盗賊のトライ
槍はズシンと派手な音を立てて、あたしの真後ろの木々の間に落ちました。
「ヒイイ!」「フイウチ!」「ツラヌカレル!」「ワアア!」「オユルシヲ!」
隠れてついてきて、魔王(あたし)一行の様子を覗き見ていたらしいスライムたちに悲鳴が上がります。
そうでした。
戦士という人は、器用さに関して著しく欠けているから力に頼りきりなのでした。攻撃力では最強でも、命中率は当てなりゃしません。
「おろ? はずれたか」
戦士さんが首を傾げました。
「おろ、じゃありませんよ! 殺す気ですかっ!」
「わりーわりー」
戦士さんは何事も無かったようにスタスタと歩くと、地面に刺さった槍を片手で引っこ抜きました。
「次は当てるから」
「無理ですよ!」
「下がってろって」
「下がったせいでむしろ当たりそうだったんですっ! もうやめてください!」
正直、百発投げても千発投げても無理でしょう。犠牲者はいずれ出るでしょうが。
「なんだよ、投げろっつったのおめーだろ」
「こんな魔球みたいなコントロールだと思わなかったんですよ」
「じゃ、おめーが投げてくれ」
「あたしがですか?」
「投げんの得意だろ」
確かに。ナイフやら毒針やらブーメランやら薬の瓶やら、投げられるものはなんでも投げては当ててきたあたしです。
「い、いいでしょう。貸してください」
「ほら」
そう言って戦士さんが渡してくれた槍は、
重すぎて持ち上がりませんでした。
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