忠誠

 戦士さんが怒ります。


「な、いつオレがお前の部下になったんだよ」


「ここは合わせてください。ほら、魔王の部下感だして。あたしを崇めてください」


 勇者さんはすでに立て膝をついてあたしに忠誠を誓っていました。方針が決まると飲み込みの早い人です。


「魔王さま、はあはあ! はあはあです!」


 魔道士さんも床におでこをくっつけました。それを言うなら「ははあ」ですよ。


「くそ。あとでおぼえとけよ」


 戦士さんは右腕を左肩にあてました。これが彼女の国での忠誠を誓うポーズなのでしょう。


 忠誠の誓いっぷりがバラバラです。ひどい演技プラン。


 でも、ちょっと気分よかったりするのは内緒。


「見よ! 我の忠実なる僕たちを!」


 あたしはスライムたちに向けて、ここぞとばかりに威張り散らしました。


「スライムとか申したな? うぬらのようなものなど、我は念じるだけでかき消すこともできようぞ!」


 本当の魔王ならそのくらいできそうだと思って言ってみました。


 ところが、この発言は思った以上の効果がありました。


「キイタカ」「イマ、イッタナ?」「オッシャッタ」「キキノガスモンカ」


 なんだか、まずいことを言ったのでは?


 と、冷や汗をかいていると、代表スライムさんがキラキラした目、……は無いので、プルプルしたからだで感嘆をもらしました。


「マオウサマ! ワレラのナマエ、オボエテイテクレタノデスネ!」


「へ?」


 ああ、確かに言いましたね。「スライムとか申したな」と。


 え、まさかそんなことでこの液体たち、喜んでる?


「当たり前である! 自らの配下のものの名を忘れるものか!」


 するとスライムたちから「ワー」と歓声があがりました。


「「「「「「ヨウコソ、マオウサマ!」」」」」」


 スライム心掌握はわりと簡単でした。




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