第05話 先輩に優しいあの子と俺に優しくしてくれるあの子 -05 先輩の過去編3


「……うーん」


「うう……」


期末テストが終わり、学生の皆は浮かれまくりそこら辺の帰宅部のリア充たちは町をいつもよりド派手に出歩き、暇な人たちはゲームかアニメにでも好きなだけ明け暮れているだろう。


「ん……」


「はうう……」


しかし、我々、部活という青春をまっとうするものは違う。

運動部は夏の大会に向けて、自分達に最大の追い込みをかけたり、やる気のある文化部は文化祭に向け才能の闘志を燃やすか、コンクールに情熱を注いでいる事だろう。


「おいおい、まだまとまんねのか?」


「今考えてるんですよ先生!」


そして、私たちもまた文化祭に才能の闘志を燃やす者であり、この部活という青春を謳歌している。

それで今皆で、何の曲をやるのか決めているのである。生徒会室に行ってパフォーマンス時間に訪ねると45分ぐらいと言われ、3~5曲、メドレー形式にすれば8曲は行けると生徒会の人達にそういうアドバイスもされた。

で、その説明を聞いてから一向にセットリストがまとまらない。


聞いてすぐの頃


「メドレー形式か、それもええな~」


「私は一曲一曲丁寧にやりたいです!」


「そうだよね楓ちゃん、私もその方がいい」


「か、楓ちゃんが言うんやったら……」


「よし、じゃあ3~5曲でいいな」


最初は紺子先輩はメドレーに目移りはしていたが、私の意見にすんなりと賛成してくれて、メドレーではなく一曲通して3~5曲をするとてきぱき決まり、曲数はMAXの5曲とまで決定したのは良かった。


「やっぱりロックやで!あ、そうそうウチがこのために作ったオリジナルの曲もぜひ楓ちゃんに歌って欲しいんやけど……」


     紺子やりたい曲リスト


     メープルロック オリ

     

     ラブファントム

     ミエナイチカラ

     ギリギリチョップ

     ブローウィン

     タマシイレボリューション

     紅

     など……(B'zが多い)


「ブー、私はフォークソングしたいです」


    楓やりたい曲リスト


    なごり雪

    道化師のソネット

    秋桜

    長い夜

    季節の中で

    糸

    など……(千春とさだまさしが多い)

    

「えっとアニソンがいいです!」


     三笠やりたい曲リスト


    ライオン

    ゴッドノウズ

    空色デイズ

    創世のアクエリオン

    インボーグ

    zips

    など……(ロボット系の歌が多い)


「お、お前ら、騙りよりスギだしやりたいやつ多すぎだろ……」


凪先輩は私たち三人のリストを見て頭を抱えた顔をする。私もだが、二人とも大体30曲ぐらいは書いていて、それに少々マニアックな曲を書いていた事も不味かっただろうか……


