第03話 金髪少女の相談者-01

放課後 旧音楽室(非公式音楽同好会部室)にて


6眼目が終わった後、俺は葛城さんを連れて第二校舎にある旧音楽室に向かった。


「し、失礼しま……あ」

「おい奥谷、貴様どういう事だ、あ!?」


おそるおそる部室に入ると、玉置先生が禍々しく恐ろしいオーラで俺の胸ぐらを脅すように掴んできた。


「く、苦しいです」

「おい、奥谷お前……今日の昼休み女子を口説いていたのか、しかもこの部室の前で」       

「後輩くん……この部もそんな事のために入って私をあの娘みたいたらしめるために」

「あ……ご、誤解です、それと先輩それすごい偏見だとおもんですけど……がああ!」


俺は首を詰められ苦しいそうになりながらも必死に否定して、ついでに先輩にツッコミを入れる。


「オラ、お前そんな嘘を言うか!」

「あー、ダ、ダメ強くしないで~」


先生の首を締める強さは次第に強くなっていく。


「しくしく……昨日話していた独りでボッチていうのは私をたらしめる口実だんだね、後輩くん、せっかく、せっかく、初めて分かりあえる同志ができたと思ったのに!」


「が……」

(やべえ、昨日は緊張しすぎて記憶が半分飛んでるからそんな事全然分からねよ、そ、それより、は、早く止めないとお、俺死んじゃう……)


俺は意識がもうろうとして、視界がぼやついてきた気がしてきた。


「あ、あの……」

「か……葛城さ……ん」


意識がもうろとする中、覚えたて声を便りにドアの方に目を向けるとそこには葛城さんが戸惑いながら立ちすくんでいた。


「うん?なんだなんだ」

「あれ?昼休みの……」


先輩と先生は俺を責めるのをやめて不意にきた葛城さんの方を見る。


「ど、ど、どうも……」

「……」

「……」


葛城さんは弱々しく挨拶をすると二人の俺への目付きがさらに鋭くなる。

俺は視線を全然違う所にやって見てみぬふりをしながらこの部室から出ようとここ見たがしかし……


「おまえ茂明!」

「ごお……」


俺は再び先生に胸ぐらを掴まれる。


「本当にどういうつもりなんだおまえ!」

「酷い後輩くん!ここを君たちの愛の巣にする気なんだね……」

「な、何言ってるんですか……ほ、本当に誤解です誤解……ぐうがはあ……あ」


必死に勘違いした事を否定するが、二人は全く聞く耳を持たず俺の首は締まるばかりであった。もうここのまま締まり続ければ呼吸困難になりうると辛そうにしながら葛城さんにsosの視線を送る。


「あ、あのちょっと……」


その視線を受け取ったのか、葛城さんはこの状況にたして二人に何か訪ねようと声をかける。


「か、葛城さん……ぐ」

「……」

「……」


訪ねられた二人は俺の責めるのをやめて疑いの顔を隠せないまま葛城さんを見る。


「そ、相談したいならここに来てて奥谷に言われたんだけど……」

「どういう事だ?それは……」


葛城さんの口から相談と出た瞬間、二人は疑い少し怒りが見える顔から頭の上にクエッションマークがてできたように不思議そうな顔になる。


「あの、今日の昼休みにですね……私が無理やり奥谷に話を聞いてもらって相談をしてくれるて言ってくれたんです」


変に緊張しているのか、葛城さんはもじもじとしながら二人に俺との相談の経緯を説明し始めた。その間、先生の首締めにより軽い貧血となった俺は先輩に介抱してもらっている。その後は、葛城さんは少し足りなかった説明をして三人の自己紹介が始まった。


