第05話 先輩に優しいあの子と俺に優しくしてくれるあの子 -04 先輩の過去編2


私が音楽同好会に入部を決めた日、先生がカメラを持って来た。

第二校舎旧で私と三笠先輩と凪先輩と紺子先輩と先生の4人で小さいが記念撮影会が行われ、私たちは教卓を除けて黒板の前に集まっていた。


「はい楓ちゃん! ピースやピース!」


一学期からしばらく立っていて、一年の始めての入部に対する仮入部期間のという規程に私は縛られなかったので、仮入部もせず部活に行って2日目で入部したことに狐女子な紺子先輩は嬉しいのか、体を寄せニンマリしながら私にピースを急かした。


「おいおい楓ちゃん嫌がってだろが……」


「そ、そうだよ紺子ちゃん!」


過剰に体を寄せる狐紺子先輩に二人は私から離れるよう促す。もちろん私は、そんな体を寄せてくる紺子先輩に嫌悪で鋭いまなざしを向けている。

昨日、一昨日、とこの部に来て三人と少し話なれ紺子先輩のスキンシップが余りにも以上だったのでやめるよう言ったのだが……


昨日一昨日の様子


「すりすり……」


休憩中、紺子先輩が凪先輩と三笠先輩に近くのコンビニでお菓子を買って来て欲しいと、私を口実にパシりに使い、二人のいない隙を見て私にいやらしい目をして近づいて来て激しい頬擦りをしてきた。


「すりすり……」


「ううん……」


その頬擦りは大体今で2分ぐらい続いている。

おまけにたまに少し髪を触ったり、角度を変えて抱きついて頭や背中など頬じゃない部分も頬を擦りつけてくる。


「さわさわ…… フフ」


「ひゃ!」

 

