第05話 先輩に優しいあの子と俺に優しくしてくれるあの子- 01

さかのぼる事、昨日……


時間的に話すと夕方の夕日が登りかける少し前ぐらい。葛城さんがスキンシップが激しく少し天然が入り皆から愛されてそうな先輩に、普段の教室での様子を聞いた。


その結果、俺達の目の前にいる先輩全く違う事に驚愕し葛城さんが色々と追及し始めて、俺が養護したり先輩が自暴自棄になったりと大体15分ぐらいそんなやり取りをしていた。

そして、葛城さんが話に出てきた女の子と先輩に友達になるよう強引に切り出す。突拍子もなく先輩の友達を作る作戦の話題が展開され、葛城さんが半強制で俺と先輩を従え話が勝手に進められ歩きだした時の事。


「先輩その娘どんな人なんですか?」


葛城さんはやる気に満ちた表情で先輩に迫る。

俺も葛城さんのやることに一概に反対とも言えない強引ではあるがやろうとしていることは間違いではない。だが、先輩はあまり乗り気でもないし嫌がっていた。嫌がる先輩に葛城さんは下がる事なくそう迫り、止めようと思ったが傲慢でスクールカーストでは最上位辺りに来そうな彼女に俺ごときが何を言っても聞く耳を持たなかった。しかし、その方になる方が先輩としても良いことだし俺もそれになる事には喜ばしいので賛成だった。


「俺も気になりますね、ははあ」


なので、俺は仕方なく葛城さんに肩入れして手を貸す事にした。


「え、えっと……」


先輩は戸惑いつつも、何とか葛城さんの質問に答える。


「き、基本的静かで無口で…… ま、真面目で…… しっかりしてて……」


他人の事を話すのをあまり慣れていないのか、国語の聞き取りテストの箇条書きのように言葉を言い、ボソボソとなりながも俺達にその娘の事を話した。


「うう、なんか目付きがたまに鋭くて皆から何歩か距離を置かれちゃってる感じ……」


その娘の事を話すに連れて先輩の顔色があまり優れない様子になっていく。なんなく言うのなら、その子は一匹狼な優等生という感じだろうか。


「で、でもなんだかんだ私に気を使ってくれてる…… 隣の席なんだその娘…… 多分悪い娘じゃないよ……うん」


先輩は優れない様子のままそっと微笑む。どうやら先輩はその娘の事は嫌いではなさそうだ。隣の席で色々気を使ってくれているのだから俺が言うのは簡単に話しかければ普通に友達になりそうだが。


