第02話 祝 女子と帰れた記念日-04 END
「悪いわね奥谷、いきなりこんな話しちゃって」
「いえいえ……、俺も聞くことぐらいしかできなくてすいません、うう」
俺はもらい泣きながら、自分の非力さを嘆き、鼻をおもいきりかむ。
「フフ、あんたて結構いいやつなのね」
「え、どうしてですか?」
「だってこんな理不尽に連れてきて話聞いてくれてさ、こんなに泣いてくれたて……
他の4人は腹立つやつなのかなぁ、て思っるていってたから」
「そ、そうなんですか……」
それは日頃から何もしゃべらず、ろくに会話などしなかったらそんな風に思われても仕方ないと思わず苦笑いをする。
腹立つやつとはどんなやつだろうか?他の4人が創造していた俺の人物像も気になったのだが、その疑問はひとまず留め、どんな経緯で俺などにこんな涙の相談をしたのかを聞く事にする。
「それはそうと、なんで僕に相談というかこんな話を?」
「そ、その……何て言うかね、最近そういう事があってずっと暗かったでしょ?誰かに相談というかこの事を誰にも話したくなくて……それであんまり話さなくなってみんなから自分で距離をおいて……そんな距離をおいた時あんたを見ててね、フフ」
葛城さんは手を膝の上につけて、穏やかな表情で答え、笑いを溢す。
「みんな誰かし誰かとはしゃべるけど、あんただけ本当に真剣に本とかスマホばっかしてて、ひとりの世界に夢中なんだなて思って」
「は……」
俺はなぜか自分の裸を見られたような気持ちになって、少し恥ずかしくなる。
「そんな無我夢中にしてるあんたを見て、あんたなら話していいかもて思ったの、誰にも取り繕っていないあんたなら……」
「そうですか」
俺は葛城さんが暗くなる前の彼女のいつもな感じに戻った気がして自然に顔が喜ぶ。
「な、何よ……あんた」
そう聞くと彼女はぷっくりと頬を膨らませ、視線を少し下に反らして、不機嫌そうに恥じらいをみせる。
「なんでもないですよ」
俺はそんな不機嫌そうに恥じらう彼女にちょっとぴりイタズラめかしく笑ってみせる。
「それで、葛城さん本当の所どうしたいんですか?」
「え、その……」
葛城さんは話を聞いて欲しかっただけと誤魔化していたが、彼女の戸惑った反応を見るとやはりそれだけではなかったようだ。
「葛城さん今日の放課後気が向いたらで結構です、この古い音楽室に来てください」
俺はそう言い残して立ち上がり、教室に戻ろうとした。
「……」
葛城さんは俺が立ち上がると前の階段の方から何か視線を感じた。
「後輩くん?」
その愛らしく俺の心を擽る声はやはり……
「せ、先輩!」
窓の光が照らす美しい栗色の髪と愛らしい顔立ちはやはり先輩であった。
「はわ……」
俺が気づくと先輩に気づくと顔を真っ赤にして、のそのそと階段降りて来る。
「はわはわ……」
「あ、あの?」
「え、なに?先輩?」
「ご、ごご、ごめんさい!!」
先輩は挙動不審になりながら俺たちを犯行現場でも見たかのような反応をして、物凄い速さで教室の方へ戻っていた。
「……」
俺は頭でこの状況を整理して、何か面倒な勘違いをされた事を察し、脊髄反射で思考が停止しそうになった。
「とりあえず、私たちも戻ろっか奥谷」
「あ、はい……」
俺は初恋の人に変に誤解をされ、胸の中のハートが灰のように白く燃え尽き、金髪美少女に心配されながら悲しく教室ヘ戻った。
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