第03話 金髪少女の相談者-06

「お、お姉ちゃん……」


もうろうとする意識の中で、ふと聞き覚えのある声が聞こえ私は少しずつ目を開ける。


「お、起きて、起きて……」


その声はおどおどとして、家の中では滅多に聞かない声だ。


「うう……、心愛……」


目を開けると、普段は部屋から出ずに引きこもっている2歳下の妹の心愛が私の体をぎこちなく揺らして私を起こそうとしていた。


「も、もう朝だよ、ち、遅刻しちゃうよ!」

                   

普段は会話しない妹が心だが、心配なのか必死に私を急かしてくるので、私はスマホの画面を見て時刻を確認した。


「え?ヤバい……」


時刻は8時30分ともう学校が始まっている時間だった。私は大急ぎで制服に着替えて、部屋に買っておいたおやつ用のジャムパンを口に加えながら走って学校へ向かった。


「ヤバいヤバい、行ってきます!」


「い、いってらっしゃい!お、お姉ちゃん……」


私は人間不信感65%の妹の人慣れしていない出迎えを受けて、姉としての複雑な気持ちである。そんな気持ちを胸に留めつつ、それを押しきるように難なくいつもと変わらない姉を妹に見せて、私は学校に向かった。


        学校到着


「はあはあ……し、しんどい」


全力疾走は体育の持久走以来で体が全くついてず、数分もしない内に息を切らして校門につく頃は過呼吸寸前であった。


「珍しいね、柚菜っち遅刻なんて」


「本当だよ柚菜一体どうしたのさ?」


「もう本当、まいちんぐよ全く!」


昼休みに入って、私が遅刻をしたことを心配そうに宮と千代がそう話題を振ってきたので軽い昭和アニメのギャクで二人に返答する。


「はあはあ、その調査なら大丈夫だね柚菜!」


「千代、ツボ浅すぎ……」


つまらない私のギャグに大笑いした千代ちゃんに目を細めてドン引きする宮に、私は思わずクスと笑い笑みを溢す。


「やれやれ、遅刻で全力疾走して腰が抜けるとはな……」


そう話していると、七瀬が購買から帰って来て私の事を呆れた表情で話してきた。


「はあはあ、そうだよ柚菜いくらなんでも腰が抜けるとは思わなかったよ、はあはあ」


その事を思い出して千代ちゃんの笑いは勢いを増す。

 

