ハッタリ

 スライムたちがざわついています。


 どっちかというと、ぷるついている感じでしたが。


「おい、そんなハッタリ通用すんのか?」


 戦士さんがひそひそと聞いてきます。もっとも戦士さんの言葉は向こうにはわからないでしょうから、戦士さんがひそひそする意味はあまりないです。


 あたしはひそひそと言いました。


「戦士さん、自分の国の王様の顔、わかります?」


「いや、城主くれーはわかるけど、国王の顔はコインでしか見たことねー」


「そういうことです。彼らは末端の兵士ですから、自分たちのトップの顔なんて見たことあるはずないんです。名乗ったもんがちです」


「そそそれで、うまくいくのですか」


 魔道士さんが震える声で聞いてきます。


 いってもらわないと困ります。


 スライムたちもひそひそと話し合っているようでした。彼らの知能が非常識に低いことを祈りましょう。常識的に考えて、こんなところに魔王がいるわけないですから。


 勇者さんは一人、目を閉じ手を組み祈りを捧げていました。いいのかそれで。


「エート、エートソノ」


 話し合いがすんだらしく、先ほどの代表スライムが話しかけてきました。


「ニ、サン、シツモンガ、アルノデスガ」


「なんだ?」


「ナゼ、マオウサマナノニ、ニンゲンデスカ?」


「敵をあざむくために、かりそめの姿をしておる」


 と、敵をあざむきました。


「ソノ、ウシロノカタガタハ?」


「あ。えっとそれは……」


 あたしはうしろのかたがたの顔を見ます。


 神さまに啓示を受けた選ばれし勇者さん。元某国辺境警備隊の戦士さん。魔道士の村の最後の生き残りの魔道士さん。


 と、正直に報告するわけにもいかず。


「この者どもは我の部下である」




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