第07話 部活だ!セッションだ!部員候補者だ!? -01

「よし、早速指導だ!」


ベースへの新たなる挑戦の決意を固めた俺。

先輩のアコギのあの上手さを追及した張本人、本人のしごかれたという発言を聞くに相当厳しいに違いがない。先生はといあいず流す具合で簡素的な楽譜をくれたがそれは意味を持たないかもしれない……


「は、はい……」


「どうしたんだ奥谷緊張してるのか?」


それを考えると体が妙に強ばり、返事の声が不安で小さくなる。


「まあいいや、とりあえずタブ譜と宮崎からもらった簡単なコードが乗ってる楽譜モドキあるだろうそれ私にも見えるように置け」


「あ、はい!」


俺はそう指示されて慌てて楽譜立てを二人とも見やすいように置く。


「じゃあまず、見本見せるからそれで色々解説していくな」


「はい……」


楽譜をセッティングし終わると、先生はスマホをスピーカーに繋げ音源を流そうと水色のスマホを取り出す。よく見ると毛むくじゃら青色の怪物でモンスター○○のサ○ーだ。

普段から眉間にシワがよってそうな先生にふさわしいスマホケースでも類は友を呼ぶのだろうか。ちなみに俺は爆笑なんとかの緑派でもなく、ロリコンじゃないがブー派です。

自分のケースは普通だが。


「見とけよ私の長年の腕前~、でもこんな簡単な曲に腕前も糞もないか」


そういって、サ○ー派な玉置先生はなんなく弾いてくれた。弾いている時の先生は授業を真顔でしている時とは違い、なんだか表情が弾んでいて楽しそうだ。

そのギャップがおかしく思わず、苦手笑いしそうなる。


「まあ、とりあえずこんな感じなんだが……どうだあんまり難しくは無さそうだろう?」


確かに演奏はそう難しい事は出てこないし、あらためてタブ譜と簡素楽譜を見るが、押さえる所が一本しかないしタブ譜がよく分からなくても簡単なそうだと分かる。

まあ、難しい所といったら終盤の「夢ならさめないで」の所が終わってからしばらくしてテンポ少し上がる所くらいか……

それくらいだろう。


「まあ、練習あるのみだなても簡単だから1週間くらいあったら大体できるだろう普通にギターは弾けるんだし……」


先生は大きく過大評価してそう言い、ベースを俺に手渡すと教材のDVDをテレビに入れてから先輩の方へ勝手に行ってしまった。

先輩の発言のせいで手厳しい指導を想定したが、なんだよほぼ投げやりじゃないか。

曲が簡単すぎるからだろうか、それもあるし俺はギター弾けるしそれなりにほっておいてもできると思ったのか。

まあそれにしても投げやりという俺の感想は変わりない。とりあえずだ。アンプを指してと……


「動画を再生と」


練習、練習っと……

どう悪態をつこうと俺はこの選択にたどり着くなのだ。

今はまともにベースが弾けない。

皆と合わせるために練習をするただそれだけだ。皆とできないと悲しそうな顔の先輩のそして新たな決意を決め部活に入ってくれた葛城さんのためにも。


「えっと、なるほどそういう感覚で弾くのね……うんうん、うん?」


さすがに最初は苦戦をしいられる。

ストロークするときに、弾きたい弦の下にあたり上手く低音が出せない。

しかしこんな事で俺は挫けたいはしない。


一方その頃、先輩達は


「うん、大体あってるね!」


「そうね以外と」


先輩と葛城さんは初めてだというのに、なんなく合わせられタイミングもリズム感もバッチリであった。それでも3回くらいは合わせたが。


「うん、まあいいんじゃないか」


手厳しいという噂の先生もまあ納得と頷きなが腕を組んでいる。

二人は先生のその感想と反応を見ると、嬉しそうに見つめ合い笑い合う。


「柚菜ちゃん中々いいドラムだったよ!」


「いや、先輩が合わせてリードしてくれるから……」


二人は自分の腕に謙遜し合って顔を互いに赤らめている。そんな仲つつましい二人を先生は雑誌を読みながら微笑んで眺めている。


「それはともかく、どうします先輩もう一回合わせますか?」


「え!? そ、そうだな……」


「お前らそんだけ出来るならもうやる必要あんまなくないか、あんまり同じことをやり過ぎても力むと思うし」


これからどうしようか悩む二人に先生はなんとくな口調でそう提案すると、先輩は腕を叩いた大きな声と音を立てる。


「あ、そうだ、ちょっと待ってて!」


先輩頭の電球がすぐに光り直ぐ様アコギとカホンを持ってこようと音楽倉庫へ急ぐ。


楽器倉庫(茂明のベース練習場所)