「はあはあ千代、ダ、ダメだよそんな笑ったら、はあはあ」


その勢いにつられて宮も勢いのいい笑い方をする。


「もう、しかたないじゃないの……」


私は二人に笑われて恥ずかしくなり、顔を反らして少し怒りぎみに二人に言う。

しかし、二人はツボに入ったのかなかなか笑うのを止めない。


「ほら柚菜、戦利品だぞ~」


ぷんぷんとしている私を七瀬は動けない私の代わりに買ってきてくれた焼きそばパンを怒った子供慰めるかのよう空腹の私の目の前で嬉しそうに揺らしてきた。


「ありがとう……」


空腹に負けて呆気なく、怒りも収まり腹の虫を納めるため渡された焼きそばパンにおもいっきりがっつく。


「はむはむ…… 久しぶりに焼きそば食べるけど行けるわねこれ」


私はだいたい購買で買う時は大好きなカレーパンを買うのだが、焼きそばパンも侮れない。


「それはそれは、良かったですねお嬢様……」


七瀬はなぜか、執事口調になり少し楽しそうに私の口についているソースをハンカチで拭く。


「でも、学年一のマドンナが焼きそばパンにがっつく大喰らいの醜態をここにいる以外の他の生徒が見たらどう思うでしょうお嬢様……」


「ブー」


唐突な執事口調からのそのまま皮肉吐きという見事な好プレーをやられて、思わず焼きそばを少し吐き出してしまった。


「よ、余計なお世話よ!」


私は再び怒りが沸いて来て、またぷんぷんと怒鳴った。しかし、七瀬は私のその表情を見て気楽そうに笑う。


「悪い悪い、ちょっとからかっただけだそんなに怒るなよ」


「もう……」


私はそんな七瀬に呆れた顔をしてやって、顔は少しぷっくらとしたが一応七瀬を許すことにした。


「あ、そういや七瀬さん佳也子ちゃんはどこに行ったの?」


「ああ、あいつかあいつはな……」


私の怒りが収まり収集がつくと、千代ちゃんは唐突に七瀬に今までで一番気になった事を聞く。


「いやなんかな、柚菜のためとか言って購買で大物を狙いに行ってるよ」


「え!?」


その事を聞くと私は目が自然と少し大きくなったような気がした。他の二人も同じくような顔をしている。


「お、大物てまさか……」


千代ちゃんがヤクザ映画のリアルなタッチの絵のような驚愕の反応する。


「そうさ、日替わり限定15食のくそ旨いパンだ……」


その反応に便乗するように七瀬もヤクザ映画のリアル絵みたいに威圧感のあるボスぽい顔をする。現役ヤンキーがやると、本当にそっち系の人みたいだ。


「佳也っち度胸あるな、あんなの服の安売りのバーゲンセールのおばちゃん達の戦いより過酷だよ」


宮の言う通り毎日の見る大勢の男子生徒達の大群に飛び込んでいくのは、相当な覚悟でないと出来ないだろ。


「佳也子、大丈夫かな……」


「心配ないだろう、あいつ結構運動神経いいから」


心配そうにする私に七瀬は平気そうににこにこと笑う。


「そ、そうかな……」


確かに体育で七瀬と並んで佳也子は女子の中でもトップクラスの運動神経を誇るが、やはり男子の大群の中一人の女子がいくのは、勇気ある雀が烏の大群に突っ込んでいくような物だと思い、私はアワアワと心配する。


「ただいま、皆さん……」


「佳也子!」


「言ったろ大丈夫だって」


そんな心配していいると佳也子は帰ってきた。佳也子は凄く疲れた表情でボロボロなりにパンが入っている袋を握りしめていた。


「大丈夫?」


「な、なんて事ありませんわ……」


心配して佳也子に駆け寄ると、片目をつぶりながら凄く汗をかいていたので持っていたタオルで私は汗を拭いた。


「は……」


「?」


汗を拭いていると、佳也子は何故か静止して私の顔を何か秘密にしていることがあるような表情で見てきた。


「え、どうしたの佳也子?」


「な、な、何でもありせんわ、そ、それよりもパンですわパンです」


また心配そうに私が聞くと誤魔化して、パンの袋の中を開けて私たちに中身を見せてきた。


「じゃん!今日はスペシャルイチゴクリームドックでしわ!」


佳也子は自信満々の表情で見せ袋の中の物を手に取って私たちに見せる。

手に取った物は、白いコッペパンの切り込みの間に白いクリームととても高価そうで赤みを浴びた苺が乗っていてさらにカラーチョコがパラパラとおしゃれに盛り付けられたデザート風な4個ホットドックであった。


「おいしいそう!」


「都会のお店に売ってるやつみたい……」


二人はそんなちゃれおつなホットドックに目が離せないようだ。


「ま、まあ、悪くないんじゃあないか……うん」


七瀬はヤンキーの威厳を保ちたいのか、顔をひきつられせて絶対に興味などあってたまるかと言わんばかりに必死に女の子の心を押さえている。


「さ、披露はもういいでしょう皆さん召し上がって下さい!」


「あ、あの……」


佳也子は笑顔で私たちに食べるように急かしてくるが、私は凄く重大な疑問を思ったので佳也子に言う事にした。


「どうしましたの?」


「いや、あの佳也子の分……」


私、宮、千代、七瀬、佳也子、全員で5人、しかしパンの個数は4つである。これは重大な事だと私は思った。


「え……い、いいですよ柚菜さんこれはそのゆ、皆さんのために取ったんですよ」


「でも、佳也子の昼ご飯が……」


「大丈夫です、1食ぐらい抜いたって、平気……」


(グー)


佳也子は平気そうな態度取るとそれとは裏腹に体は正直な反応をした。


「もう仕方ないな……」


そうな矛盾だらけの佳也子を見かねた宮は手に取ったパンを半分に千切りだした。


「はい、佳也っちこれ食べなよ!」


「え?」


「だってこれじゃ佳也っち悪いし授業中体力持たないでしょ、あ、私は昼ご飯はいつも一杯食べてるから大丈夫だよ!」


そう言って元気一杯で何も問題ないよう顔で宮は佳也子に苺ホットドックを渡した。


「……」


「じゃあ佳也子ちゃん、私のもあげるよ」


「ち、私も、こ、こんな可愛らしい物な、私の心が許さねえから半分やるよ!」


宮に続いて、千代、七瀬も半分にパンを千切りだす。


「じゃあ私のもあげるね七瀬……」


私も七瀬の焼きそばパンでお腹が一杯だし、七瀬が皆のためにここまで頑張って、男子の大群に勝ち抜いて4つも手に入れたのに、頑張った人が報われないのは私の意に反すると思ったので、私もみんなに便乗してパンを千切り七瀬に渡した。


「み、皆さん……」


皆の優しさにより、佳也子は苺ホットドック半分4個合わせて苺ホットドッグ2個を貰いキラキラとした顔で皆に礼を行って、私たちはデザートタイムを終わらせ、佳也子は昼食を終わらせた。

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