第三章

八日目

 いつものように、外から日が射しこみ、朝の訪れを伝えてくれました。


 そんなこんなで、島での生活も八日目。


 え……。うそでしょ、もう八日も経ったんですが。いつの間に? 早くない?


 そう思っても待ってくれないのが、時間というものです。


 あと二日で勇者さんの魔力が尽き、それを回復する薬も尽き、本当の意味でのサバイバルが始まってしまいます。その先に待つのは死。


 それだけは避けたいところ、というか、絶対に避けなければなりませんが、無常にも船の姿は見えませんでした。


 絶望しても仕方ありません。残り二日の間に船が見える可能性にかけましょう。


 今、見張りをしてくれている戦士さんと交代するべく、私はテラスに上がりました。


「よお、ドロ」


 戦士さんが、横にした槍を両手で上げたり下げたりしながら、言いました。この人はまた無駄な体力を消費しています。


「交代か?」


「はい……。って、ぜんぜん海見てないじゃないですか」


 戦士さんは海に背を向けて筋トレにいそしんでいました。


「だって飽きるだろ」


「船が通ったらどうするんですか!」


「何言ってんだ。通らねーから飽きたんだよ」


「飽きても見てくださいよ! 私たちの運命がかかってるんですよ!」


「大丈夫、あいつらが見てるから」


 そう言って手で示した先には、テラスの柵の上に並ぶ色とりどりの不思議ぐにゃぐにゃ生物たちがいました。


「ア、マオウサマ!」


 そのうちの一匹が私に気づきました。


「マオウサマ、オハヨウ!」「グッモニ!」「アサイチバン!」「ゴゼンサマ!」


 次々とぷるぷるしはじめるスライムたち。


「オメザメノ、ハグデスカ?」


「せぬ!」


 そんな文化はありません!




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