「先輩その娘の名前は何て言うですか?」


俺は何となく聞いていなくて重要で見落としていた事を聞いた。


「えっと西城博子さんだけど……」


「ふーん」


取り合いず、その名前を頭の隅に入れておく事にする。


「西城さんね!」


名前を聞いた途端、葛城さんはまたまたやる気に満ちた調子で先輩に話しかけ迫る。


「で、葛城さんプランはあるんですか?」


俺はこの作戦の肝である事を自信満々で何の動揺もしなさそうな彼女に聞く。


「当たり前よ!」


「例えば?」


先輩にやたらやる気を見せ迫る葛城さんに俺が具体的な事を聞くと葛城さんは戸惑う事なく胸を叩いて自信満々な笑顔になった。


「は、はうう……」


「……」


俺と先輩はあまり宜しくない予感を察し、疑心暗鬼な行動を取りつつ葛城さんの続きの言葉を待った。


「そう、まずは移動教室の時に一緒誘ってみる」


「うう……」


「昼ご飯を一緒に食べるうん、この二つこそ最高のプランよ!」


「はう、うう……」


そのプランを聞いた先輩は明るさまに嫌そうな顔をして耳を塞ぐ動作をする。

俺はその光景を見て察していたような事が起きた。それが出来ればこんな何年もボッチに苦労はしないんだよ!と俺の中の閻魔様が現れ心の中で叫びながらため息を付いた。

先輩はというと葛城さんの露骨でご都合すぎるプランに怯え、迫る葛城さんを前にちじこまりそうになる。


「葛城さん……」


「何よ?」


葛城さんは何も悪い気もない表情で、弱る先輩の前で俺の少し暗いトーンの声に気のない返事で答える。


「それが出来れば俺達はそんなに苦労しませんよ!」


手を貸すと決めたがここまで先輩の弱った姿を見られたら、感情に耐えきれず葛城さんに強く言葉をぶつけた。


「一体どういうつもりなんですか!」


「どういうつもりて先輩にただ教室の友達をつくっ」


「それにしてもいきなりですよそんな方法、もう少し段階を踏んで……」


「踏んでるじゃないの、これ以上細かい段階てある?」


感情任せに言葉を放っただけなので先輩への作戦の考えの持ち駒はからっきしだった。


「そ、そ、そこまでして……」


「?」


なので、俺は考えもないくせに情に任せた発言した。


「そこまでしてまで先輩に教室での友達作る必要あるんですか……」


不甲斐なくカッコ悪い言葉を言う俺に葛城さんは呆れた眼差しを向けて、葛城さんはちじこまる先輩を見ながらこう言った。


「私はね先輩ができると思ってそう言ったの」


「はうう……」


ちじこまって目を伏せていた先輩だったが葛城さんの声に耳を傾けると徐々に目線が葛城さんに向けられる。


「私が今日入ってこんなに先輩と仲良くなったのは何で、あんな楽しく明るく接してくれたからでしょ?」


葛城さんに焦点が合わさり、真剣な瞳でそう言われると先輩は指を噛みながら、自信がなさそうな声で話し返す。


「だからそれは先輩としてのい、威厳というかその……」


「じゃあ何でそれが私たちにはできて教室の周りの人たちには出来ないんですか」


適当な言い訳をして話を流そうとする先輩に葛城さんは容赦なく強くその言葉を叩きつけ、先輩に少し怒った顔をする。


「……」


「葛城さんちょっと今のは!」


「ちょっとあんたは黙ってなさい!」


「後輩くん……」


心配そうに先輩に見つめられ俺はまた感情に身を委せて、葛城さんに反発したが怒鳴り返され相手にされなかった。

もう一度食らいついてやろうかとも思ったが、俺に黙れと言って振り払った時、葛城さんは真剣で真っ直ぐな表情をしていたので俺はその顔を信じる事にし、食らいつきたい 気持ちをぐっと堪えた。


「先輩、私ですね嬉しかったです相談乗ってくれた時」


「え?」


「会ったばかりなのに私の事を考えてくれて、あんなに明るく優しくしてくれたじゃないですか!」


会ったばかりなのにあんなに自分の事を考えてくれた、そう葛城さんが言った瞬間俺は昨日の自分が勝手に重ねられ、なんだか少しほこりする気持ちになった。


「本当に私は先輩と部活になれて嬉しいですだから……」


葛城さんは少しずつ噛み締めるようにそう言って、先輩に穏やかな顔で素直な気持ちをぶつけようしている。

そんな葛城さんの言葉に先輩は少し照れて、弱々しくしている先輩の姿は徐々に消えていきそうになっていく。


「だから、自分に自信を持ってください」


「柚菜、ちゃん……」


照れた先輩はさらに暗い影が残る表情も明るくなっていき、葛城さんの先輩への励みの言葉に看過されて俺も先輩へ自信を持ってもらおうと葛城さんと同じように励ましを言った。


「そうです、そうですよ、先輩は俺にあんなに自分の歌を聞かせてくれたじゃないですか!」


「後輩くん!」


自分が俺たちへした事の凄さを先輩は実感して少しは自信が沸いたのか、俺の知っている明るい声色を先輩は取り戻して俺達2人にこの作戦を奮闘する事を誓った。


その後は葛城さんと商店街近くの横断歩道です葛城さんと別れて、俺は再び自信をなくしそうな先輩と適当な話をしながら共に家路を歩いて行った。


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