英雄会議

 二階にある大広間を使って、あたしたちは会議をひらきました。


「な、途中食えそうな木の実がいっぱい落ちてたんだって」


 戦士さんが議題と関係のない発言をします。


「うかつに拾い食いしないでくださいよ。勇者さんの治癒魔法でしばらく生きられるんですから。変な毒に冒されても、解毒魔法に魔力を使ってる余裕ないですからね」


「うー、メシくいてーな」


「食糧問題はあとまわし」


 あたしは仕切り直しました。


「とりあえずはここを拠点にするということでいいですね。雨風をしのげますし」


 あたしは上を指差します。


「交替でテラスから海を見張りましょう。船が通ったら魔法で合図を送って救援を」


「まー、それが妥当って感じだな」


「いかがですか?」


「はい(賛同)」


 勇者さんは即答してくれましたが、魔道士さんは不安げ。


「どうしました?」


「なんだかそのなんだかその、ここいやです」


 子供みたいな人が、子供みたいな単なるわがままを言いだしました。


「我慢しろよ。外よりかだいぶマシだろーよ」


「それはそですが、いやな感じするのです。ここは誰かの家ではないでしょかね」


「誰もいねーじゃねーか。いたとしてもとっくに死んでるか、島出てんぜ」


「そなんですがっ、……そなんですが」


 魔道士さんは高い魔力を持っています。ゆえに、あたしたちの感じ取れない魔物の気配を感じとることがあります。ただし半分は気のせい。


「何か、いるんですか?」


「そです! はっきりとはわかりませんがっ」


 魔道士さんが助けを求めるような声であたしに言います。


 が、あたしは冷徹に返しました。ごめんね。


「なら、なおさらここに留まりましょう。今は魔物だろうがなんだろうが、誰かしらと接触をはかるのが先決ですから」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る