですか、勇者さん!」
「はい」
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