朗報
仮にも勇者の一団の一人である戦士さんが、スライムとはいえ魔物と馴れあっていてよいものでしょうか。
「よお、ユウ」
戦士さんがテラスの下に向かって言いました。勇者さんが居たのでしょう。あたしもフェンスからそちらを覗きます。
そこには肩やら頭やらにスライムを乗せた勇者さんが、スライムたちを引き連れていました。
……。
勇者の一団の一人である戦士さんどころか、勇者さん自身が魔物と馴れあっていてよいものでしょうか。
「ア、マオウサマダ!」「マオウサマ、アサデス!」「アサダヨ、オハヨウ!」
勇者さんの肩に乗っているスライムたちがぴょんぴょん跳ねながら言いました。朝なのは知ってます。
「オイ、ブカソノサン、マオウサマダゾ!」「アイサツシナヨ!」「ケイレイ!」
勇者さんは部下その3と呼ばれています。勇者さんが部下その3でよいものでしょうか。どっちかというとあたしの方が勇者さんの部下その3なのですが。
「マッタク、レイギシラズダナ! ブカソノサン!」
しかも、なんだか戦士さんに比べてなめられていますね。勇者さん。
「勇……ユウさん、またイカダづくりですか?」
勇者さんはイカダづくりを担当しているのですが、ここ何日かは睡眠時間をけずり、早起きして作業に励んでいる模様です。なんだかんだ責任感の強い人。
「はい」
勇者さんがそっけなく答えました。
「どうですか。明後日には完成しますか?」
明後日。つまり、勇者さんの回復魔法が使えるタイミリミット。欲をいえば明日にも脱出して、陸地が見つかるまでの航海の時間を増やしたいところですが……。
「いいえ」
勇者さんが少し微笑んで首を振りました。え、いいえって……。
いや、待ってください。あの顔はひょっとして。
「もう完成したみてーだな」
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