「葛城柚菜、1年生です」

「宮崎楓、2年生だよよろしくね柚菜ちゃ~ん」


先輩は俺を介抱したまま、自慢の可憐な元気さでフレンドリーに葛城さんに接する。


「玉置早苗32歳、国語教師だ」

「え、玉置先生!?」


確かに、今日の授業でもあんな厳しそうで静かそうな人なのに、いきなりこんなグイグイ来る振る舞いを見ていたら驚きもするだろう。予想はしていたが、想定以上の驚きようである。


「おいおい、葛城驚きすぎだろうおまえ……」


先生もその驚きの度合いに少し引いて入るようだ。


「フフ、そうだよね私も最初玉置先生だって分からなかったよ」


葛城さんの驚く姿を見て、少しの笑いを流して俺をスリスリと背中を擦る。俺は可愛いらしい手の感触が背中に伝うと心からうっとりとして顔が緩む。


「そ、そうなんですか」

「へへ、そうなんだよ~」


葛城さんは同性の娘と話ができて嬉しいのか、子供のように微笑んで共感したことを嬉しそうに口にする。


「にしても、こいつには悪いことしたな……」


先生は先輩に介抱される俺を目を細め申し訳なさそうに見る。


「し、死んじゃうよバカ野郎……」


俺は弱々しく昔ながらのツッコミを先生に入れてそのままバタリと先輩に倒れる。


「よしよし、もっともたれてもいいんだよ」


先輩に持たれると俺を優しく抱きしめる。


「……はい」


先輩になだめられる俺は自然と安らかな顔になり遥かな凪の彼方に行っていくような気持ちなる。


「はは、いつもこんな感じなんですか?」

「昨日入ったばかりだけど奥谷は」


特殊な仲良さげの雰囲気に苦笑いの葛城さんに、何気なく先生は昨日入ったばかりだと葛城さんに説明する。


「昨日入ったばかりでこんなに打ち解けてるんですか?」


葛城さんが驚く顔をすると、賑やかな先輩の顔が少し物憂げで悲しそうな顔になる。


「へへ、私今まで友達いなかったんだ……」


俺はその言葉を聞いて、俺を責めていた時の先輩を思い出す。


「でも、後輩くんがこの部室にいきなり入って来て嬉しくてなちゃって……へへ」


先輩は悲しそうな顔が少しずつ恥じらいのある嬉しそうな顔になり、俺もその恥じらいが移る。そして、俺は昨日あった音楽同好会(非公式)の怒涛で土壇場ハプニングたぷりだった入部の事をフラッシュバックする。


「だから、こんなにじゃれてるんですね先輩」

「うん、そうそう」


先輩は俺をさすりながら、俺に大事な飼い猫を見るような瞳をする。


「後輩くん……」


その瞳を見て、飼い猫が主人公の膝の上でぐたっりとしたくなる気持ちが心の底から分かったような気がした。


「お前ら仲良くなるのは結構だが、葛城お前はここに相談しに来たんだろう?」


先生が切りの良いところで、話をやめさせて話を本筋に戻した。


「あ、そうだねそれが目的なんだった」


先輩はそう言って、俺を違う椅子に離し葛城さんと視線を合わせて向き合う。


「で、それで、柚菜ちゃん相談てなんなの……」


真剣な表情の先輩と先生、ぐったりと倒れながらだが俺は葛城さんと向き合うと、緊張した空気が流れこの埃臭い部室に静寂が訪れる。


「……」


葛城さんに問いかけた先輩だが、こういう事は始めてなのだろう、オロオロとした瞳をして戸惑っている。


「……はわ」


本当に緊張しているのだろう、小さい声だが先輩特有の「はわ」を漏らす。


「おい宮崎、深呼吸深呼吸」

「は、はわ、はい!」


先生は緊張する葛城さんを深呼吸で落ち着かせて空気が少しざわつく。


「スー、ハー、スー、ハー」


何回の深呼吸が終わりちょっとだけ緊張が溶けると葛城さんが口を開く。


「そう、ですね、じゃあ、私と親友2人との話をしなければいけません……」


意を決して、相談者である学年一の金髪美少女が話を始めた。

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