さらに角度が変わると触られる部分も変わりたまに脇を触られたりすると、甲高い声が出た。


「はうう…… や、めて、やめてださい!」


私はそんな乱れる行為をしてくる先輩に耐えきれず、我慢できずに抵抗の声で強く訴えた。


「ッキキ、そんなこと言う可愛い楓ちゃんは、ウチが妖怪になって食べたるで……」


抵抗した私に先輩は始めて会った時みたいに怖いトーンな声で不気味な笑いをして脅かし、しかも今回は、本格的にするためかどす黒く本当に狐の妖怪みたいな顔までしてきた。


「ひゃ、はわあああ!」


私は食べられないと分かっていても、先輩その顔はまさに妖怪そのものだし、あの死を覚悟した時の事が頭をよぎり恐怖に絶叫した。


その後、二人がしばらくする帰って来て私は無我夢中になって半泣きで三笠先輩に抱きつき、紺子狐先輩は凪先輩に拳骨を何発か喰らわされ先輩はその場にノックアウトした。


現在


先輩はそんな感じなので、やめろと言っても茶化されやめないだろうと思い、私は最大限出来ることだと思った鋭い眼差しを先輩に向けているのだ。


「こら、お前らちゃんと笑え」


ゴタゴタしている私たちを先生はまとめるため注意し、シャッタを押した。


「えっと20秒な」


「う、嘘、もう押すんですかまだ心の準備が……」


「おいおい、先生ちょっと待ってくれまだ私は紺子を……」


先生がシャッタのカウント数を言ったら、三笠先輩はおどおどとし、凪先輩は握った拳を空中で抑えてながらカメラの点滅音に焦っている。


「へへ、ウチと楓ちゃんはいつでもウェルカムやで~!」


「……」


紺子先輩は溌剌と笑顔を見せ、私に肩を乗せて後ろで手を繋ぎながらニッコリとし万全の準備をしている。

私は先輩のしてくることに疲れはててしまい、色々と諦めて苦笑いが今にも混じりそうな笑顔をした。


「ほらほら、楓ちゃんとウチらはこの一回が最後なんやからさもっと笑てや」


ニッコリと溌剌した笑顔を私に見せながら、先輩はいきなり重い事を言う。


「……はい!」

私はそんな言葉を言いながらもぶれない笑顔をしている先輩に悔しくも同情してまい、不覚にも私も今年最高、いや……


生まれてから最高で少しだけ虚しい笑顔をした。


この時、写っている私と紺子先輩は、最高に幸せそうな笑顔をしながら肩を組んでピースをしていた。

これを何も知らない人が見たら、絶対に物凄くもしくは、両思いではと言うくらい仲がいいのではと思われそうなぐらいだ。

実際の所、私たちは2学期が始まる頃にはたまに私が先輩のいたずらに乗り、じゃれ合うくらい仲良しになっていたが。


そんなこんなで、私が入部してから約2週間後


「フフ、楓ちゃんはやっぱ容量ええな~」


「そ、そんな事、ないです……」


私もなんとかコードも押さえれてとちょっとした指弾きもできるようになった。

指弾きは難しかしく始めから初心者は手を出さない人が多いと聞くが、私は多彩なメロディーを奏でられる事に憧れて積極的に練習した事もある。


「でもまだコードの押さえ方がぎこちないな、もっと指先で玄を押さえる事を心がけい? あ、それと制覇のコードの時は人差し指の立ててギターをぎゅって握る感じに押さえるとええで~」


それと以外に紺子先輩のアドバイスが的確で分かりやすく、先輩のアドバイスも上手くなる上での糧となっただろう。


「フフ」


「はい……」


しかし、先輩がニヤニヤとこちらに狐顔を向けてくるのはあまり慣れない。

練習していると、それがたまに気が散って仕方ない。


「コラ、お前もちゃんと自分の練習しろ」


「痛い痛い…… せ、先生ウチはちゃんと指導をやな!」


「ずっと張り付いてニヤニヤしてる指導者は指導者とは言わん」


「そ、そな……」



紺子先輩は何もせず、私ばかりニヤニヤと見つめていたので先生が耳を引っ張りながら先輩に自分の練習に戻るのように言った。

先生の表情と先輩への行動を見る限り、無理やりでも自分の練習に戻らせる気でいそうだ。でもその方が私としては助かるので、拍子抜けした声をしながら耳を引っ張られ連れられる先輩をニコニコと見て、これまでの仕返しにと満面の笑みをしながら手を振ってやった。


「あ~ ちょっとも、もうちょっとだけでええから楓ちゃんとおらして~」


「バイバイ、先輩……」


先生に連れられ先輩はドアの向こうに消えていく。ちなみに、旧音楽室には2つ部屋があり、楽器を置いてある倉庫と勉学に使われていた机や椅子が並ぶ教室がある。

倉庫の部屋とはその教室の前側の黒板近くのドア越しに繋がっている。それで私は楽器の倉庫で練習している。先輩たちは3人のバンド編成で教室の部屋で練習をしている。


「凪、また変にミスったゾ」


「ご、ごめん皆」


一応防音してあるのだろうが、経年劣化のせいか結構演奏する音や会話が聞こえ、よく凪先輩が先生に注意させ謝る様子が時たまに聞こえてくる。


「あ、あのもう1時間くらいしたので休憩取りませんか?」


「少し休ませてください先生……」


「そうやな、はよ楓ちゃんの進捗も確認したいし~」


「とういか桐山、お前はそれしか考えてないだろ」


「いややわ、先生ばれました?」


先輩はわざとらしく声を出して、舌を出す。


「ああ、最近のお前の演奏聞いてたらそんなすぐ分かるわ」


「え?そうですか?」


人を茶化すばかりで、あまり同様しない紺子先輩は先生に知ったような事を言われ顔に焦りを出す。


「うん、そうだよ紺子ちゃん、なんか最近の紺子ちゃんの音なんか身が入ってないて言うか上の空て感じだよ!」


「み、三笠ちゃ~ん……」


紺子先輩の焦る表情をつき、三笠先輩も先生と同じような事を口にしながら先生と共に紺子先輩をたっぷりと怒りつける。


「そうなんですよ二人とも、いつもいつも楓ちゃん楓ちゃん、て言ってるんですよ?

