背の高い木の木の実
あたしは大広間に戻ってため息をつきました。
船が近くを通らない島。これは暗雲が立ち込めてきました。
仮に勇者さんが丈夫なイカダを作れたとしても、どちらの方角にどれだけ進めば陸地があるのか見当もつきません。
こんなことなら天文学者さんでも仲間に加えておくべきでした。星の位置と動きを観測すれば、この島がどのくらいの座標にあるのかすぐに割り出してしまうような人。途中まで旅をした仲間の中にも、そんな人材はいませんでしたね。
「おい、ドロ」
戦士さんが戻ってきました。天文学の知識も造船技術もない戦士さんが。
「スライムのやつら、何か知ってたか」
「彼らは骨を見たことがあるそうです」
「はあ?」
「いえ、なんでもありません。戦士さんはどうです? 食べられそうなものは見つかりましたか」
期待はできませんが。
「ああ」
ああ?
「え、見つけたんですか」
「まー、まだ食べられるかどうかはわかんねーけど、木の実らしきもんが生ってる木を見っけた」
木の実。
「どんなのですか?」
「でけーのだった。スイカくらいあったな。森ん中に一本だけ他の木と違う木が一本だけあって、そこに一つ生ってた」
なるほど。ひょっとしたら、まだ魔物の浸食を受けてない木なのかもしれません。でかしましたね、戦士さん。天文学と造船技術こそないですが。
「……で、どうして採ってこなかったんです?」
見つけたらその場で採って、その場で食べちゃうタイプの人なのに。
戦士さんは肩をすくめて言いました。
「採れるもんなら、採ってきてる」
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