スライムと船

 考えてみれば、彼らは水さえあれば生きられます。定期的に雨さえ降っていれば生活の心配はいりません。


「モドッタラ、マタ、ニンゲンニ、オソワレマスシ……」


 そこまで言うと、紫さんは焦りだしました。


「アッ、ソノ、マオウサマ! ケッシテ、ニンゲント、タタカイタクナイ、トイウコトデハ、ケッシテケッシテ!」


 まあ、魔物の大半は、好きで戦ってるわけではなさそうですね。それは冒険の中でもたびたび感じました。


「オユルシクダサイ! ネンジルダケデ、カキケスノハ、オヤメクダサイ!」


 そんなことできません。


「オユルシヲ!」


「黙れ」


「ダマリマス!」


「この島に他の生き物はおらぬのか」


「ミテナイデス! イマントコ!」


 三百日の間に見ていないのですから、いないのでしょう。というか、もし居たら、この最弱さんたちはさっさと淘汰されてしまっているはずです。


 エネルギーが確保でき、命を脅かす外敵がおらず、仲間がたくさんいる。彼らにとっては、案外居心地のいい島なのかもしれません。


 が、あたしは違います。


 こんな文明から切り離された島ではなく、人のいる町に帰りたいです。大きな家に住んで、美味しいものを食べて、そして、世界を救った英雄の一人としてチヤホヤされて生きるのです。


 こんなところで魔王ごっこをして野垂れ死んでいる場合じゃありません。なんとしても生きてこの島から出なくては。


「それでは、海に船が通るのを見たものはいないか」


 一番簡単な脱出方法は船に助けを求めること。この答えがYESなら、かなり希望が持てます。


 紫さんは頭っぽい部分をもたげて言いました。


「……フネ、トハ?」




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