打開策
戦士さんの平手打ちが勇者さんの頭に炸裂しました。
「久しぶりにしゃべったらそれか! てめーが真っ先にあきらめてどうすんだばか!」
まったくです。
でも、おかげで少し冷静になりました。自分より動揺している人を見ると、落ち着くものです。
向こうは膨大な数とはいえ、最弱モンスターです。何か打開策が……。
最弱モンスターということはおそらく。
「魔道士さん?」
「は、はい」
「スライムの言葉わかります?」
知能の高い魔物は人語を解しますが、スライムレベルになるともう異次元通信です。
「素ではむつかしいですが、ほんやくの魔法使えはたぶん――」
「要魔力消費ですか」
この際、仕方ありませんかね。
「おい、襲わないでくださいって頼んだら、耳貸すやつらなのか、あいつら!」
戦士さんが勇者さんと一緒に、はちきれそうなドアを抑えながら言います。
「試してみる価値はあると思いますよ」
「ですがですが、これだけいたら一人一人の声なんて判別できませんですよ!」
「いいんです。こちらの言葉が向こうに通じれば」
あたしの考えが正しければ。
「魔道士さん、それでは翻訳魔法をあたしに」
「……わかったですが心の準備してくださいね、きっとうるさいですよ?」
魔道士さんが、呪文を唱えます。
すると、あたしの耳に、さっきまでは無かった無数の話し声が聞こえてきました。開演前の劇場のようなごった煮状態で、一人一人何を言っているかはわかりません。
「おい、もうもたねーぞ!」
「受け入れよう、死を……」
「てめーはだまれ!」
勇者さんにツッコミを入れるために、戦士さんが手を離した瞬間、扉が派手な音を立てて壊れ、大量のスライム雪崩が起きました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます