第03話 金髪少女の相談者-03

「それじゃね、みんな!」


「また学校でな」


「じゃね、柚菜」


「では柚菜さん、また学校で」


ウキウキで遊園地帰りの子供みたいに別れを言う宮、クールに危なそうな路地に消えていく七瀬、満面の笑みで別れを言う千代ちゃん、お嬢様らしくお辞儀をして優雅に自分の家にかけて行く佳也子。


「うん、また……」


そんな皆に一人ずつ別れを言い、私は一人で家路を行く。


「……」


一人で家路を少し希望をくれるような歌を聞きながらのうのうと歩き、私は毎回のようにバンドの事、メンバーである親友の聖也と幸の事が頭を過る。


「抱きあうたびに、欲張りになっていく……」


これはCHAGE&ASKAのラブソングという曲、

ストレートな愛を柔らかく優しく歌ったラブバラードである。

私はそんな愛溢れる曲の温かさに今は変に憂鬱感を感じる。この歌は私の大好きな歌なはずなのに…… 少し嫌いになりそうだ。

希望をあたえてくれそうな曲なのに、君へのラブソングなのに…… 君への、私への……

こんなにこの歌が嫌になり始めたのはいつからだろう。 


「ただいま……」


私はそんな気分のまま、親に暗く帰ってきた事を知らせ、自分の部屋に行ってベッドへ寝転んだ。 


「はあ……」


珍しく疲れていたのか、スマホでアニメを見たり、自分の担当楽器であるドラムを叩く事もなく、そのままベッドでうとうとした睡魔に襲われる。


「……ぐ」


そのまま、鼾をかきかけて瞼をゆっくりと閉じ、私は深い眠りの底に落ちて行き、しばらくして目を開ける。


「……あれ」


目を開け、私の手を見るととても感触が柔らかく小さかった。ついでに、私の驚いた声もいつもより少し高いような気がした。


「なにここ一体……」


色々驚きつつ、周囲を見渡すとなにやら古くくさい小屋の前であった。

その小屋は多分、私たちがバンドで使っている小屋だった。しかし、いつも見ている小屋とは全然違う。2年前に来た台風で半壊したはずの傷後もないし、聖也がどでかくスプレーで書いた適当な英語の落書きもない。何より、いつもより綺麗な感じが、なぜだが分からないがその小屋が大きく感じる。


「え、どういうこと?」


私はいつもより高めの地声で、首をかしげ小さく柔らかい手で腕組みをした。


「うん!?」


私は腕組みをした瞬間、自分の胸に手があっていつもより小さい感じに気がつき慌てて自分の胸元を見る。


「ちっちゃい胸も足も……」


私は驚きを隠せない様子で、近くの田んぼに自分を反射させて映った自分の姿を見る。

その姿はだいたい小学生ぐらいだろうか……

自分の頭の理解が追いつかず、ただ私は目を大きくして映った姿に慌てふためくばかりであった。


「な、何がどうなんてのよ……もう」


「おいおい、いつの間にそんな所にワープしたんだよ柚菜」


私が頭を抱えて慌てていると、後ろから聞き覚えがあるような男の子の声がした。


「な、ないよ、もうあんたなんで私の……て、え?」


私は振り返りながらその男の子を問い詰めようとしたが、余りにも慣れしたしんでいる存在がいたので、驚きが隠せなかった。


「聖也?」


そうそれは私と同じぐらい小さくなった聖也がいた。とてもヤンチャな感じが小さくなっても残っている。そして、やはり子供の姿なので少し愛嬌のある顔立ちになっている。


「は、何いってんだお前?」


相変わらず、人を罵る時はとことん腹が立つような声を出す。


「いや、いや、その……」


しかし、私は子供の姿の聖也に少し見とれて言葉を止めてしまう。


「ねえ?柚菜ちゃん見つかった?」


言葉を止めると、小屋から幼くなっている幸までもが出てきた。


「あ、なんかここにいたんだけど……」


聖也は私を不思議そうにいた事を幸に話していた。


「え、何どういうこと?」


幸も私を不思議そうにそう言葉を言う。


「え?」


私はそう二人に迫られるとなぜだか知らないが、頭の中から色々な記憶がフワッと飛んでいくような感覚に襲われる。


「フワッ」


「柚菜ちゃん!」


「おい、柚菜!」


あれなんでだろう何で、私、幸ちゃんと聖也に抱かれてるの?


「え?なになに~ふたりとも~」


私はなんかちょぴり嬉しくて二人をニコニコと見てしまう。


「なにて、お前かくれんぼしててそれでなかなか見つかんなくてそれでさ……」


「ふむふむ」


どうやら私達は三人でこの周辺でかくれんぼしてて、私だけなかなか見つからなかなくて表れたと思えば様子がおかしくて、ちょっと意識が飛んで倒れて、二人はその瞬間にとっさに私を抱めていたのだと言う。


「もう、私うう、ビックリしゃったよ……うう」


何故か、幸ちゃんは泣き出して私をぎゅっと抱きしめた。


「ば、バカ泣くなよ、幸、くそ、お、俺まで……グス」


「わあ、二人とも」


泣き出す二人を見て、困惑するも、なんかこのじゃよくないと思い、私は二人の頭を優しく撫でた。


「もう泣かない、幸ちゃん、聖也」


「うう、だって柚菜ちゃんがこのまま死んじゃうんだと思ったんだもん!ウエーン」


「ば、バカ幸泣きすぎだ……グ、落ち着けよ……うう」


「大丈夫だよ、大丈夫……私はここにいるよ」


私が優しく慰め、幸ちゃんは少し泣きがヒートアップしたもののすぐ泣きやんで、聖也が一番引き連っていて幸ちゃんよりも遅く泣き止んだ。


「くそ、泣いて上手く歌えねじゃんか!」


何と、聖也は練習を再開してた時以降も泣いた後遺症を引き連っていた。


「へへ、聖也の負け~」


「おいおい、勝手に変な勝敗決めんなよ、うバカ野郎~」


「もう聖也君泣きすぎだよ、フフ」


その後、聖也が完全に泣き止むまでだいたい5分ぐらいかかった。






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