勇者、敗れたり
でも、どんなグループにもはみ出しものっていますよね。
「ケッ! オレハ、シンヨーデキネーナ!」
一体の、いかにも血気盛んな真っ赤なスライムが群れからはみでてきました。
「ショウコガネー。マオウサマガ、マオウサマダッテ、ショーコ!」
そういうひねくれたことを言っているとろくな目に会いませんよ。
ところが、
「タシカニ」「タシカニ」「タシカニ」
という声がささやかれはじめます。なんて流されやすい液体たち。液体だから?
真っ赤なアウトローのスライムは、こう続けました。
「マオウサマハ、ユーシャヨリモ、ツヨイデス。ユーシャヨリモ、ツヨイッテコト、ショウメイシテクレナキャ、オレ、シンジマセン」
もう、頭がいいんだか悪いんだか。
「おい、どうなってんだ?」
「あたしが魔王だという証に、勇者より強いところを証明しろと言っています」
魔王のほうが勇者より強い、という偏った価値観にもとづいた意見です。
「ででで、どうするのですか。ドロさん、勇者さまのことたおすですか?」
「いいえ(切実)」
勇者さんが、ぶんぶん首を振ります。
「それはだめですね。今、勇者さんの役どころは魔王の部下その一ですから」
とにかくあたしが勇者よりも強い、という何か説得力のある証拠はないものですか。
「ユウが勇者だってばらして倒せば?」
そうしたい気もしてきました。さっきから役に立ってないですし勇者さん。
「ああ。でもだめだな。今のこいつには勇者感がねー」
確かに。いたって普通の少年ですね。なぜでしょう。
「伝説の防具、着ときゃよかったんだよ」
「それですよ!」
あたしは、妙案を思いつきスライムたちに言いました。
「聞け! スライムたちよ!」
スライムたちが震え上がります。いや、ずっとですね震えてるのは。
「我はすでに勇者を打ち滅ぼしたのだ! この島でな!」
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