第06話 始動? -05
「う…… 宮崎……」
玉置先生は、今先輩に同級生の友達ができた事を知り喜んですすり泣いている。
「うう……」
「もう、先生」
「大げさですよ~」
俺と葛城さんの二人はそんな先生をそっと見てながら、穏やかな声で先生を宥めながら微笑をこぼしながら口を開き笑い合う。
それから、この小さい蟠りが終わるかいなかというタイミングで後ろの方からドアが開く音とそれに少し遅れて、この部活でなくてはならない元気なトーンが聞こえてきた。
「失礼しま~す」
それはまさしく、今にも楽しくリズムを弾ませそうでニコッとした表情をした先輩であった。その反応を見るにやはり、俺達の読みは大当たりのようだった。
先輩は入ってきたらすぐに俺達の異変に気づくと眉を丸めながらこちらの様子を伺う。
「あれ…… どうしたの、なんか先生を慰めてるみたいだけど?」
「え、あ、あ……」
先輩の少し疑う素振りを見て、葛城さんはどうしようかと俺に手を後ろに置きパクパクと握ったり離したし俺に困っているサインを送る。
そのサインに俺は気付くと、先輩ヘ何気ない風を装い対応する。
「いやいや何でも……」
「み、宮崎~」
俺が誤魔化そうしたが、先生は涙を流した表情のまま先輩の方を見た。
どうやら先生には余計なお世話だったようだ。
でも、俺達が覗き見をしていたことがばれるのは少し困る。
「先生?」
「う、う~……」
「あ、あの、宮崎先輩……」
「実はですね……」
葛城さんは俺を渋々睨んでいたが、先輩ヘの罪悪感が後押しして、先輩ヘ本当の事を言わせた。
「先輩の事を心配で、教室ヘ覗きに行っちゃったんです俺達……」
述べた出来事に先輩は手でほぺった辺りを隠し、変な動きを動作をする。
やはり、不味かっただろうか。
これで先輩を恥ずかしめたか……
それとも西城さんとは進展などなかったのだろうか……
後者であれば、なんと慰めをしたら良いか。
「それで、先生に思わず興奮しちゃって報告しちゃったんだけど……先輩……そのごめんなさい……」
俺を尖りきった目で恨んでいた葛城さんたが、先輩の反応を見て謝った。
葛城さんは、後者の予想を思ってしまったのだろうか、深く頭を下げて今にも顔をクチャクチャにしそうにしていた。
葛城さんは自分が先輩を振り回し、恩を仇で返してしまったと嘆き、だだ傷つけしまったことを先輩に謝り続けた。
「ごめんなさい…… ごめんなさい……
先輩……」
「葛城さん」
最初はこの作戦というか無理やり調整で半分恫喝紛い葛城さんの言動に俺は呆れ処か怒りすら覚えたが、ひたすらする先輩ヘの呼びかけに葛城さんの先輩ヘの恩を返したいという強い気持ちを感じた。
何より今日俺を無理やり連れ出した葛城さんは臆病そうに心配していて、でも何故か楽しそうだった。とても先輩を貶めたり騙したりする顔はしていなかった……葛城さんの行動に悪意はない。ただ素直に先輩と向き合っただけだ。
そんな風に俺は葛城さんを思い、必死に謝る姿を見て先輩に葛城さんを許してもらうように言った。
「葛城さんを許してあげてください先輩
葛城さんはただ先輩の事を思って……でも、結果が失敗して先輩を傷つけてしまってその……」
「もういいよ茂明」
俺はなんとか葛城さんをフォローする言葉を言おうとしたが、先輩を傷つけた事実が大きく言葉が空回りしてしまった……
これで葛城さんは先輩に許される事はないのだろう。下手をすれば葛城さんは部活を退部するかもしれない。
「ち、違うよ二人共!」
必死に過ちをしてしまったと先輩に謝っていたが、顔を隠して先輩がうわずった声で手を前にバタバタとしながら俺達の謝罪を止めた。
俺と葛城さん「え?」
先輩ヘの謝罪の虫になっていた俺達は、ふと我に返って先輩の言葉に耳を傾ける。
「そ、その西城さんとはいい感じになったよ、まだ友達かどうかは分からないけど……」
怯えもあるが、これからを期待させる言葉を俺達に投げ微笑んで言葉を続けた。
「フフ、でもね、西城さんと話して楽しかったんだ、だから私ねもっと西城さんともっと仲良しなって友達になりたい!」
「先輩……」
「う、うう……」
強く決意をしたその言葉に俺達は、とても感銘を受けて自然と涙を流した。
「そ、そういう事だから……
は、話は後ね、さ、さあ、練習するよ~」
涙する俺達に戸惑いつつも、先輩は元気に溢れた姿に戻って俺達に練習しようと楽しそうに誘ってくれる。
「うう……ハイ」
「やりましょう!」
再びの嬉しさで先輩に感動する虫になって、泣き散らかす所だったが先輩の誘いで正気に戻る俺達。
「たく、宮崎てめえは!」
「はわ、あ~」
正気に戻ったのは俺達だけではないらしい。
上機嫌でその図星をつかれて恥ずかしそうにする先輩の両頬っぺに先生がグリグリと腕を押し当て、先輩の顔を萎れた向日葵みたいにさせた。
「にゃにぃしゅらゅうれしゅか~、ふぁああ(何するんですか~、はわわ)」
萎れた向日葵な顔のまま、先輩は言葉をしゃべりずらそうに先生に反応して嫌そうに視線を送る。
「くそ、先輩変な反応の仕方しやがってよ、たく…… もし、その西城とか言う奴がお前を傷つけてたらそいつだけ徹底的に成績下げるかもしれかなったゾ…… この~」
先生は萎れた向日葵を潰しながら、先生であるまじき発言をする。
「せ、先生、それはどうなんですか……」
「この中身腹黒教師ならあり得そうね」
「おいおい、腹黒て私がいつそんな素振りを見せたんだ、あん?」
権力で猛威を振るいそうになる先生に俺と葛城さんは、呆れ言葉をかけその言葉に先生はチンピラみたいなトーンで俺達を見る。
「今」(俺と葛城さん)
「あん?」
その練習も無しにハモリあった同じ感想を先生にぶつけると、先生は自分の組の一人が裏切ったくらいの威圧で俺たちを見てきた。
「いや、会ったときから直感的にそう思ったんだけど、ねえ茂明?」
「え、俺に振るんですか……」
葛城さんは答えなくても良いことを答え、それによって空いた傷を他人にも擦り付けようと俺に話題をふる。
「お前ら授業で覚えておけ……
それとこれからの練習でも……」
「ぐうう、ひあいお~(痛いよ)」
葛城さんの言葉が癇に障ったのか、先生は先輩の頬っぺたをグリグリとする力は強くなっていった。
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