≪はじめてのお〇〇≫【SIDE♂】
「いいか!?絶対覗くんじゃねーぞ!?」
「わかってる、わかってるよ」
「マジでそれは犯罪だからな?覗いたらマジで警察呼ぶからな!?」
「信用ねーな。自分を信じようぜ」
「自分だから信じられねーんだよ!!」
バタン。ガチャン。
浴室の内側から鍵をかけられたようだ。
まったく、自分を信用できなくなったら地獄だぞ。
俺が分裂し、女体化したハルとすったもんだをしている内に、夜になっていた。
今後発生するであろう諸問題はともかく、飯を食わなけりゃ腹が減るし、飯を食えば出るものは出るだろうし、身体を清潔にするためには風呂にも入らなきゃならない。
あいつ、いつでも自分のオッパイもケツも見放題だし揉み放題だしその気になればそれ以上の事だってし放題か。羨ましい限りだ。
多分俺の事だから、それ以上の事までしちまうんじゃねぇのかな?ウフフフフフ。
イカン。またアッチが元気になってきた。
自分で女になった自分の入浴シーンを想像して昂るなんて、俺も相当ヤバいが、健全な男子ならこの状況になったら絶対こうなるってのは、間違いないと力説したいぞ。
正直、今やる事やっておかないと、色々と支障がでそうだ。
これは変態行為ではない。健全な男子高校生が健全な精神を保つための、必要な儀式だ。
俺はやや前かがみの姿勢でトイレへ籠る事にした。
ここから先の描写は、誰も喜ばないだろうから省いたほうがいいだろう。
「ふぅ……………………………………」
健全な儀式を比較的短時間で終わらせた俺は、ソファに寝ころび、冷静さを手に入れる代わりにややダウナーになった頭でこれからの事を考えようとしていた。
ハルの事を、どうすればいいか?
もしかしたら、明日には綺麗さっぱり何事もなかったかのように戻っているかもしれないが、そうじゃなかったとしたら、どうしたらいい?
普通……。普通の事態でなくても、普通の高校生だったらこの状況をどうするか?
というより、今更だが俺は人より家庭環境が異なっているので一般的な普通の高校生とは言えないかもしれない。
俺は、高校に入ってから親父と大喧嘩した挙句に家を追い出された。
親父は元自衛官幕僚、元政治家、現綜合警備会社の会長という、認めたくはないが有力者とか言う奴で、金も人も一般市民よりは自由にできる。要するに、超エリートなのだ。(反吐が出るが)
そんな親父にとって、俺みたいなグータラ息子の存在が耐えられなかったのか、ある日書斎に俺を呼び出して「お前には、想像力がない。生きるということがどういう事か考えていない」とか偉そうな事を言ってきたもんだから、俺もつい頭にきてそこから口論になった。
その結果、俺は家を追い出され、一人でアパートで暮らす事になった。
それ自体はむしろ気楽な暮らしを謳歌できて逆にざまあみろと言ったところだが、なんだかんだ言って学費とアパートの家賃だけは世間体もあるのか家から払われている。それはそれで、腹は立つがなくなると困る。(たぶん、もしかしたら母さんが色々親父に言ったのかもしれない)
反骨心と甘えが同居していて、自分が自分でイヤになる事も多かった。
だが、結局は今の環境に甘んじた。
だけど、俺だっていつまでもこのままというわけじゃない。
俺は将来、プロのカメラマンになって、親父を見返してやる。
それまで、家には必要以外頼らない。
頼らないつもりだったが……
現状、ハルをなんとか出来るのは俺の思いつく範囲で、親父しかいない。
くそったれだが、どんなに頭をフル回転させても最良の方法はそれしかないようだ。
俺はスマホで戸籍の取り方や、戸籍無しでも生きていく方法など、考え着く限りの手段を調べてみたが、やはり色々と難しいようだった。
前例として、記憶喪失者などに戸籍が与えられるケースはあるにはあるが、それも直ぐにと言うわけにはいかず、そうとうの時間がかかる。
まさかそれまでハルをずっと家に匿うわけにもいかないし、かと言って例えば保護施設にハルを入れるのは、それはそれでどうかと思う。高校時代の1年は貴重だという事は、まだ若い俺でもなんとなく知っている。
それなら、家を頼るしかない。
ハルは嫌がるだろうな。なんて言っても、俺なのだから。
だが、最終的にはハルも納得するだろう。なぜなら俺なのだから。
俺の事は俺が一番よく知っている。
自分自身、情けなくなる。
親父の力は借りまいと家を飛び出したはいいものの、結局親父の金で学校に通って、家賃まで払わせている。そして、イレギュラーとは言え今みたいな状況になったら親父を頼るしかない。
「ちくしょう…」
俺は独り言ちて、スマホのメッセージアプリを開いた。
このスマホだって結局は親父がいなければ契約すら出来ないんだ。
母親の連絡先を開いて、メッセージを打ち込む。
〔アマハル/@母さん: ゴメン、ちょっと困った事が起きた。詳しい事は会って話すから、明日、一度家に顔を出したい…〕
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