こいつ……」


凪先輩が最近の紺子先輩の話をしているのを聞き、私はチューニングをしながらため息をついて呆れ苦笑いをする。

私も一息入れようとしていると、先輩たちが入って来た。


「ヤッホー、楓ちゃん!」


「ごめんな、このアホ狐がうるさくて」


「グ、凪! アホ狐言うなや! アホ狐!」


先輩は自虐ネタをするのはあまり抵抗はないが、人にそれを言われるのは好ましくないらしいと思ったが……


「ウチは美しくて絶品で知的な狐やさいかい! 狐をバカにするんやない!」


どうやら、紺子先輩は自分の容姿に異常なプライドがあるようだ。


「フフ、楓ちゃん、紺子ちゃんと凪ちゃんは昔からあのケンカをしていんですよ~」


私は三笠先輩ノートによる解説で二人の記憶の歴史が私の中に今日も刻まれていくのだった。


そんな具合で会話の一悶着あった後、私は休憩しようと思ったが……


「ねえ?楓ちゃん何か弾けるやろちょっと弾いて見てや~」


先輩はグリム童話の小人の瞳をして、私に何かやって欲しいと星を飛ばしなから迫ってきた。


「楓ちゃん私も聞きたいです~」


ふわふわとした微笑みで私に迫る三笠先輩。


「お、おい皆…… で、でも私も聞きたいかなちょっと……」


疲れている私を思って皆を止めようとしたが、やはり私の弾き語りが気になっていた凪先輩。


「え? 凪ちゃん?」


「なしたの凪、なんか変なもんでも食べたんか?」


確かに、頑固だが凄く正しく人思いな凪先輩が私的な感情を見せるのは珍しい。


「だっだって、紺子が楓ちゃんは歌が本当に素敵すぎやで~て言うから……」


紺子狐先輩はともかく、二人が興味を沸いてくれていたし、珍しい凪先輩を見たので私は指弾きで全て弦を弾き、オッケーのサインを音で表した。


「あれ? いいんですか楓ちゃん?」


「さあさあ、楓ちゃんのワンマンショーの始まりやで~!」



「ヘヘ」


私はそんな紺子先輩の言葉に少しニッコリとなり、自然と微笑みが溢れる。

そして、私はそんな自然に溢れる微笑みのまま先輩たちに自分の歌を聞いてもらう事に喜びを感じながら、そっと優しく中島みゆきの糸と、最初に弾けるようになった村下孝蔵の初恋を歌った。


「お上手です楓ちゃん、パチパチ」


「す、すげえ、なんて優しい歌声なんだ……」


ニコニコと嬉しそうに私の歌を聞いて拍手する三笠先輩と私の歌にただ衝撃を受ける先輩に凪先輩であった。


「な?な?Superflyのヤツ歌ってや! 今日練習してたヤツ!」


熱く媚びてくる紺子先輩のリクエストに私は笑ってcメジャーコードで答えて、Superflyの愛を込めて花束を演奏した。演奏が終わると、また先輩たちは拍手をしながら称賛の声をくれる。

それが嬉しくなり今度は、村下孝蔵の陽だまりを歌い終わる。すると、紺子先輩が「この歌、めぞん一刻のやつやんけ!」と興奮し出し、そんな紺子先輩につられ先輩たちと私はめぞん一刻の話をした。

日々を重ねる事に私のアコギも上達していって、今度はアコギではなく先生からエレキギターを教わったり、三笠先輩からベースを弾かせてもらったり、凪先輩からドラムを叩かせてもらったりととりあえず入部して1か月はギターが上達し、色んな楽器をやって見たりしていた。


