第05話 先輩に優しいあの子と俺に優しくしてくれるあの子-02
朝 7時30分
遅寝早起きはあまりよろくない……
俺はそんな気だる気持ちで自転車を漕ぎながら、上を向いて朝の光を仰ぎ、眠気と戦いながら学校へ登校している。
「あ、あ~……」
あまり眠気を抑える事が出来ず、あくびが出た。昨日は、飯を食べてすぐに先輩に負けてはいられないのと、散々俺をいじり倒してくれた葛城さんに一泡吹かせてやろうと、一生懸命指引きの練習をしていたので指が痛い。ギターはかき鳴らした事しかない訳ではなく多少は練習をしたことがあったので、覚える感覚は早かった。少し不恰好であるが、それなりにできた自信はある。
しかし、9時ぐらいに練習を止めて風呂に入ったた後、そのまま寝れば良かった。またゲームの誘惑に負けてしまい、そのまま深夜までギャルゲーの世界へ夜毎の夜間飛行じゃなく!また、青春と恋の勉強をしてしまた。
にしても、中々このメイン子だけクリアできない。普通こういうのは、メインの子が一番クリアしやすいはずなのだが、それがこのサクラダメモリアルの最大の特徴なのだろう。
今日寝たのは2時ぐらいだったか……
この日もクリア出来なかった、違うギャルゲーも買ってみようか。少し古いのでもいい。
そんなどうでも良いことを考えながら登校していると、一段美しく見える学年一の金髪美少女とすれ違った。おまけに散々俺をもやし呼ばわりしてきた4人組の女子と楽しそうに登校していた。その顔は昨日俺達に見せたような笑顔であった。
この場合、葛城さんだけなら昨日の余韻を心に止めながら、俺も穏やかな朝の挨拶をする所だが、その4人組もいるので自分はモブキャラだと言い聞かせて、素早く素通りしようと思ったしかし。
「あ、オーイ、もやしく~ん」
なんと一番やっかいで幼く可愛らしい声が、俺を呼び止めた。その声に危機感が刺激され、俺は少しばかり漕ぐスピードを早くした。
「あ、待ってえ~!」
「え!」
彼女達を追い越してわずかコンマ数秒後、すぐさまその幼い声は追って来て近づいてくる。
「ちょっと宮!」
その幼い声を後をボッイシュな声が追う。
なんだか、競馬のトップ争いをしている騎手になった気分で少し陸上部の大会を思い出した。
元陸部の足(下級で2軍だった)をなめるなよ。
「待て待て、もやしく~ん、あはは」
何故かその幼い声は楽しそうに笑い、俺を追い抜こうと俺の隣に並ぼうとしてくる。声は確かに舌足らずな感じで可愛いがそんな声が追ってくるので恐怖で極まりなかった。
「み、宮、何でこんなに早いんだよ」
そういえばボッイシュな声の子は結構体育がいい方であるが、今迫って来ている幼い声の子はクラスで一二を争うほどであった事を今思い出した。俺はさらに恐怖して、漕ぐスピードを最高までしようとした時。
「は~い、もやしくん!」
なんとこの子は隣に並んだ瞬間、荷物をくくる所を両手で掴んでスタンドを足で下ろして来た。
「ガー嘘だろ!」
俺は衝撃を防ぐため、とっさにブレーキを踏んだ。
踏むとスタンドが地面に擦れる音がしたものの、この子と自分の安全を考えゆっくり止またので大事に至らずすんだ。
「し、死ぬかと思った……」
「ちょっとやり過ぎたかな……へへ」
自分がやった惨状を見て苦い顔をしているのでこの好奇心の塊も反省してくれようだが、こんなの先生に学校に見つかれば即また反省文だ。
幸い、この学校に通う連中はバス通学が基本だし少し早めだったので周りは誰もおらず先生らしき影も生徒もいなく、そこは俺を落ち着かせてくれた。
「み、宮早いって」
「へへ」
誰もいないと言ったがすぐにつるんでいた葛城さんたちが駆けつけてきた。
「み、宮さん全く貴方は!」
「超人かよお前は」
「はあはあ、常識はずれにもほどがあるわよもう……」
ヤンキーとボッイシュとお嬢様は微汗程度な疲れ具合だったが、葛城さんは今にも倒れそうなぐらい息切れしていた。
「いやいやそれほどでも~、にゃはは」
「誉めてないよ、宮」
山下さんはニコニコしながら、何処かで見たボケと笑い方を咬まして俺と吉田さんと皆を呆れさせた。
「にしてもあんた、逃げなくてもいいでしょ……」
葛城さんは息切れしたまま、理不尽に自転車を止められた俺にそう問う。
「はは…… すいません」
「そんな事だからもやしでボッチなんだぞ」
ヤンキー女子の鷹森さんが腕を組みながら呆れも混じっている哀れみの言葉を俺に言った。こればかりはさすがに、もやしすぎる事を認めざるを得ず反省するしかなかった。
「殿方がなんと情けない事ですわ……」
汗を白いハンカチで拭きながらお嬢様の日高さんは、俺を目を細めながら見る。
「はあはあ、もやし殿方だ~ あ、ちょっと……」
「宮」
山下さんが愉快にくるくると回転しながら俺をバカにしてくるのを、吉田さんが首を掴んで難なく止てくれた。
もやしを認めざるを得ないと言ったが、さすがにもやし殿方は無性に腹が立った。
「宮ちゃんと謝りなさい」
「うう、ごめんなさい」
「いえ別に……」
首を捕まれて、すっかり反省する声色になる山下さんだったが、怒りの虫が体内にいたのだが疲れて許すも許さないもどちらの気持ちも分からなくなっていた。
「はは、とりあえず皆さんおはようございます」
俺は疲れをずっと堪えて苦笑い気味だが微笑んで5人挨拶をした。
「お、おはよう……」
「おはようございます……」
「おはようございますわ……」
「おはよ~う!」
「おはよう、茂明……」
そんな挨拶をすると、山下さん意外俺と一緒で疲れているのだろう苦笑いぎみ微笑みで挨拶を返した。
挨拶をした後、ギャルゲーの主人公の如くハーレム登校するはずもなく、また学校でと別
れを言って俺は1人自転車で学校に向った。
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