第04話 金髪少女の決意-05 END
「そ、その最初に言ってた筆箱を拾ってくれた女の子の事て本当なんですか?」
(は、はあ!?)
俺はボッチで繕わなければいけなかった先輩に対する葛城さんのそんな無神経な質問に再び怒りが溜まり出す。
しかし……
「え、えっとその」
俺が今にも怒りの言葉を吐き出しそうになると先輩は変えたような素振りで戸惑い、そのまま最初に話した女の子について話始めた。
「うん、一緒にご飯を食べたて言うのは嘘だけど拾ってくれた話は本当だよ」
俺はまた自分を繕い嘘をついていないか心配になったので改めてその事を聞き直した。
「本当なんですか先輩?」
「そ、そうだよ」
先輩はその事を答えた事にぎこちないのか声が小さかったが、嘘ではないと返事した声の感じで分かった。
先輩のその返事に嘘でない確信を得ると葛城さんは何か自信に溢れたようにニタッと笑ってまた話始める。
「やっぱりですか先輩」
「ええ?何なんの柚菜ちゃん……」
突然の自信について溢れた笑みを先輩は不気味に思ったのかソワソワとしてる。
女の子の話が本当であると見抜いた葛城さんは一体何を考えているのだろうか……
「先輩?」
「……」
葛城さんは先輩の肩を腕で叩いて真剣な眼差しでじっと先輩を見る。
「まずはその娘と友達になりましょうよ!」
真剣な眼差しからキラキラとした笑顔に変わったと思えば、葛城さんはとんでもない事を言い出した。
「え、え!」
ハードルの高い課題を押し付けらそうな先輩は今度は嫌そうな目をしながら今にも逃げそうな勢いでソワソワとする。
「それは無茶苦茶ですよ葛城さん!」
「はわわ、後輩くん」
「あんたは黙ってなさい、先輩はただでさえボッチなのにもっとボッチになるでしょうが」
俺は葛城さんに頑張って対抗しようと思ったものの、先輩の期待空しく散る所か、その塵を日本刀で一刀両断するように俺と先輩に容赦ない事を言ってきた。
「ただでさえボッチ……」
「……」
その言葉は自分で発するのであれば全く凶器にならないのだが面と向かって言われると、そしてその言葉は何よりも最悪な凶器に変わるのである。
「あ、ごめんごめん二人とも」
「ひどいです葛城さん!」
「ただでさえボッチ、ただでさえボッチ……」
葛城さん素早く謝ったが、先輩はすでに壊れってしまっていた。
「せ、先輩、先輩!」
俺はずっと同じ言葉を暗いトーンで連呼する先輩を必死にその行為を呼め止めてやめさせようとする。
「葛城さんもなんとかしてください!」
「だ、大丈夫だよ後輩くん……」
俺が葛城さんに助けを求めよとすると先輩は暗いトーンのまま平気だと言葉を並べて、ま「たただでさえボッチ」と連呼し始める。
「もう!葛城さんこれどっ」
「だからちょっとあんたは黙ってなさい」
葛城さんは先輩をこんな風にした張本人のクセに悲しむことも焦ることせずにただ落ち着いてさっきから何も変わらない態度で俺に引っ込むように言う。仕方ないので、俺は大人しく黙った。
「先輩」
「柚菜ちゃん」
暗い表情をする先輩の前にニッコリとしながら立つ。
「ごめんなさい、先輩でもとりあえず落ち着いてください」
葛城さんはじっと優しい瞳をしながら宥めて先輩を落ち着かせようとする。
「だだでさえ、っはう……」
「ダメですよ自分を卑下しちゃ」
また、同じ言葉を連呼する先輩に葛城さんはそっと口を塞いで無理やり止めさせてしばらくそのままにする。
「先輩、言い過ぎたのはごめんなさい、でもそんな風に自分を卑下しても仕方ないじゃないですか」
「う、うん……」
葛城さんは先輩の耳に口近づけ、少し近い距離でささやくようにそう言う。
「私はただ先輩の後輩として先輩を助けたいと思ったから、その子と仲良くなろうて」
「わ、分かったから!」
葛城さんが話していくうちに悲しそうになり声が小さくなっていくのを見かねた先輩は突然大きな声を出して苦し紛れにこう言い放った。
「わ、分かったからもう変にいじけないし、弱音も吐かないから~ そ、その……」
先輩は何故か分からないが顔を赤くしながら少しふてくされさげに何か言おうとする。
「フフ、で、そのなんですか?」
葛城さんはさっきまで悲しそうな顔だったのに、カメレオンのこどく顔色が変わり、先輩への答えを迫ろうとする。
答えを迫られた先輩は少し笑いながら諦めげに……
「分かったから何でも聞いてよ、柚菜先生……」
「うん宜しい宜しい、素直が一番ですよ先輩!」
「は、はう……」
その後、俺達はやっと家路に向かい歩き出た。しかし、帰るまでその話で持ちきりとなり先輩の第一号の同年代の友達を作る作戦を葛城さんの半強制により俺と先輩はそんな作戦に振り回させられる事となったのだった。
「じゃあ明日からがんばれ先輩!」
「う、うん」
「あ、私こっちだから!」
「あ、そうですか……」
別れる場所となった商店街近くの横断歩道をとてもいい仕事をしたと顔に書いてあるような表情で渡る葛城さん。横断歩道を渡りきり俺達に振り替えると後ろに小さく結んである金髪のセミロングの髪が夕日に照らされその表情のまま大きく手を俺達に手を振る。
俺と先輩はものすごい困って疲れたで葛城さんに手を振り返し、俺達もまた帰路を歩く。
「はあ……」
「先輩大丈夫ですか?」
葛城さんと別れて数分もしない内に先輩はため息をついたよほど疲れたのだろう。俺も全く同じ気持ちである。
「はうう……」
「先輩?」
俺が心配の声を投げかけると先輩は、冬眠前の小熊みたく弱ったつぶらな瞳をする。
「明日大丈夫かな」
先輩はそんな瞳で俺を見て、ぐっと自分の両手を口元で握りしめながらそう言う。
そんな先輩を見つめ、俺は少し呼吸を整え優しい笑顔を作って先輩を心配させないようにこう言った。
「大丈夫ですよ、先輩なら誰とでも仲良くできますよ!」
「後輩くん……」
そう言うと先輩は、笑顔を取り戻して笑い合って話を弾ませた。俺達はボッチ談義や部活や音楽の話をしながら、自分たちの家の方へ帰えた。
さて、葛城さんが過去の傷と向き合いながも俺達の部へ入ることを決意してくれて俺達はいきなり新たな仲間を作ることができた。
それに強引さや無理やりさはあったが葛城さんが先輩の同年代の友達を作る手伝いまでしてくれた。これから我が音楽同好会はどうなっていくのか、それと先輩は無事に教室での友達を作ることができるのだろうか……
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