グミ

 翌朝、あたしたちは森の中の探索に向かいました。


 森に足を踏み入れると、明らかに道と思われる木の生えてない区域が奥へと長く伸びているのがわかります。


 あたしは少しほっとしました。これなら迷う心配は少ないですし、何より道があるということは、この島に人がいる可能性が高いです。


 まあ、賢い魔物が獲物をおびきだすために作った、魔窟への道という線も考えられないことはないんですが……。


 木の作る影で日は遮られ、昨日よりはいくらかラクな行軍でした。


「そういやさ。お前ら、ゆうべ変なもん見なかったか?」


 戦士さんが鞘に入った槍をステッキみたいにくるくるしながら聞いてきました。この人の癖です。あぶないです、この癖。


「変なもんとは?」


「?」


 勇者さんの特技の一つです。「はい」「いいえ」以外にも「!」と「?」を頭上に点灯させて意志を表現できます。


 ……そこまでするなら普通にしゃべればいいのに。


「マドは、みてないです!」


 そりゃ、魔道士さんは寝てましたからねずっと。


「見張りんとき、森のほうにさ。一瞬でっかいグミの山みたいのがたくさん見えたんだよ。すぐ消えちまったけど」


「グミ?」


 あたしは初めて聞く単語でした。


「ドロさん知らないですか? グニグニしてて、プニプニしてて、いろんな色があって、甘いです」


 食べ物ですか。食べ物については毒がなくてよっぽどまずくなければ基本オールOKな方針なので、あまり詳しくないです。


「おなかすいて、夢でも見たんじゃないですか」


 戦士さんは一に運動、二に食欲の人で。


「だったら、もっと腹にたまる食いもんの夢見るだろ? なんでお菓子だよ」


 グミがお菓子に属するものと、あたしは初めて知りました。




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