きうる

朝、6時に起きた。

家を出て、散歩に出かけた。

池に来た。池の中にはぽつんと、

岩があって、そこの上には蛙がいた。

蛙はじーっと見つめてきて、

そしてぴょんと、池の中に飛び込んだ。

すると、その瞬間に電話がかかってきた。父が死んだ。父子家庭だったので、僕には最後の親だった。

病院に、急いで向かった。

何故だろう、泣かなかった。泣けなかった。それから1ヶ月間、ぼーっと生きてきた。

朝起きては会社に行って、帰っては寝る。そんな日々だった。

それを察してか、妻と双子の子供は、

あまり話しかけてこなかった。

もちろん、自分からも話しかけなかった。そんな時、あえて、父の命日の日に、命日の1ヶ月後に、またあのひとおなじことをすると決めた。

予定通り池へまた散歩へ出かけた。

するとそこにはまた、あの日と同じように岩があり、蛙がいた。蛙はいつもやってるかの如く、じーっと見つめてきた。そしてぴょんと池の中に飛び込んだ。

そうすると、またもやいつもの如く、電話がかかってきた。

妻が死んだらしい。

何故だろう、最近自分の周りの大切な人がどんどん死んでる。とりあえずすぐに病院へ向かった。

その時は父の時と違って泣いた。泣けた。子供に、なんで泣いてるの?と聞かれた。何故だろう、こたえなかった。いや、答えれなかった。わからなかったのかもしれない。

それからしばらくして、ふと思ったことがある。もしかしたら、蛙のせいなのかもしれない。だとすると説明がいく。

蛙は悪魔か死神なのだ。池は地獄の入口かなにかだろう。そう思い、今すぐ元凶の蛙を殺す事に決めた。すぐに池へと向かった。蛙はいつもの事のように岩の上にいた。私はすかさず石を投げつけた。

今思うと前回もそうだったが蛙の目は赤かった。しかし、蛙はビクともしなかった。蛙は岩の上にいるのに、電話がかかってきた。双子の子供が跳ねられたらしい。しかも池のすぐ側で。蛙はチッと舌打ちしたかに聞こえた。しかし違った。蛙の赤い目が溶けて血という文字になったのだ。私はすかさず血を差し出した。自分で持っていたカッターで手を切って。

すると、蛙はぴょんと池の中に飛び込んで、いつものごとく電話がかかってきた。子供が一命をとりとめたそうだ。

私は気がつくと病院にいた。すぐそこが病院だとわかった。私は医者だったから。

蛙は一体なんだったんだろうか…

おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きうる @kiurudesu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る