上から下から

「ひやう!」


 思わず、変な声が出ました。


 見れば穴の向こうからオレンジ色の固まりが這い出てきています。


 あたしののぞいていた穴だけではありません。らせん状に穿たれた穴という穴から、それはそれは色とりどりのゼリーがぬめぬめと。さらに、次々と。


 きもちわるい……。


 接触したいというのはあくまでコミニュケーションをはかりたいという意味で、本当にじかに接触したいわけでは決してありません。うへえ。


「ちきしょう、入ってきやがったか!」


 戦士さんが槍に手をかけます。


 ですが、戦士さんの無駄にでっかい槍はこの狭い廊下では不利ですし、次々と這い出してくるスライムすべてに対抗するのは難しそうです。たぶん無理。無理槍。


「おい、どうする?」


 正面扉への道はすでにカラフルなスライムの群れで足の踏み場もなく、外に脱出するのは難しそうです。


「屋上に逃げましょう。勇者さんたちのところへ!」


 あたしと戦士さんは階段に向かって走りはじめました。


 あの人たちなら何千匹スライムがいようが、魔法で一発KOです。


 情報集めのために魔物と接触をはかろうという案はもう無しの方向で。回復薬温存のために勇者さんの魔力を温存しようって案も、もう無しの方向で。


 だって、あんな――うぅ、さっきの感触を思い出すと寒気が。うわあ。


 階段を一気にかけあがり二階へ、


 あがったところで、あたしは勇者さんに激突しました。


「わっ」「!」


 二人ともその場に倒れます。精神が入れ替わったりしなかっただけ良かったです。


「おい、何やってんだ、さっさと屋上へ!」


「屋上はだめだめです!」


 勇者さんを助け起こしながら魔道士さんが叫びます。


「スライムでちっそくしですっ」


 見れば階段の上からも、パステルカラーのまだら模様がじりじり近づいていました。




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