第03話 金髪少女の相談者-04


夢 何気ない寄り道デート


「……」


「おい、柚菜?」


「え?なに?」


「お前どうしたんだよ?」


私は今、彼氏である聖也と中学の制服のままカフェに来て一緒にデートをしている。

のだが……


「な、なによ」


「いや、なんかお前……そのちょっと雰囲気悪くないか?さっきから?」


「は、何いってんの?」


私を不審に思って質問する聖也を私は全く同様せずいつもの強気な態度で押しきる。


「そ、そうだよな、はは」


私がいつものような受け答えをしたおかげか聖也は少し苦笑いながらも私の不審さを促した。


「私はいつも通りよ!」


私は腕を組んで勢いよく鼻息を吐いて威張る。しかし、心の中ではというと何故だが分からないが変な苦しさと違和感がこの店にくる何分も前から胸の中にある。しかも、それは聖也を見るとさらにその胸の中にあるものが次第に苦しさをましていく。この苦しさは私の愛している聖也に抱いてはいけないような感情を植え付けさせるような気がする。


「アイスコーヒーとアメリカンコーヒー、お持ちしました」


「あ、どうも」


聖也が定員から飲み物を受け取り、私にアメリカンコーヒーを渡す。


「ありがとう……」


「あ、あ……」


そんな苦しみを耐え礼を言って、不機嫌さを誤魔化せないままコーヒーにミルクを少し入れる。


「いや、作詞作曲て難しくてさ奥が深くて」


「そうなんだ、でも私嫌いじゃないよあんたの作った曲」


聖也は一年前からちょくちょくオリジナル曲を何個か作り、バンドでも演奏をしている。


「そうそう、今さ……」


「う、うん……」


大体だが、聖也と恋人同士でいても音楽の事について相談をされる。私はその事について適当に自分の見解を言って閃くきっかけ的な何かを聖也から求めらる。


「やっぱりこの部分、音少なくした方がいいと思う」


「そうかそうか、うんうん」


今はヘッドフォンでデモの音を聞きながら楽譜を見てチェックをしている。


「あ、後ここね、ここは後もうちょっと音合っていいと思うな……」(あれ、な、なんかし、視界が……) 


私は楽譜を見ていると音符の部分だけが上下に怪しく光ながら揺れて次第に周りの背景もネガ色になっていく。


「……」(あれ?おかしい音が……)


背景がどんどんネガ色に侵食されていくと、音も壊れてゲームのバグ音のようにぐにゃぐにゃとなっていく。


「う……」


「おい、柚菜」


私はその視界と聴覚の気持ち悪さに酔い、顔を両手で蓋すして机に肘をつく。


「あ……」


「柚菜、おいしっかりしろ」


机に崩れ落ちる私の体を揺さぶってくる聖也。私は息をあらげながらその苦しさに抗うも、聖也が心配してくれる度に症状がどんどん悪くなっていく。


「は……」


「おい、柚菜!」


苦しさと症状に負けて、必死に呼びかける聖也に一言も言えないまま、私の意識はどんどんと暗闇の中へ沈んでいく……


夢 小学校のキャンプにて


「……は」


「おいおい、なにしてんだよ!柚菜!」


「柚菜ちゃんもカレー作るの手伝って!」


今日は小学校の夏の校外学習で大きな森の中にキャンプに来ている。

しかし、さっき一瞬変な感じがした。何て言うか、自分の存在が何者か分からなくなるようでこの世界から疎外されて暗闇の底にいるような感じが……


「い、今やる!」


でも、そんなの事はすぐに気になくって私は笑顔で元気に微笑み返す、なんせ今日は待ちに待っているキャンプの真っ最中なのだから。


「じゃあ、柚菜ちゃんジャガイモとニンジン洗ったから皮剥いといて」


「うん、分かった!」


私は楽しくて堪らなく幼稚園児の感じが抜けないまま勢いよく返事をする。


「ひひ、ふふーん♪」


「なんだよ、お前さっきから嬉しそうだな」


私はニコニコしながらも野菜の皮を向きながら、適当な鼻歌を歌って上機嫌そうにする。


「てか、それ安全地帯のオレンジじゃねか新曲の」


「へへ、よく分かったね」


最近は父と母の影響のせいか、安全地帯を聞いている。なんか、久しぶりに活動が再開され新曲も出て、色々アルバムも出るとも噂されている。


「え、何それ?」


幸ちゃんは安全地帯など興味はないようだ、幸ちゃんはどちらかと言うとミーハーでそして男よりも女の歌の方が好きである。


「へへ、今度家族で安全地帯のライブ行くかも!」


「たく、お前いくつだっての」


「聖也もだよ~」


聖也に毎回のように笑って突っ込み返す。

しかし、聖也も安全地帯を知っているとは……


「コラコラ、口より手を動かす手を!」


「お、悪い悪い……」


「ヒー、ごめんさい幸ちゃん!」


幸ちゃんがおかさんみたいに私たち注意をし、カレー作りはこくこく進んでいく。


「カレ~カレ~♪」


「フフ、柚菜ちゃん、本当に上機嫌ね」


カレーを鼻歌混じりにかき混ぜていると、嬉しそうに幸ちゃんは私を見て言う。


「えへへ、私もよく分からないけどなんかね今すごく心が踊ってるんだ!」


「は?」


聖也はいつものように人を腹立たせるような顔をする。しかし、今日の私は上機嫌なのでそんな事は気にしない。


「なんかね、こんな時間がずっとずっと続けばいいな、えへへ、そうやって三人で笑っている時間が」


私は二人に心の底からおもいっきりの笑顔になりながら、そう言い……


「へへ……あれ?」


さっきから上機嫌で最高にいい気持ちで幸せな時間を過ごしているのに、そんな事を言って笑っていたのに……


「え、何で……」


私は何故だがまぶたから涙が自然にポロリと零れた。


「お、おい、柚菜お前」


「柚菜ちゃん、どうしたの?」


「……わ、分かんない、うう」


カレーの玉ねぎ湯気にやられたのか、目に他のグループの炭でも入ったのか、ただ幸せすぎたのだろうか。それも違うような気がした、この涙は今の私思っていることではないからだ。この涙はなんて言うのだろう。ほたらかしにしていたおもちゃをぎゅっと抱き締めたような、取り返しのつかない事をしても人が許してくれたようなそんな狭間の涙であった今流している涙は……


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