魔王幹部会議
こんな島からは一刻も早く出なくてはなりません。
あたしたちは今後の方針について再び会議を開きました。困ったら会議。それが世界を救うパーティの基本です。地味ですが。
「ふわあああ」
魔道士さんはまだ眠そうです。夜は早く寝て、朝は遅く起きます。よく寝る子のわりに、発育はいまいち。
「今、持っているもろもろの回復薬と勇者さんの魔力の限界を考慮して、改めて計算してみました。あたしたちがこの島で生きられる期間はおよそ――十日です」
あたしは現実を告げました。
「まだ島に他の動物がいねーと決まったわけじゃねーだろ。魚だっているかもしんねーし。木の実くらいあるだろ?」
「もちろん、もう少し調査の必要はありますが、期待はできないと思います」
「なんで?」
「あたしたちがこれまでの冒険で見てきた通り、魔物の住処に普通の動物は近寄らず、植物は魔に当てられて毒性、邪性を持ってしまうものです」
これまでの冒険、と一言で言いましたが、森に砂漠、雪山に火山、遺跡に海底と、実に様々な場所をあたしたちは旅してきました。こんなのんきな島よりもはるかに危険な場所を。
「最弱とはいえ、スライムは魔物です。こんなにスライムだらけの巣窟で他の生物が仲良く共存している可能性は低いでしょう」
「十日間メシなしってわけか」
「それは希望的な観測です。十日のうちに島から脱出する方法が見つからなければ、そこからが本当の『メシなし』ですよ」
「ちっ、皮肉なもんだな。世界を救ったオレたちが、スライムしかいねーような島で飢えてくたばるなんてよ」
「そうならないようにしましょう。ね、勇者さん」
「はい」
勇者さんは力強いまなざしでうなずきました。さすがは神に選ばれし少年。彼が「はい」といえば、その通りに実現する気がしてきます。
……もっとも、昨日は誰よりも早く諦めてましたが。
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