スライムジョーク

 あたしは一応、船とはどのようなものかをスライムたちに説明しましたが、やはり見たことのある者はいないようでした。


「ハイッ!」


 群衆のスライムの中の一匹が、右手ならぬ右突起を挙げています。黄色でした。


「申せ」


「『フネ』ハ、ミタコトナイデスガ、『ホネ』ナラ、ミタコトアリマス!」


 ちょっと待ってください。この魔王様にスライムごときがジョークですか。


「アハハ!」「ハハハ!」「マジウケル!」「ワラ!」「クサフカヒ!」


 しかも、めちゃくちゃウケています。スライムたちのセンス、わかりません。


「ア。ネンノタメ、セツメイシマスト、『フネ』と『ホネ』ヲ、カケテマシテ、『フネ』ノコトヲ、キカレタノニ、『ホネ』ノコトヲ、コタエルトイウ、ジョウダン、デス」


 そういうのは説明しちゃだめです。


「冗談は好かん」


 スライムジョークに湧いていたスライムたちが一斉に静まりかえりました。一言で統率できるのは気持ちがいいですね。


「我は船を欲さんとしている。それらしきものを見つけたら報告せい」


 魔道士さんが一人で見張るよりも効率はいいでしょう。あの子はすぐ寝ますし。


「ハッ!」


 紫さんが突起を敬礼のようにして言いました。


「会合は以上で解散じゃ。ご苦労であった」


 ふう。成果はあまりないですが、とりあえず解散です。もうこれ以上、この不思議軟体うねうね生物たちの中にいたら精神が持ちません。


「アノ……マオウサマ。モシ、オジカンアレバ、コノアト、アクシュカイヲ……」


「握手会?」


「ソノ……キボウシャガ、サットウ、シテマシテ……」


 さすがは魔物のカリスマ、魔王。居るだけで握手を求められてしまうのですね。そんなことで統率力が高まるのならば、やって損はないかもしれません。


 ですが、


「却下じゃ!」


 死んでもごめんじゃ。




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