ものまね
「ちょっと……、歩いてたら気を失って」
「急に急にですかっ」
「その、あたし……。たまに、突然気を失うんです」
木の実を採ろうと一人で木に登って、スライムにびっくりして落ちただなんて格好が悪すぎて言えませんでした。しかも結局、木の実は手に入ってませんし。
「ええっ、今まで一度もそんなことなかったではないですかっ」
「えっと……。年にその、一、二回なるんです。ならない年もあります」
「知らなかったです!」
いい加減な病気をでっちあげてしまいしたが、穢れのない心を持った大賢者さまはあっさり信じてくれました。
「それならそうと言っておいてくださいですっ! びっくり心配したですよ!」
ちょっと心が痛い。
「センさんも心配してたです」
「戦士さんが?」
あの人は、あたしの心配に心の一部を割くような人ではないと思うんですが。
「さっき『何の収穫もねー』って言いながら戻ってきたんで、ドロさんが倒れてたことを話したら、無言でまた出ていったです」
「どこが心配してるんですか」
むしろまったく意に介してないじゃないですか。
「いいえ、あれは間違いなく心配してたです。いつもだったら『へっ、ざまーねーぜ』とかなんとか、言ってましたはずです」
たしかに。
「『あいつ、よわっちい体してっからなー』とか」
同じような台詞でも、魔道士さんに言われると、ちょっと傷つきますね。
「『ガッリガリだもんなー、あの女』とか」
「あの、魔道士さん……」
「『おとなしく、ものだけくすねてりゃいいんだよあいつは』とか」
「……そのくらいにしてもらっていいですか?」
「あ! ごめんなさいでしたっ!」
意外と再現度が高くてショックが割り増しでした。
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