スライム招集

 あたしは古城の外の開けたスペースにいました。ここは日陰で背の低い草しか生えておらず、少々じめじめしています。


 そこに色とりどりのスライムたちがぎっしりと集まりました。それぞれがぷるぷると動いて、左右にちょこんと出た手っぽい突起を動かしています。うへえ。


 魔王であるあたしは威厳を保つために一段高い岩の上に立っています。足を踏み外したら地獄の池にまっさかさまです。


「エットソノ、マオウサマ、ミンナヲ、アツメタデス」


 紫のスライムがスライム地獄池の中にある石の上によじよじとのぼって言いました。やはり彼(便宜上、彼とします)が代表者のようです。


「ヒマナヤツ、ダケデスガ」


 暇じゃないスライムが何をしているのかちょっと気になりますが、置いておきましょう。さっさと情報を聴いて解散したいところです。


「うむ。苦しゅうない」


 苦しゅうない、って今はじめて言いました。雰囲気でなんとなく言いましたが、使うべき場面として正しいんでしょうか。


「ソレデソノ、ソレデソノ、ナンノゴヨウデスカ?」


 紫さんは不安げにぷるぷるしました。


「うぬらに少々、尋ねたいことがある」


「エエ?」「ナンダロ?」「ナニカナ?」「プライベート?」「ケイケンニンズウ?」


 ざわざわする不定形たち。


「まず、この島のことである。ここがなんという名の島で、どの大陸に属する島であるのか、知っている者はいるか」


 あんなにぷるぷるしていたスライムたちがシーンと動かなくなりました。これはこれで不気味。


「もし知っているのなら隠し立てせずに教えよ。その者に褒美をとらす」


 褒美とか特に考えてませんが。


「アノッ、ソノッ」


 紫さんがあせあせしながら言いました。


「マオウサマハ、マオウサマナノニ、ゴゾンジナイデスカ?」


 痛いところをつかれました。



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