「なんか、楓ちゃんのだけ日本語の曲多いな」


「うん? このデイジーて珍しくカタカナなのは誰の曲ですか?」


私のリストを凪先輩が確認している横からちらりと三笠先輩が私にもの珍しそうに訪ねて来る。


「えっとですね、これはさだまさしの曲で凄いいい曲なんですよ!」


本当にこの曲は大好きな曲だったので、凄くいい笑顔で私は三笠先輩にそう答えると、先輩は少し引きぎみで「そうなんだ……」と言う。


「そういや紺子先輩は、英語ばかり書いてあって目がおかしくなりそうですが……うん?」


私が不意に紺子先輩のリストを見て、目が英語でいっぱいになる中、裸足の女神と愛のバクダンと日本語が書いてあったのでその事を紺子先輩に聞いた。


「え?愛のバクダンはしゃないかもやけど、裸足の女神知らんの楓ちゃん……」


「はい」


「オーマイ、裸足の女神よ~やで聞いた事ない?」


「いいえ」


先輩は必死にその曲の事を私に話してきたが私は全く知らないので、気のない声で知らないと返答する。


「これ有名なはずなんやけどな……」


知らなかった私に本当に悔しそうにガッカリとする先輩。


「三笠は相変わらずロボットアニメ好きなんだな」


「へへ、小さい頃から大好きで……」


凪先輩がそう指摘すると、三笠先輩は照れた表情で少し笑う。


「あ、ビリーブの下にある砂の十字架てたかじんの歌ですよね」


「え?楓ちゃんこれ知ってるの?」


私が不意に気になった曲名を指摘すると、三笠先輩はとても驚いた表情をした。


「楓ちゃんド古い事は知ってるんやな」


それに続いて、紺子先輩は驚くより呆れた反応をする。


「おいおい、お前らそんなわちゃわちゃしてないでセットリストまとめるぞ~」


自分達の曲リストの話で賑わう中、凪先輩が上手にまとめて話を本題に戻し、現在に至る。


「先生、こんなに曲の案を出したはいいのですけど全く決まらないです~」


「おいおい、いくら多くても一人1曲はできんだぞ」


リストを出してからかれこれ約半時間、とりあえず紺子先輩が作ってくれた曲は一応入れようと1曲目にセットした以降、これ以上の進展がない。

皆が暑さと考えに伸びてしまう中、不意に訪れた先生に私は救援要請を出してすがり付いた。


「たくしゃねえ、どれどれ」


救援要請に仕方なく答えてくれると、先生は私たちの曲リストを目を通す。


「何これ……」


B'zだらけの曲名の紙とフォークソングだらけの曲名の紙とアニソンだらけの曲名の紙の3つを見て、先生はなんとも言えなくなって言葉をしばらく失った。


「とりあえず皆もっと絞ってはいたんですが、それで構成とかも考えたらどうすればいいのか分からなくなっちゃって……」


「そ、そうか……」


私のその言葉を聞いて安心したのか、先生は最後にため息をつく。


「んで、絞ったてどのくらい減らしたんだ」


「えっと私は7曲です」


「ウチは8曲や」


「私は6曲ぐらいです」


先生がそう質問をしてきたので私たちはその質問に答えて絞った曲のリストを出した。


      三笠やりたいリスト


      ライオン

      儚くも永久のカナシ

      創聖のアクエリオン

      COLORS

      DAYS

      砂の十字架

      スターチルドレン


      紺子やりたいリスト


      ウルトラソウル

      裸足の女神

      ブローウィン

      ギリギリチョップ

      衝動

      タマシイレボリューション

      グラマーズスカイ

      アヘッド


      楓やりたい曲


      デイジー

      君のために作った歌

      季節の中で

      まほろば

      道化師のソネット

      長い夜


先生が紙を見て終わると自分たちが一人一人の考えるセットリストを書いてみろと指示され、私たちはその指示に従う。


「なるほど!」


「いや~、皆に意見を合わせて統一しようとしてたからその発想はなかったよ」


私たちはそんな指示に納得し、また新たな紙に曲を書き出した。

「いやだから、こうやでこう!」


   紺子の考え


   1 メイプルロック

   2 タマシイレボリューション

   3 長い夜

   4 ウルトラソウル

   5 ライオン


「私はこうかな?」


   三笠の考え


   1 メイプルロック

   2 長い夜

   3 タマシイレボリューション

   4 儚くも永久のカナシ

   5 ライオン


「私こうだな」


   凪の考え


   1 メイプルロック

   2 長い夜

   3 タマシイレボリューション

   4 創聖のアクエリオン

   5 ウルトラソウル


「私はこうですね!」


   楓の考え


   1 メイプルロック

   2 砂の十字架

   3 グラマーズスカイ

   4 タマシイレボリューション

   5 デイジー


「よし、これでちょっとはまとまるんじゃないか!」


先生は出された紙を見ながら、自信満々に一件落着と言った表情を私たちにして後を委ねてきた。

委ねられて、私たちは一瞬戸惑ったもののとりあえず一番多く取り上げられた曲を書き出した。


     多かった曲


     長い夜

     タマシイレボリューション

     ライオン

     ウルトラソウル


「ちょうど、4曲だし全部選んだ人も違うな」


「そうやな、しかも以外と見た感じ文句ないわ」


「よし、お前らとりあえず今日は解散だ」


書き出された曲に、皆意義を唱える事のを見て先生は解散宣言をした。話は複雑化する事はなく、ちょっどはまったこの4曲に曲は決まり明日からは大変な練習になるだろう。

私はそんな事に大変差を感じるのと同時に先輩たちとたくさん時間を過ごせる事に気づくと明日からの練習も頑張ろうと思えるのであった。


「どうしたん楓ちゃん?」


解散した後の帰り道、いつも通り先輩たちと帰っていると、紺子先輩が私をニッコリとした顔で声をかけてきた。

私は何故か恥ずかしい気持ちになり、何かを隠したいようにそっと微笑んで誤魔化す。


「楓ちゃん何か嬉しそうです」


紺子先輩と同じ顔をして三笠先輩は嬉しそうに私にそう指摘してきた。


「そ、そうですか……」


そう指摘され私は誤魔化そうとしていたことに気付きかけそうになり、何故か声が上擦る。


「コラコラ、あんまり楓ちゃんをからかっちゃダメじゃないか」


二人が私をからってるのと勘違いしたのか、凪先輩はいつもの調子で二人に注意する。

二人はいつものように頭を掻きながら、深く反省してまた私たちは帰り道を歩き出した。


そして、しばらく何気なくその場に立ち止まり、黄昏夕日をバックに仲良さそうにする三人の先輩の後ろ姿を見て、私はとても心が暖まりとてもいい気持ちになった感じが体を駆け巡った。


「おい何してるだ?」


「楓ちゃん早くいきましょう」


「よしよし、明日からの練習は絶対にキツくなると思うからな、今日は凪の奢りで飯やで!飯!楓ちゃんも行くで~」


私が立ち止まると、それを一瞬で気付き気遣ってくれる凪先輩の声がした。それを心配するように、優しく催促する三笠先輩の声がした。最後に、私を励ます声、いつも私に意地悪だがとても私を慕ってくれる声、紺子先輩の半分本気な冗談を言う声がした。


「はい、行きます待ってください!」


その声のする方へ、私は今日一の笑顔をして駆け出す……



  

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