まんなか城
お城の中には誰もいませんでした。
というより、何もありませんでした。ただ床があり、ただ廊下があり、ただいくつか部屋がある。お城らしく作られた空間があるのみです。
植物に侵食されていたら嫌だな、と不安を抱きながら入りましが、これなら床の隙間から花の一輪でも咲いてくれていた方がマシというものでした。
例の「穴」はしっかり内側(廊下の壁)からも確認できました。用途は不明。
「スッカスカだな」
三つめに調べた部屋にも何もないことを確認し、戦士さんがつぶやきました。
「新居の内見に来たみてーだ」
まったくです。そして、きっとここを紹介されたら断るでしょう。
「食い物なし、か」
金目のものもなし、と、あたしも盗賊らしい感想をつぶやきかけましたが、戦士さんに何か言われそうなのでやめました。
そこへ、廊下の奥を先に見に行っていた勇者さんと魔道士さんが戻ってきました。
「階段あったですよ」「!」
のぼってみると、お城は三階建てでした。
二階は、一階と似たような構造で部屋は大きなものが一つと、小さいものが一つであるだけでした。例によって中はからっぽ。
三階は階段をのぼるとすぐに扉があり、開けると(あたしが開錠します)テラスに出ることができました。
「わぁ」
魔道士さんが、太陽の光を手でさえぎりながら、その光景に思わず息をのみます。
三百六十度を森に囲まれ、そして浜に囲まれ、さらに外は果てしない青。
浜辺からは、この建物は見えませんでしたが、それなりの標高にあるようです。丁度、島の真ん中あたりでしょうか。
「絶景スポットではありますね」
「絶景はいーけどさ、ぜんぜん陸地見えねーぞ」
ここは大陸からほど遠い、海のただ中に位置する島なんでしょうか。
――「新居の内見に来たみてーだぜ」
戦士さんの冗談が、真実味を帯びてくるような気がしました。
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