第03話 金髪少女の相談者-05

夢 真実を見た時


「せ、聖也……」


「幸……」


私は見てしまった……

私は成績があまり良くないので中学の鬼教育教師から長い補修を受けていて、ここ最近はバンド活動へ行く時間が遅くなっていた。

そんな補修も今日で終わり、ルンルンな気分で小屋(練習場所)に来たのだが。入ろうとしたら、変な声がし、私は傷んでできた入り口にある小さな隙間の穴から中の様子をこっそりと見てしまった。


「う……」


「……」


聖也は幸に熱い抱擁でキスをして、幸は聖也にさせるがままにさせる。


「うう、ああぁ……」


聖也は幸の胸を揉んだり、お尻を触ったり、二人はエッチ手前な行為に及んでいた。

私はその光景に理解が追いつかず、絶句して苦しむ瞳にそれをただ焼きつける事しかできない。


「……うそでしょう」


聖也は私と付き合ってて、幸も応援してくれているはずなのに、その光景を焼きつけるようとする瞳は悲しみでぼやついていく。私はそんな二人を見て臆病になり、中に入る事が出来ないず、その場に崩れ落ちそうになる。

二人のエッチ直前の行為は、しばらく続く……


「あぁダ、ダメ……」


「幸、幸、幸……」


幸は制服のボタンを外されて、自分の胸を聖也に無茶苦茶にさせ、聖也は何度も幸の名前を呼んでキスをする。


「うう……」


「う、うん」


あの二人のキスの表情と溶け合うように喘ぐ声は舌も入れているのだろうか。私には、手もあまり繋いでくれないのに……

時間が立つにつれて、行為は勢いを増していき二人に対する悲しみが小雪から吹雪に変わり、私の心の奥深くまで降り積もり、凍えるような傷心が私を襲う。


「……はあ、アイツがいないといいな」


聖也が少し卑屈そうに笑い、そんな言葉を垂れる。


「うん、そんなそうね聖也」


幸は甘くとろけた表情で聖夜を見つめている。


「へへ、アイツなんて使えない、リズムも走りぎみで結構荒い音だし……」


「もう、いっそのこと違う人入れようよ♪」


二人は私を邪魔者だと言う話題をイチャイチャしながら楽しそうに話す。


「え……」


私は思わず小さいが声を漏らした。今までの私との関係は一体なんだったのだ。

仲良く遊んだあの日々は、楽しく練習した日々は、いつも微笑ましく優しい幸は、私の愛を受け入れて恋人になってくれた聖夜は、それは全部偽りだったのか……

その光景を受け止め切れず、深く降り積った悲しみと衝撃な激白の言葉に嗚咽しそうになりすぐにその場から走り去った。


「はあはあ……」


私は悲しみながら、嗚咽しながら、思い切り走った。帰宅もせず、受け止め切れない現実から逃げるように。この時はどこまでも走り去ってしまい、そう思った。何もない暗闇の中を手探りで、理由も目的もなく私は走る。

走る暗闇の中に、何処にも希望の光などないと知りつつも……


「はあはあ……」


表情と体がボロボロになり、自分の頭もどうしていいか分からなかったが私の行き着く先は自分の家しかなかった。


「おかえりなさい、柚菜」


私の今日の出来事など知らず、母はいつもの声色で私の帰りを迎える。


「あんた、今日どうしたの、いつもよりすごい帰ってくるの遅いわよ?」


「あ、うん…… 久しぶりの練習だからみんな張り切っちゃってて」


「そうなの、フフ」


「そうそう、今日なんてさ……」


適当な作り話をして、母がご機嫌を取りながら私に不信感を抱かないようにして私は自分の部屋に戻る。


「幸……、聖也……」


部屋に戻ると私は聖也と幸がイチャイチャしていた光景を思い出して、枕を思い切り抱きしめた。


「う、嘘だよね、そんなの……」


幻聴(アイツがいないといいな、もういっそのこと違う人入れようよ!)


「うう……」


私はまた嗚咽し、家族にばれる事を恐れてとっさに口を押さえた。


(嘘だよ、嘘だよね、こんなの……)


いつもの優しい幸と頼りないが自分の決めた事に真っ直ぐな逞しい聖也の姿を浮かべ、二人との楽しかった思い出を思い出してさらに私は悲しくなる。


「うう……うう」(こんなの夢だよ、夢なら覚めて……)


あの楽しかった思い出を嘘にしたくない私は現実を否定した。あの見たことが真実だったとしても私は否定した。でも、再び二人の幻聴が聞こえて私はそれを受け止めざるを得なくなった……

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