順応
スライムの視覚器官がどこにあるのかはわかりませんが、確かに彼らは柵に一列に並び、海を見張っているようではありました。しかし、
「戦士さん。彼らは〝船〟がなんなのか知らないんですよ?」
二日目に集会を開いて話を聴いた際、「フネ?」と首(らしき部分)を傾げていたスライムたち。
「なんでもいいからなんか浮いてたら教えろ、って言ってある」
「言ってある、って。翻訳魔法かけてもらってないのに、どうやって伝えたんですか」
「そんなもん、なんとなく通じるだろ」
これだから脳まで筋繊維の人は……。
「おい、スライムたち。お前たちは今何をしている?」
本人たちに聴いてみましょう。
「ハ、ミハッテマシタ!」
「ナンカミエタラ、オシエロ、イワレマシタ!」
「ソコノ、マオウサマノ、ブカソノイチニ、イワレマシタ!」
「ナントナク、イワレタヨウナキガシマシタ!」
驚きです。
「スライムども、なんて言ってた?」
「……戦士さんの指示で海の見張りを」
「な?」
悔しいですが、やはり単細胞生物的な思考力が単細胞的な生物とうまく波長があったのでしょう。
それにしても、この数日の間で戦士さんはすっかりスライムたちと仲良くなってしまいました。戦士さんが出歩く時には、何匹か戦士さんについていく者がいます。
「セイ!」「ソイ!」「ハアッ!」
威勢のいい声が聞こえた方を向くと、木の枝を振り回すスライムが何匹かいました。
別のスライムが彼らに声をかけます。
「ナニシテンノ?」
枝を振り回していた一匹が答えました。
「ブカソノイチニ、オソワッタ!」
なにスライムに槍の稽古つけてんですか部下その1。
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