ベースの練習を開始して小1時間ぐらい、少し疲れたので休んでいると先輩がいきなり部屋に入ってきた。


「あれ?先輩どうしたんですか?何か用です?」


先輩は俺の声に気づくと、頭をピクンとさせて反応しこちらを向いて楽しそうにニッコリと笑いながら答えた。


「うん、ちょっとアコギとカホンを!」


弦楽器のアコースティックギターとリズム楽器のカホン。俺は頭の中で大体察しがついた。

練習が大体整ってきたので、少し機転を変えてアコースティックバージョンでもやってみようとでも誰かが思いついたのだろう。


「ううん……よ、ヨイショ……」


そう俺が感心に浸っていると、先輩のカホンを持ち運ぼうとして踏ん張っている声が聞こえた。



「あ、カホンは俺持ちますよ!」


大きな木材の塊を女子に持たせる訳にはいかないと男のプライドが騒いだので俺は先輩を手伝う事にした。それに、先輩のアコースティック演奏はもう一度聞きたいし、なんなら毎日聞いていたいと思ったのも理由の一つである。


「あ、う、うん、はあ……」


先輩は疲れたのか、少しふっくらとした両腕を床について一休みさせている。

先輩の体型はいい感じ肉ついていてほんの少しだけふっくらとしている。それに、あれだけの運動量だと言うのに一息だが疲れたため息をついている。

きっとあまり運動は得意でないだろう。自分も人に言えるほどもうしていないし、得意でもないが。


「アコギは私が持つね……」


先輩は年上としてのプライドかそれとも自分の運動不足を妬んだのか、残念そうに顔を伏せてアコギのショーケースの方へのそのそと歩いて行った。俺はそんな先輩を愛らしく眺めながら本部屋への開けてあったドアを通り向ける。


「あ、茂明」


「奥谷……」


通り向け、先輩の愛らしい様子が死角で見てなくなると先生と葛城さんがお出迎えだ。


「奥谷悪いな、手伝わせて……」


「いえいえ、俺もちょっと休みたいと思っていましたから」


先生が申し訳なそうに謝るので、俺は優しい笑い顔を整え心配はない表現をする。


「だったらいいが……」


「ははあ」


俺は先輩の歌が聞ける効果なのか、自然と機嫌がよくなり爽やかな笑い声を出す。


「まあ、あんたどうせ先輩の歌でも聞きたいとでも想ったんでしょ、男なんて単純よねバカぽ~い」


先輩が目と鼻の先にいるが、少し遠くて聞こえない事を良いことに葛城さん俺は冷ややな目で見つめる。

俺はその発言に喉を今にも大きく鳴らしそうになったが優しく整えた顔を崩して頬あたりにガムがくついているように頬を引き吊り、少しの苦笑いで耐える。


「お~い、持ってた!皆!」


そんな風にする俺だったが直ぐ様先輩がアコギを抱えてニコニコとやって来て、俺はその姿を見た瞬間元の爽やかな顔に戻った。

俺はその表情のままそっとカホンをその場に置いて、初めて卒園式の幼稚園のように丁寧に姿勢よく椅子に座った。


「本当バカぽい……」


葛城さんはそんな俺を呆れた顔で見て小さく呟く。普段短気で反応しやすい俺なら、それに反応するが今は機嫌がいいので昔のテカテカラ人形みたいに笑顔のままである。

何より胸がワクワクと疼いている。


「ねえねえ、柚菜ちゃんカホンできる?」


「え、え?まあまあ」


「よし、とりあえず一応課題だったし小さな恋の歌やろうか!」


先輩はギターでコードをアルペジオをで綺麗に鳴らして確認を求める。


「うん、いいわやりましょ先輩」


葛城さんはさっきの冷ややかな目をすぐに高揚観の高まったキランとした目に変えて俺が前に置いたカホンの上に座った。



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