所持スキル

 道はいつしかゆるやかな登り坂となり、のぼりきったところには石造りの小さな家がありました。


 家というより、お城みたいな感じです。童話の挿絵に描かれたお城をそのまま普通の一軒家サイズにして作ってしまったような。


「ごめんくださいでーす!」


 魔道士さんが立派な両開きの正面扉を叩いて呼びかけましたが、返事はなし。


「人はいねー感じだな」


 残念ながら同意せざるを得ません。城壁には植物のツタがはっており、しかもそれは装飾的なものでなく、手入れがされずに這っているという印象でしたので。


「?」


 勇者さんが、城壁に人差し指が入る程度の穴が無数にあいているのを発見。


「なんだこりゃ、なんかの武器で貫通させられたのか?」


「どうでしょう? それにしては妙に規則的ですけど」


 穴はらせん状にきれい配置されており、敵襲により穿たれたというよりは、初めからこういう設計で作られたと考えるほうが自然でした。


「あ、なか見えるです」


 意外と怖れを知らない魔道士さんは、穴に目をくっつけてます。わあ。


「暗くてよくわかりませんですね」


 ならば何をもって「なか見える」と。


「どうするユウ、入ってみっか?」


「はい(キラキラした目)」


 冒険少年な勇者さんです。


 ああ。ダンジョン探索なんて、もう一生しなくていいと思ってたのに。なかなか人生設計の通りには、ことは運ばないものですね。


「よっしゃ。んじゃ、ドアぶっ壊すからみんなどいてろ」


 この人の発想はわかりやすいです。


 が、あたしは無視してあっさりと、扉を引きました。


「ありゃ、なんだ。開いてたのか?」


「いいえ。あけたんです今さっき」


 盗賊ですから一応。えへん。




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