いちめんのすらいむ

 再び、スライムたちの動揺と振動。


「マサカマサカ、コノシマニ、ユーシャノヤロー、キテタノデスカ?」


 代表スライムが心底おびえた様子です。アウトロースライムもぴくりとしました。勇者というのはやはり弱小モンスターにとって恐ろしい言葉のようです。


 いや、実はここに今もいますし、あなたがた実は優勢ですよ。


「ああ。だが怖れるに足らぬ。我が滅ぼした。嘘だと思うなら確かめてまいれ! 浜辺に残骸が残っておろう」


 スライムたちは口々とささやきあっていましたが、


「ヨシ、ミンナデハマベマデ、カケアシ!」


 と、少しずつ個体数が減っていきました。……足?


 ふう、一安心です。これで窒息死あるいは圧迫死という最悪の事態はひとまず避けられました。


 やがて、すべてのスライムが部屋からいなくなりました。


「おかされるかと思いましたです」


「おい、なんでオレがおめーの部下なのか説明してもらおうか」


 いきなりですか、もうちょっと休みましょうよ。


「勇者さん。伝説の武器防具捨てた場所、おぼえてます?」


「はい(だいたい)」


「テラスから確認してみましょう。スライムたちが集まっているはずですから」


 あたしたちはテラスにあがりました。まだ雨は降り続けており、冷たい滴が体に当たりました。


 そして、おそろしいものを見ました。


「なんだこりゃ」「わわわわ」「!」


 あたしも卒倒しそうでした。


 テラスから見渡せる浜辺一面、色とりどりのスライムたちで埋め尽くされていました。百や千どころではありませんでした。組み合わせ論的爆発レベルです。


「これだけの数、どうして昨日はみかけなかったんでしょう?」


「突然、湧いて出たんじゃないか?」


 ゾクッ。


 なんていやな発想。




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