そんなこんなで先輩に色々と教わって、1学期の期末テストが終わり、私が音楽同好会に入部して1か月が経過した頃。


「す…… ハー……」


私は呼吸整えながら、自分のエレキギターを見る曲に使われるコードのフォームを手探りで確認する。


「楓ちゃん、ほな飛ばしていくで!」


呼吸を整えていると突然、太く力強い紺子先輩のギターの音が聞こえ私は構える。


「バカ、お前は走るなよ」


「凪に言ったんやないもん!」


「二人とも喧嘩しないでくださいよ~」


構えるといつもの先輩たちの会話が聞こえ、あまり好ましくない会話のはずなのだが妙な安心感が沸き、私の準備値はMAXとなり、ギターをアンプに繋いでカウントをとって、これからやる曲の少し愉快で軽快なイントロを私は勝手に弾き出した。


「楓ちゃんもうやるか……」


突然なスタートに皆は困惑するもなんとか合わせてくれて歌が始まった。


「恋に、揺れる、心、ひとつ、お前、だけを、追いかけいるよ……」


曲は松山千春の長い夜で、少しポップスロック調な私たちなアレンジでやっている。


「おいでここへ、僕の、そばに、燃える、 ような、口づけを、あげる」


紺子先輩のメロディーギターが入り、私は紺子先輩をちらりと見て微笑みながら嬉しそうにサビを歌った。


「長~い、夜を…… 飛び越えて、みたい」

(私)


「お前、だけ、に~」

(紺子先輩)


ちなみにこの微笑みは、パートチェンジするアイコンタクトでもある。そして、その微笑みに答えるように微笑んで訳もなく嬉しそうに息を合わせ最後を一緒に歌った。


「重ねた腕の、ぬくもりに戸惑う二人……」

(私と紺子先輩)


しかし、嬉しそうに私たちはしているが歌はサボらずしっかりと悲しそうめで抑えた歌伊い表現も忘れずしている。

歌も終わり、締めの伴奏も終わると、私たちは撮っていたスマホのカメラのボタンを止めて、皆で一息つける。

だいたいこの一息をつく時間では、撮った動画を見ながら紺子先輩が私に興奮しながら、かわいいかわいいと恥ずかしいぐらいうるさく、私は自分の歌の細かい所までチェックしたかったのに気が散って集中できなかった。


「ぐへへ、楓ちゃん……」


「はうう」


今にも飛びかかり私を犯しそうな先輩の目を見て、私は怯えた様子を見せる。


「うう……」


怯えたまま私は凪先輩と三笠先輩を交互におどおどと見て助けを求める。


「バカ」


「痛た!」


紺子先輩は凪先輩からの強烈な一撃を頭に食らって、紺子先輩は毎回のお約束通り痛い目を見るのだった。


「凪!ちょい手加減して~や!」


なんと今日は相当クリティカルヒットしたのだろうか、いつもの声の何倍ものうるささで叫んで紺子先輩は痛みを凪先輩に訴え、凪先輩にしつこく迫った。


「悪い、少し気合いが入り過ぎた」


「気合いて、ウチを殴んのに気合いなんか使うなって……て、痛い痛い」


その二人のやり取りを、私と三笠先輩は人形劇を見ているかのような気持ちで二人でニコニコとし適当な話をしながら二人のやり取りが終わるのを待つ。

そんなあやふやな、状態が続くとキリのいい所で先生がやって来て二人に渇を入れてくれる。


「お前らちゃんとやれよ」


「すいませんでした~」


「やれやれ、何で私まで……」


大きくこの教室に紺子先輩の謝罪の声が響くと部活の練習は再開され、皆は定位置につく。

私は真ん中、その隣に私を大好きそうにニヤニヤとする紺子先輩、その横にはおっとりしてマイペースだが楽器を持つと凄く真面目になるベースの三笠先輩、後ろにはクールで冷静いつも私たちをまとめようしてくれるドラムの凪先輩。


「よし、皆というか特に紺子、リズムキープだゾ何が何でもとういかミスるな」


「む、こ、これアレンジやアレンジ!」


「あの、とりあえず何でもいいからやりましょ、ねえ楓ちゃん?」


このような感じでいつも二人の争いを元にこの部活の歯車は回っている。


「はい、全くです……」 


私が呆れた声でそう言うと、すぐにまとまり私たちの練習は今日も長く続いた。

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