魔道士さんと勇者さんが、最初の見張りにつくことになりました。


 本当は魔道士さんだけだったのですが、一人で心細そうな魔道士さんを見て、勇者さんが一緒に見張るとついていきました。


 戦士さんは「偵察してくる」といって一人で外へ出て行きました。まあ、あの人は死にゃあしないでしょう。


 あたしはもう少し建物内の探索を。ひょっとしたら隠し食糧庫か隠し宝物庫がないとも限りませんし。とくに隠し宝物庫。


 何度も調べないと見つからない仕掛けって、ありますからね。


 気になったのはあの穴でした。穴というのは何かを差し込むものです。往々にして。あそこに差しこむべき鍵か何かがあるのでは。


 真っ先に試すべきは自分の指でしょうが、それはなんか怖いのでやめました。指をいれた途端に穴に歯が生えて噛み千切られる、なんてことも起こりかねませんし。


 バンダナを何度か巻いて筒状にしたものをいれてみましたが、引き抜いても布が少し汚れただけでした。


「何もなし、ですか」


 穴は無数にあいています。正解の穴はべつなのかも。


 ひとつずつ試しましょうか……。


 と、思っていたところ、外からポツポツと音が聞こえてきました。


「雨?」


 そういえば穴から差し込んでいた日の光はさっきから消えていました。空が雲を覆っている証拠です。


 あたしは城の外を、穴にギリギリ顔がくっつかない程度に近づけてのぞいてみました。


 やはり、雨でした。


 雨音は一気に激しくなり、穴から見える景色にいくつも縦線が入ります。


「おいドロ!」


 外に行っていたはずの戦士さんが、血相をかえて戻ってきました。


「どうしたんですか?」


「やべーぞ、木の実拾って食おうとしたら、魔物が出やがった!」


 なんですって。ちょっと、戦士さん。


「あれだけ言ったのに、なんで拾い食いするんですかっ!」




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